4月4日 おはよう日本
イランの野球の競技人口はわずか500人。
代表チームはあっても国民にさえほとんど知られていない。
イラン代表チームを強化しようと
25歳の日本人が監督に就任し奮闘している。
イラン代表チームの選手は現在18人。
イランではまだ野球は人気がなく
政府の支援もほとんどない。
代表チームのメンバーは全員学生やサラリーマンである。
まとまった練習がほとんど出来ず
結成から16年
国際大会での成績はわずか1勝。
チームの強化を託されたのが色川冬馬さん(25)。
去年12月 外国人として初めて代表監督に就任した。
色川さんは大学卒業後 アメリカの独立リーグなどでプレーしてきた。
しかし肩を痛めて一昨年現役を引退。
指導者として活動を始めたころ
イランが代表監督を捜していることを知り手を挙げた。
(野球 イラン代表監督 色川冬馬さん)
「野球ボールがあるところに行くと
自分が大好きなコミュニケーションがとれて
みんなが笑顔になるっていうのはすごくぼく自身も楽しいこと。」
色川さんが目指すのは選手たちが互いにカバーしあうチーム野球。
日本式の“和”の野球である。
ところがいざ練習を始めてみると苦難の連続だった。
野球場がないため練習はサッカー場を回り
道具も少なく
バットは4本。
公式球は9個しかない。
これで代表が決まることが普通だったため真剣みが足りなかった選手たち。
色川さんは練習に臨む姿勢やチームプレーを一から教え込んできた。
指導を始めて2か月
こうした いわば日本式の熱血指導に選手たちも少しずつ変わっていった。
キャプテンを務めるケイバン選手。
これまで連戦連敗で自信を失っていた。
しかし色川さんの指導でばらばらだった選手たちが
今回初めてチームとしてまとまり
レベルアップしたと感じている。
(イラン代表キャプテン ケイバン選手)
「監督は前向きでエネルギッシュです。
チームが一つになっている。
このいい雰囲気でこれからの試合に挑みたい。」
イラン代表チームは色川さんが着任後初の国際大会 西アジア大会に臨む。
4か国の総当たり戦で
イランは初戦のインドに快勝。
次の相手は前回大会の覇者パキスタンである。
勝てば国際大会の初優勝に手が届くとあって選手たちも気合が入る。
いよいよ大一番が始まった。
強豪パキスタンに対し3回表まで2点に抑える互角の戦いである。
しかし3回裏 パキスタンの打線に捕まった。
焦りから守備も乱れ
結局12対0の7回コールド。
完敗だった。
選手たちの自信は打ち砕かれたが
色川さんは手ごたえも感じていた。
(野球イラン代表監督 色川冬馬さん)
「最後まであきらめることなく気持ちを切らさず
一生懸命声を出して目指してきた野球をできた。」
翌日の相手はイラク。
敗戦を引きずる選手たちを見て色川さんはすかさず喝を入れる。
メダル獲得をかけたこの試合。
初回から盗塁でランナーを進め
主砲のヒットで得点を重ねる理想の試合運びである。
投打がかみ合い14点の大差をつけてイラクを破った。
イランは2勝をあげて2位。
国際大会で初めての銀メダルを獲得した。
(イラン代表キャプテン ケイバン選手)
「監督はチームで戦うことを繰り返し教えてくれた。
一丸になれたからこそ勝てたと思う。」
(野球イラン代表監督 色川冬馬さん)
「ステップバイステップですかね。
大会で全員が経験を積めたことは次につながるステップだった。」
今回の大会で自信を深めた色川監督とイラン代表チーム。
5年後の東京オリンピックを夢見て挑戦が続く。
4月4日 おはよう日本
低カロリーのあんこを開発した香川県三木町の食品会社。
この会社ではダイエット効果が見込まれるこんにゃくを加工して様々な低カロリーの食品を販売してきた。
長年こんにゃくを使った食品を開発してきた社長の菱谷さんが次の一手として考えたのが
こんにゃくを混ぜて作る低カロリーのスイーツだった。
(こんにゃく加工会社 菱谷龍二社長)
「こんにゃくにカロリーがほとんどないのはみんな知っていると思う。
