2月25日 NHK「おはよう日本」
民間の参入によるコスト削減で宇宙はより身近になりつつある。
技術革新のひとつは
ロケットを空中から打ち上げる技術である。
打ち上げ費用が格段に安くなることで衛星を利用したビジネスが広がり
地球の夜空をも変えようとしている。
飛行機の胴体に取り付けられているのは
人工衛星打ち上げ用のロケット。
地上からの打ち上げに比べ
燃料が節約できる
スケジュールが天候に左右されないといった利点があり
今さまざまな企業がこの空中打ち上げの技術開発にしのぎを削っている。
米カリフォルニア州にあるこの会社もその一つ。
このあとまもなく打ち上げである。
大型旅客機に吊り下げたロケットで衛星を打ち上げる。
打ち上げの費用は約13億円と
これまでのロケットの3~5分の1と格段に安いのが特徴である。
(戦略担当シニアディレクター)
「数千の衛星が打ち上げられるとの予測がある。
今はまだ発射装置が不足
需要が供給を超えている。
2020年はとてもエキサイティングな年になる。
発射サービスの提供をはじめ
需要のギャップを埋めることになる。」
狙う需要は
地球から近い低軌道という軌道で運用される比較的小型な衛星の打ち上げである。
低コストで打ち上げられる低軌道衛星の市場規模は
2024年には約6,000億円に拡大するという予測もある。
(戦略担当シニアディレクター)
「実際 多くの顧客が今後2年ほどの間の打ち上げを待っている。
今後20~30年は宇宙産業にとって次のゴールドラッシュになる。」
農地の衛星写真を分析して適切は肥料や農薬の量を助言したり
貨物船の航行状況を衛星で把握して効率的なルートや到着予想を分析するといったビジネスが始まっている。
中でも需要をけん引するのは
高速インターネット通信用の小型衛星である。
宇宙開発ベンチャー スペースXは
約1万2千基の小型衛星で全地球をカバーする通信網を運用する計画をスタートしている。
日本のソフトバンクも出資する通信会社 ワンウェブも
約700基の人工衛星を使った同様の構想を発表している。
現在 軌道を回る人工衛星の数は約5千。
それを上回る数の人工衛星がこの数年で打ち上げられようとしている。
さまざまな高速通信の計画が進む中
思わぬところに懸念が出ている。
天文学の分野である。
米ミシガン大学の天文学の教授 パトリック・セイツァーさん。
増え続ける人工衛星が地上からの宇宙観測の妨げになると
警鐘を鳴らしている。
去年 流星の観測をしていた天文台が撮影した映像。
画面を横切る白い光は
去年打ち上げられた通信用の人工衛星である。
(ミシガン大学 教授 パトリック・セイツァーさん)
「これらの衛星はいま
夜空にある物体の99%よりも明るい。
近い将来
最大200基の衛星が夜空を横切るのが見える可能性もある。
天文学者にとって大きな問題。」
衛星の数などにルールを設けなければ
精密な宇宙観測はもちろん
私たちが親しんだ夜空も様変わりしてしまうという。
(ミシガン大学 教授 パトリック・セイツァーさん)
「私たちは進歩の妨げにはなりたくない。
世界中でインターネットを使えるようにすることは
追及する価値のある目的だが
このことがもたらす副作用をとても懸念している。
多くの衛星打ち上げの企業がいる。
何らかの規制は必要。」
拡大を続ける宇宙ビジネス。
どのように新たな課題を乗り越えていけるのか注目である。