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大黒ふ頭から

2020-03-18 07:00:00 | 編集手帳

2月24日 読売新聞「編集手帳」


海と富士山を一望するのに格好の場所がある。
クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」が停泊する横浜港の大黒ふ頭である。

この季節には海の群青と富士を覆う雪とが絶妙なコントラストをなす。
葛飾北斎の「神奈川沖浪裏」は大波の後方に富士を配するが、
今は湾岸の建物群との取り合わせにも目をひかれる。

プリンセスは昨年末まで、
港のより内側の大さん橋ふ頭を使っていた。
排ガス浄化装置を付けて背丈が伸び、
横浜ベイブリッジをくぐれなくなって沖側の大黒に移ってきた。
私見だが、
高層ビルに寄りすぎた大さん橋より大黒からの方が富士は映える。

元来が貨物船用のこの埠頭に客船も入るようになったのは11年前、
別の英豪華船がベイブリッジをくぐれなかったのが始まりだ。
昨春には入国手続きの施設もでき、
横浜市長が「世界クラスのクルーズポートにする」と意気込んだ。
その港の姿は今、
新型肺炎のニュース映像となって世界を巡る。

船内待機は当初2週間とされた。
さらに4日が過ぎて、ようやく乗客たちほぼ全員の下船が終わった。
富士と海を慰めとするには長すぎる時間だったろう。

 

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