そういうものを原料として作れば非常にイメージがいいのではないか。
こんにゃくのスイーツもありだなと
あんこに挑戦してみた。」
菱谷さんが注目したのが香川県が開発に力を入れている希少糖である。
希少糖は自然界にわずかしか存在しない糖で
血糖値の上昇を抑える効果が確認されている。
菱谷さんはこの希少糖とこんにゃくを合わせることで
血糖値の抑制効果がより高まるのではないかと考えた。
開発の大きな課題となったのは
あんこのしっとりした感じとはほど遠いこんにゃく独特の食感だった。
(こんにゃく加工会社 菱谷龍二社長)
「いろいろな
たとえば小麦粉やでんぷんを足していって食感を作ろうとしたが
なかなかうまくいかない。
あることに気がついて引き算
水分を引くと食感が近づくのがわかった。」
こんにゃくの97%は水分である。
菱谷さんはその水分を減らすことで食感が変化することに気がついた。
どこまで水分を減らすのか試行錯誤を繰り返し
少しずつあんこの食感に近づけていった。
そしてこの水分を絞ったこんにゃくと普通のあんこを
1対1の割合で混ぜ合わせて出来上がったのが新しいあんこである。
希少糖とこんにゃくに血糖値を抑える効果がどれだけあるのか。
会社は香川大学と共同で検証を行った。
希少糖の1種 Dープシコースは体内に摂取されると
腸内にあるブドウ糖の通り道をふさぎ吸収を妨げる効果が確認されている。
一方 こんにゃくに含まれる食物繊維グルコマンナンは
腸内でブドウ糖をからめ取ることで体内への吸収を妨げるとみられている。
ブドウ糖と一緒にDープシコースやこんにゃくのグルコマンナンを摂取した場合の血糖値の変化は
いずれも血糖値の上昇が抑えられている。
一方 この2つを同時に摂取すると
別々に摂取した時よりもさらに血糖値を抑える結果となった。
(香川大学医学部 徳田雅明教授)
「本当にこういう効果があれば
糖尿病の人にですら使えるかもしれないということを意味しているデータなので
結果がそのことを物語っていると思うが
非常に相性のいいものだと思う。」
菱谷さんは今このあんこの商品化に向けて動き出している。
東京にある健康食品などの販売会社に初めてあんこの試作品を持ち込んだ。
「こんにゃくと希少糖から作ったあんこのもと。
市販のあんこと1対1で混ぜて作ったのがこれ。
市販のあんこが100グラムあたり約25キロカロリーあるので
だいたいこれは3分の1くらいカロリーが減る。
血糖値が上がらない。」
「あんこをつぶした感じがある。
こんにゃくと言われないとわからない。
ちょっとお茶ほしくなったね。」
今後 食感をさらに改良したうえで
できるだけ早い時期に販売が開始できるよう商品化を急ぐことになった。
(こんにゃく加工会社 菱谷龍二社長)
「予想以上にこう評価をいただいてうれしい。
期待に応えられるような商品を早く作っていきたい。」
4月4日 おはよう日本
高知県仁淀川町
人口約6,000
ここ5年で800人以上減っている。
農地の多くが棚田や段々畑。
しかし土地が狭く機械を入れられないため放棄されるところが年々増えている。
そんななか棚田を農業用ハウスとして再利用しようという試みが始まった。
野々宮益輝さん(61)は3月に使われなくなった棚田にハウスを建て
トマトを栽培している。
このハウスにはある大きな特徴がある。
真冬でも暖房を全く使わずにトマトを育てることができるのである。
この冬の最低気温は-6℃。
しかしその時でさえハウスの室温は3℃あった。
氷点下になると枯れてしまうトマトの栽培に成功した。
(野々宮益輝さん)
「かなりの成果ではないかと思う。
真冬の氷点下6度の中でトマトが収穫できるというのは。」
このトマトは1月の中旬から出荷も始まった。
味の評判も上々である。
「味も何とも言えん。
おいしい。
甘みがあって。」
なぜ真冬でも暖房を使わずに高い室温を保てるのか。
高知大学の研究チームが調査したところ
その理由はハウスの側面に使われている棚田の石垣にあることがわかった。
日中 石垣なその内部にまで熱を蓄えていく。
