10月16日 キャッチ!ワールドEYES
内戦が続くシリアなどから逃れる移民や難民。
ピークだった2015年には1年間で100万人以上がヨーロッパに渡った。
当初ヨーロッパ各国は人道的な立場から積極的に受け入れたが
いまでは寛容だった国でも世論は変化。
各国が押し付け合う状況すら生まれている。
なかでも問題になっているのが
難民申請をする人は最初に到着した国で行うという制度である。
移民・難民にとってヨーロッパの玄関口となっているギリシャやイタリアなどは
“自分たちばかりが負担が大きい”と不満をつのらせている。
このためこの制度の変更に向けた議論が始まっているが
各国の意見が対立し
思うように進んでいない。
そのしわ寄せが受け入れる側に重くのしかかっている。
ギリシャ東部に位置するレスポス島。
対岸に見えるトルコとの距離はわずか10km。
ピーク時に比べて海を渡る人の数は減ったが
いまでも1日100人近くが海を渡って来ることも少なくない。
島の中心部の人口は約3万人。
これに対して到着した移民や難民の数は約1万人にのぼる。
昔から島で暮らす人たちの不満も蓄積している。
(市民)
「どこに行っても難民だらけ。
周りを見てごらんなさい。
外国人ばかり。」
「歓迎したいけどギリシャは課題山積です。
彼らを受け入れるのは難しい。」
このためEUが乗り出しているのが沿岸警備の強化である。
それを担うのがヨーロッパ国境沿岸警備機関。
通称“フロンテックス”である。
ギリシャにあるフロンテックスの事務所。
イギリスやドイツ クロアチアなど15か国が担当官や警備船を派遣。
密航船の摘発などに力を注いでいる。
なかでも午前0時から午前6時のパトロールを強化している。
見つからないよう暗いうちに海を渡ろうとする人たちが後を絶たないためである。
この日はポルトガルから派遣された部隊が
暗闇のなか手探りで漂流している船はないか警戒していた。
見通しがきかないくらい海。
サポートのため別の部隊が
山の上などから音頭を検知する双眼鏡などを使って不審船の情報を船に伝えている。
しかし仮に摘発しても本人たちが難民としての保護を申請すれば
強制送還せずに
難民審査をすることが国際法で定められている。
このため一旦はEU域内に保護する必要がある。
その結果“ヨーロッパの玄関口”のギリシャなど沿岸国の負担が増え続けているのである。
レスポス島で最大の難民申請者収容施設 モリア・キャンプ。
収容されている人たちの国籍は
シリア アフガニスタンなどのアジアやアフリカ諸国など60カ国以上。
難民申請の結果が出るまでここで暮らしている。
本来の収容人数は3,000人余だが
今ではその2倍を超える7,000人。
図らずも島で2番目に大きい町と化している。
EUなどの援助でプレハブが設置されているが
中はごく狭く
仕切りは布1枚である。
増え続ける収容者にプレハブの設置が追い付かず
狭いテントでの生活を強いられている人も少なくない。
食事も毎回4~5時間並ぶ必要があるという。
ようやく食事にありついても
食べ終わったらすぐに次の食事の列に並ばなければならない。
こうした過酷な環境のなかでの生活は短くても1年程度。
長い人は3年過ごしている。
(収容施設で暮らす男性)
「トイレや食事の列などひどいものです。
祖国のアフガニスタンと変わらないよ。」
こうした人口過密の結果
特に懸念されているのが衛生状態の悪化と病気のまん延である。
ひとたび病気が発生すれば一気に感染する危険が高まっている。
厳しい現状を軽減しようと
施設の向かいではNGO国境なき医師団が仮のテントで診療所を開き
医療支援を提供している。
毎日100人ほどが助けを求めて訪れる。
2年前にアフガニスタンから来た男性は1歳の娘の診察に来た。
数週間前から熱が下がらないという。
医師は「収容所の環境悪化は深刻だ」と指摘する。
(医師)
「水と食料は質が良くありません。
収容施設の衛生状態も悪いです。」
さらに深刻なのが若い世代の精神状態だという。
ここでの生活に希望を見い出せず
自殺未遂や自傷行為に出る若者が急増しているというのである。
(国境なき医師団 広報担当)
「私は5年間アフリカで働きましたが
こんなにひどい状況は初めてです。
この難民キャンプはまさに地獄です。」
増え続ける収容者。
受け入れはもう限界を迎えている。
(収容施設の責任者)
「EUの各国に助けてもらいたい。
それがここにいる彼らのためなのです。
収容施設にいる家族や子どもたちは新たな生活を送らなければなりません。」