10月25日 キャッチ!世界のトップニュース
“ヨーロッパ最北のカトリックの国”と言われるリトアニアでは
十字架や聖人の祭壇を木彫りで作る伝統があり
こうした一連の文化はユネスコの無形文化遺産に登録されている。
9月下旬
ローマカトリック教会のフランシスコ法王が
リトアニアなどバルト3国を訪問した。
法王の訪問は25年前のヨハネ・パウロ2世以来で
大勢の市民から大歓迎を受けた。
リトアニアはもともと独自の多神教信仰があり
「ヨーロッパ最後の異教国」とも呼ばれた。
その後 16世紀ごろには広くカトリックが浸透し
現在は国民の約8割がカトリック教徒である。
そのリトアニアのカトリック信仰の象徴とも言われる巡礼地が北部にある。
その名も“十字架の丘”。
10万本以上の十字架や祭壇がたてられている。
その数は今も増え続けているという。
十字架や祭壇には花模様や太陽 ヘビをかたどった独特のデザインが施されている。
キリスト教が伝わる前の多神教の時代から受け継がれたモチーフである。
この丘に最初に十字架がたてられたのは19世紀とみられている。
第二次世界大戦後 リトアニアがソビエトの一共和国だった時代には
宗教を禁止したソビエト当局によって何度も十字架が撤去されたが
そのたびに市民が再び十字架をたてたという。
“十字架の丘”はソビエトの圧力に抵抗するリトアニア人のアイデンティティーそのものだったのである。
いまもここには自由十字架をたてることができ
人々はさまざまな希望や願いを胸に訪れる。
(訪問者)
「ここは神聖な場所です。
ほかにはありません。
人々を引きつける魅力があります。」
ある夫婦の息子はリトアニア軍の兵士としてアフガニスタンに派遣された。
無事に帰ってこられたらここに十字架を立てると約束したところ息子が無事に帰ってきた。
この日は新たに十字架をたてて家族の幸せと健康を祈った。
(訪問者)
「人々はここに希望を託します。
十字架をたてれば願いが届くのです。」
リトアニアは十字架だけでなく
集落の入り口や通りのあちこちに木彫りの祭壇がある。
こうした祭壇を作る彫刻家のひとり アンタナス・バスキスさん。
注文を受けてキリスト教の聖人の像や十字架などを作っている。
子どものころから周囲に彫刻に携わる人が多かったことがこの仕事に就くきっかけになったという。
(彫刻家 アンタナス・バスキスさん)
「小さいころから周りには多くの祭壇や彫刻がありましたので
彫刻家になるのはごく自然なことでした。」
アンタナスさんに彫刻を注文したホテル経営者のアリア・ストリアウキエネさん。
「これは聖アグネスの像です。
娘と孫のために注文しました。」
2年前 孫のガビアちゃんの健やかな成長を願って
不屈の精神を象徴するという聖人の像を庭にたてた。
マリアさんにとってアンタナスさんの作る彫刻は
家族の歴史を刻むとともに絆を深めるものだという。
(マリア・ストリアウキエネさん)
「彼が木材を選び私たちと話をすると彫刻に思いがこもるのです。」
この日はマリアさんは待ちわびた彫刻をアンタナスさんが届ける日。
「1年まったわ。
やっと来たのね。」
「景色にあいますよ。」
「本当に素敵。
うれしいわ。」
マリアさんが手にしたのは旅をする聖人の像。
ホテルに宿泊する旅行者の安全の願って注文した。
どこにこの像を飾るのか
あれこれ考えるのがマリアさんの楽しみである。
いまアンタナスさんはこれまでで最も大きい十字架づくりに取り組んでいる。
高さ8m60cm。
太いところで直径は約1mある。
「教会の70周年の記念に」と村の人たちから注文を受けた。
掘られているのはキリストとマリア
そしてリトアニアの守護聖人である。
保存状態が良ければ200年もつという十字架。
アンタナスさんは最後の仕上げに取りかかっている。
(彫刻家 アンタナス・バスキスさん)
「作るのはとても楽しいですが
毎回責任も感じています。
満足してもらえるものを作ろうと日々努力しています。」