その熱エネルギーが夜もハウスの室内を暖めていたのである。
またハウスの側面を石垣が覆っているため
外に逃げる熱も少なく抑えられる。
(高知大学農学部 宮内樹代史准教授)
「耕作放棄地の対策にもなりますし
石垣蓄熱ハウスをきっかけに新たな園芸モデルがつくられるのでは。」
使われなくなった農地の思わぬ利点を生かした石垣ハウス。
野々宮さんは国と町から補助を受け
新たに10アールのハウスを建設予定である。
山間地ならではの新たな試み。
町の再生に一役買うことができるのか。
今後が注目される。
4月2日 おはよう日本
企業の研修で講師をしている原良恵さんは
どうしたら受講生の心をとらえる授業をできるようになるのか悩んでいた。
(原良恵さん)
「みんなにうまく伝わっていないなということがあって
もう少し工夫のしようがあると思いまして。」
人前でいかに魅力的に話をするのか
その方法を探すなか意外なところにそれを教えてくれる講座があると知った。
ベンチャー企業が大手芸能プロダクションと手を組んで開いているプレゼンテーションの特訓。
生放送なら無料で見られるオンライン講座である。
たとえば聞く人の心をつかむテクニック。
わざと間違えることで話題を誘い話に引き寄せる。
原さんにとってはまさにぴったりの講座だった。
(原良恵さん)
「前振りがいいことで本当に引き込まれる。
無料で解放してくれて
いいものを見つけたと思いました。」
ここ数年こうしたオンライン講座のサイトが次々に立ち上がり利用者を伸ばしている。
東大や京大など有名大学の最先端講座が無料で受けられるサイトでは
立ち上がって1年で利用者が約28万人。
アメリカ人の講師による英会話の授業に
コンビニで買える食材を使った料理教室まで
生放送なら無料で見られるオンライン講座のサイトの利用者は約15万人になった。
ビジネスモデルとしても注目を集めいる。
生放送のオンライン講座を扱うベンチャー企業では録画したすべての講座を月980円で提供。
さらに会員が何をどれくらい学習したのか
そのデータもビジネスに生かせないかと研究している。
(ベンチャー企業 森健志郎社長)
「学びたいけど学べなかった課題はもっとたくさんあるんじゃないかと。
そこを解決すればすごい産業になる。
そういう風に世の中を変えていきたいと思う。」
急速に広がる無料オンライン講座。
生活を少しでも良くするために始めた人がいる。
銀行のコールセンターで派遣社員として働く男性。
現在の時給は1,500円だが1種証券外務員の資格があれば1,750円。
月4万円の収入アップが見込めるという。
仕事に行く前の3時間
資格専門の無料オンライン講座で勉強するようになっている。
(男性)
「学校に通うにしても時間的にも金銭的にもきついので
これだったらできそうかなと思って
少しでも楽な生活ができればいいかなと。」
さまざまなオンライン講座を試すなか意外な形で自分を再発見したという人がいる。
大学卒業後国家公務員として働いていた林佑樹さん。
勤め始めて3年目
仕事は徐々におぼえてきたものの本当にこれで良かったのか思い悩むようになってきた。
(林佑樹さん)
「大学時代思い描いていた自分ってこんなんだっけって振り返る機会が多かった。」
そんななか生放送なら無料で見られるオンライン講座の存在を知った。
ベンチャー企業の作り方を教えてくれるものやマーケティングの講座など
興味がわいたものを片っ端からのぞき始めるようになった。
その数は160以上。
その中の1つが林さんの人生に大きくかかわるようになった。
“イマドキの大学生は何に悩んでいるか”
社会とのかかわりを模索する林さんの興味を引くタイトルだった。
企業の人事担当者をターゲットにしたもので
今の大学生がどんな悩みを抱えていてどう接したらいいかを教えてくれるというこの講座。
やりたいことが見つからないというあなた
まず自分ができることが自分のやりたいことであるという幻想を捨ててもらうこと
林さんは図らずも大学生に向けた講師の訴えに心を動かされた。
今している仕事は自分にはできるが
やりたいことではない
ということに気づかされたのである。
やりたいことを見つけて達成していけるようにしてきたい
当時林さんはレポートにこう記していた。
自分がやりたいのは人の成長を見守る仕事だと気付いた林さん。
去年の暮 公務員の仕事を辞めた。
そして海外の人たちと連携してキャリア教育のプログラムを開発するNPOに転職した。
いま林さんは新しい職場で生かせないかと週に1回無料で英会話を学べるオンライン講座に取り組んでいる。
(林佑樹さん)
「オンライン講座は自分探しの一歩だったと思う。
これからは自分探しじゃなくて
自分自身をしっかり見つめることができたらと思う。」
長い海外生活のため航行にも通えずほぼ独学で東大経済学部の教授になった柳川範之さん。
いわば“独学の達人”である。
柳川教授は無料オンライン講座が広がったおかげで
誰でも簡単に独学ができるようになったとみている。
(東京大学経済学部 柳川範之教授)
「三日坊主で終わると
なんか駄目だな真面目にできなかったと思うじゃないですか。
三日坊主でもそれでも1回やってみる
まずはやってみる
とりあえず進んでみるということが大事だとするとやっぱり手軽に手を出してみて
うまくいかなければまた別のネット情報を手に入れればいいと。
それでいいと
それで回していくことに大きな意義があるんだろうと思う。」
4月8日 編集手帳
『ここはどこだ』という歌がある。
永六輔さんの詞に、
いずみたくさんが曲をつけた。
〈ここはどこだ いまはいつだ なみだはかわいたのか〉。
1966年 (昭和41年)の作品である。
問いはつづく。
〈ここはどこだ いまはいつだ いくさはおわったのか
ここはどこだ きみはだれだ なかまはどこへいった
ここはどこだ きみはだれだ にほんはどこへいった〉
沖縄の戦争に想を得て作られた歌だが、
歌詞から思い浮かべる地名は戦没者の遺族によってさまざまだろう。
遺骨が眠りから目覚めたかのような独り語りに胸が波立つ。
天皇、皇后両陛下はきょう、
西太平洋のパラオを戦没者慰霊のために訪問される。
約1万人の日本兵が死亡した激戦地の島には、
見つかっていない遺骨も多い。
皇后さまが以前、
硫黄島で詠まれたお歌を思い出す。
〈慰霊地は今安らかに水をたたふ如何(いか)ばかり君ら水を欲(ほ)りけむ〉。
パラオに眠る人々も、
どれほどか命の水を欲したことだろう。
にほんはどこへいった…。その問いに答えるために、
日本人の一人ひとりが「戦後」という長い旅をしている。
そう思えてならない。
4月2日 編集手帳
戦前のNHKアナウンサー、松内則三さんの名調子はいまもなお語り草である。
〈夕闇せまる神宮球場、
どんよりした空、
ねぐらへ急ぐカラスが1羽、2羽、3羽…
戦機ようやく熟す、
早慶両軍。
知らず、
凱(がい)歌(か)い れに上がるや〉
神宮球場は大学野球の“聖地”として知られる。
数々の名勝負の舞台となり、
長嶋茂雄さんをはじめ、
多くの名選手がそのグラウンドから巣 立っていった。
建て替えになるという。
2020年東京五輪・パラリンピックに向けた東京都の再開発事業として、
隣の秩父宮ラグビー場と場所を交換して建て直される。
野球場に限らず、
昔暮らしたアパートや通った小学校舎もそうだが、
建て替えとはじつは“移築”なのかも知れない。
現実の世界から自分ひとりの胸のなかに場所を移すだけで、
往年の姿のまま残る。
まだ、
時間がある。
長らく足が遠のいていた人は、
久しぶりに球場を訪ねて青春の記憶を新たにし、
来たるべ き移築の準備をするのも楽しい。
今晩あたり、
「そうか、建て替えか」とつぶやきながら、
上空からヤクルト―阪神戦をのぞきに来るカラスの末裔(まつえい)たちもいるだろう。
4月1日 編集手帳
見た目ひとつで格別おいしくもなり、
さほどでもなくなる食べ物がある。
向田邦子さんには水羊羹(みずようかん)がそうだったらしい。
随筆に書いている。
〈水羊羹の命は切口と角であります〉(『水羊羹』)
宮本武蔵か眠狂四郎の剣が一閃(いっせん)したならばこうもなろうかという鋭い切り口と、
尖(とが)った角がなくてはいけない、
と。
切り口に涼しい風の立つように感じられる味覚としてはたしかに、
夏のスイカとともに横綱格だろう。
この季節、
社会に巣立ったばかりの若い人を街で目にするたび、
“切り口”と“角”の鮮やかな水羊羹を思い出す。
〈大きなる鍋の一つか会社とは煮崩れぬよう背筋を伸ばす〉。
新聞記者の経験をお持ちの歌人、松村由利子さんの一首にある。
鋭角に肩ひじ張ってばかりもいられないのが会社勤めではあるが、
変に世慣れて丸くなり、
みずみずしい感受性や尖った初心が目減りしないことを祈る。
きょうは小社にも新人記者が入る。
研修ののち、
赴任地に散る。
初々しい切り口と角は保証いたします。
万々が一、
早々と角の取れた水羊羹を街で見かけた折は、
どうぞ遠慮なく気合を入れてやってください。
4月1日 キャッチ!
オーストラリアではここ数年覚せい剤の蔓延が深刻な問題になっている。
オーストラリアの15歳以上の人口の7%が覚せい剤を使ったことがあるということである。
アメリカ 5%
ドイツ 3%
両国と比較してもオーストラリアの多くの人たちが覚せい剤に手を染めていることがわかる。
日本の現状は
厚生労働省が2011年までに15歳~64歳を対象に行った調査によると
覚せい剤の使用経験者は人口の0,4%である。
オーストラリアでなぜこれほどまでに覚せい剤が蔓延しているのか。
覚せい剤が外国からの輸入だけでなく
国内で密造して流通させるケースが増えたことで手に入りやすくなったことが要因とみられる。
捜査当局の関係者によると
使用される覚せい剤のうち製品として密輸されたもの
オーストラリア国内で密造されたものの割合はほぼ同じぐらいということである。
また高値で取引されることも要因の1つとみられている。
フルタイムの労働者の平均収入は1か月あたり41万円余。
ほかの国と比べて収入が高いことから
犯罪グループからは
オーストラリアなら少々値が高くても売れるというふうに見られ
狙い撃ちにされているというのが実情である。
都市部だけではなく地方にも広がっているのは地方経済の衰退が背景にある。
綿花の栽培が盛んな地方は
ここ数年洪水と干ばつが繰り返し起きたことで栽培ができなくなり
畑で働いていた労働者たちは職を失った。
そのため将来を悲観し自暴自棄となって覚せい剤に手を出す人たちが出てきた。
また地方の中でも特に先住民の間で広がっているのも課題である。
先住民は白人などと比べて失業率が高く
覚せい剤の蔓延はより深刻だという。
捜査当局は水際での密輸の食い止めのほか密造施設の摘発に力を入れている。
また学校や家庭での教育の重要としている。
専門家はリハビリ体制の充実を優先させるべきだと指摘する。
(オーストラリア国立大学 R・マクケティン准教授)
「覚せい剤依存者には何よりも継続的なサポートが必要です。
リハビリを受けられないと彼らは友人や家族に薬を売るようになります。」
覚せい剤常習者の家族は
本人が暴力をふるうようになりその影響で家族がバラバラになったことがとてもつらい
と悲惨な状況を語った。
地方で起きている問題は報道される機会があまりない。
しかもリハビリ施設のほとんどの施設が政府から補助金を受けているが
アボット政権が去年打ち出した緊祝財政の影響で支援が削減されたところも出てきている。
1日も早く蔓延を食い止めるための対応が急がれる。
3月31日 おはよう日本
外食をする時はいつもスマートフォンを使って店を予約している都内の男性。
取引先との会食のために日本料理店をネット予約した。
(ネット予約の利用者 中島健さん)
「コーヒー飲んでちょっとの休憩時間中や移動中のタクシーの中とか
ネット予約は好きな時間でササっとやれる。」
店が混雑する中スムーズに席を確保することができた。
「便利だしこれからも何回も使っていきたい。」
大手の飲食店検索サイトぐるなびによると
このサイトを使ってネット予約した人の数はピーク時には1日当たり約7万人。
3年で2倍以上に急増している。
背景にはスマートフォンの急速な普及があるという。
(飲食店検索サイト ぐるなび 本橋勉執行役員)
「休みの時間や定休日は店で電話をとることができない。
ウェブのサイトで予約ができるのはすごく便利な機能だと思う。」
ネット予約の増加は飲食店のサービス向上にも大きな役割を果たしている。
ネット予約で来店した家族には店に入るとすでに子ども用のいすが用意されていた。
(常連客)
「子どもの人数と子ども用のいすは言わなくても準備してくれていた。
非常にありがたい。」
この店では去年飲食店検索サイトと連動した予約管理システムを導入。
ここに家族が以前利用した時の状況が記録されていたのである。
このシステムでは客からの予約をネットで受け付けた瞬間に
時間や人数などに合わせて席も自動的に割り当ててくれる。
そのため手書きの台帳で予約を管理していた時と比べて
受付にかかる時間が大幅に短縮された。
(焼き肉レストラン 長沼悠店長)
「こういったシステムを導入することでひとつひとつの時間が短くなる。
時間が空いた分
客により接客をすることが可能になっている。」
さらにこのシステムでは来店回数や好みのメニューやアレルギーなどの情報も蓄積することができる。
30回以上来店した常連客には名前入りの専用トングを用意するなどオーダーメードのサービスが可能になる。
(焼き肉レストラン 長沼悠店長)
「顧客情報・趣味趣向などしっかり把握し業務に取り組んでいる部分では
かなりサービスの質は全体的に上がっていると思う。」
アメリカではレストランのネット予約が当たり前のサービスとして浸透している。
「レストランに電話をしてもネットで予約をしてと言われる。」
「サンフランシスコでは高級店でなくても予約がないと店に入るのが難しい。」
すでに予約から支払いまですべて済ませることができるサービスも登場している。
予約をとって食事を済ませると
支払伝票は紙ではなくスマートフォンに届く。
登録してあるクレジットカードの情報をもとに
席に着いたまま画面上で支払いを済ませることができる。
支払の情報は店員にも伝えられるため
ランチなどの混雑時でもすぐに店を出ることができる。
このシステムを提供しているアメリカ最大手の飲食店検索サイト。
将来的にはネット予約で集めた様々なデータを解析。
客が好みそうな料理を出す店を自動で勧めるサービスを開発していきたいとしている。
(米大手飲食店検索サイト マシュー・ロバーツCEO)
「我々の大きな利点は
世界の誰よりもレストランに関するデータを持っていること。
利用者が望み通りのレストランを見つける手伝いができる。」
このアメリカの会社は3月に日本で本格的に事業を拡大すると発表した。
(米大手飲食店検索サイト マシュー・ロバーツCEO)
「私たちのサービスを利用すれば世界中でネット予約ができる。」
将来的には日本でも決済など最先端のサービスを展開していく方針である。
3月29日 おはよう日本
地方議員の構成は
農業・林業と兼業している人たちで約2割
次いで 卸売・小売。建設業などとの兼業
ほかに職業を持たない専業の議員も約3割いるが
サラリーマンと二足のわらじを履く人はほとんどいない。
元渋谷区議 浜田浩樹さん(36)。
5年近くにわたって会社に籍を置いたまま渋谷区議を務めた。
サラリーマンのセンスを生かせば政治と有権者の距離をもっと近づけられると考えたからである。
(浜田浩樹さん)
「一般の民間企業と比べて財務とか経理の体質はどうなのかとか
予算とか決算を見るときでも
どうしても今までの議会では触れられてこなかった部分に着目できたりとか。」
人災派遣会社で新規のプロジェクトの立ち上げなどを手掛けていた浜田さん。
8年前 会社の許可を得て立候補し初当選した。
提言したのは
区の施設の命名権を民間企業に売り出す“ネーミングライツ”の活用。
民間の資金で区政を活性化しようとしてきた。
順調に思えたサラリーマンとの二足のわらじ。
しかし2期目を迎えたときに会社からある通告を受けた。
「議員活動のための休職があまりに長くなれば企業活動に支障がある」として
1期4年以上の活動は認められないというのである。
浜田さんは議員を辞めるか会社を辞めるか選択を迫られ
会社を辞めることになった。
今は予備校講師などをして暮らしている。
(浜田浩樹さん)
「なかなか企業の側も難しいというのはわかりますけれども
どうしても今の仕組みはサラリーマンが議会に入りにくい。
そういうのは変えていかないといけない。」
地方議会をこれからどのように変えていくべきなのか。
市民の間でも関心が高まっている。
(25日 東京千代田区 地方議会の改革を考えるシンポジウム)
「住民に見える議会
開かれて議会
住民参加の議会をやる。」
「既得権益を守るために古い議員が結構多くいるというのが問題の1つ。」
働く人の大半を占めるサラリーマンが
もっと地方政治に参加できる仕組みをつくべきだといった意見も相次いだ。
「会社勤めの方たちも含めて
仕事を持ったまま議会に参加することはできないか。」
「週末とか夜間にまったく今までとは違ったような人を参加させてやるようなこと
面白い政治ができるんじゃないか。」
サラリーマンが議員になると地方議会はどのように変わるのか。
千葉県栄町の町議会議員 野田泰博さん(67)。
サラリーマンをしながら5期20年にわたり議員を務めてきた。
(野田泰博さん)
「大変でしたよね。
やりくりの時間のそこら辺はいちばん苦労しました」
会社では営業部長を任されるなど敏腕営業マンとして活躍していた野田さん。
議員になったきっかけは
町の財政運営が一般企業の感覚とかけ離れていると感じたことである。
野田さんが疑問を持ったのが1,000人収容のホールを備えた施設。
建設計画が発表されたとき
野田さんは町の規模に釣り合わないと思い
知り合いの議員に問いただした。
(野田泰博さん)
「たった2万人ちょっとの町にこんな1,000人も入るホールが必要なのか。
500人か600人のホールで十分じゃないかと思ったんですよね。
なんで反対しないんだって言ったら
『素人に何がわかる』って祝えたんです。」
その悔しさをばねに議員となった野田さん。
サラリーマンの感覚で議会の情報公開にいち早く取り組んできた。
独自の報告
名づけて“栄町見聞録”。
初当選した平成4年からこれをほとんどの世帯に配布してきた。
(野田泰博さん)
「見ざる言わざる聞かざるを反対にして
“見る 聞く 話す”。」
町の抱える課題をわかりやすい見出しをつけて解説するなど
住民に議会に関心を持ってもらえるよう工夫している。
さらにすべての議決について誰が賛成し誰が反対したかを一覧表にした。
議会で何が行なわれているかを正確に伝えるという
企業では当たり前の報告・連絡・相談(ほうれんそう)を住民との間で行おうとしたのである。
(野田泰博さん)
「これは当たり前だと思っている。
サラリーマンとしては
報告書を作ったりしているのは
そういう意味では会社の経験が生きたんでしょうね。」
この“栄町見聞録”は議会が身近になったと住民にも好評である。
(住民)
「議会の内容がなかなか見えないところがありましたよね。
いま町でこういうことをやっているんだ
こういうのが今 審議されてるんだって
そういうのが出てくるのはすごくわかりやすいですね。」
「どなたが何を発言されてその人の考え方がこれでわかる。
ものすごく透明度が高いんですよ。」
(野田泰博さん)
「サラリーマンは納税者であって
税金を使うことを自分でチェックしなきゃいけない。
どう使われていくかということが町を良くしていく。
いろんな考えをサラリーマンから発信していくことによって
僕は議会というのは変わっていくんじゃないかと思いますね。」
3月28日 おはよう日本
羽田空港国際線ターミナル。
多くの外国人観光客が帰国前に免税店を訪れる。
その一角を占めているのがランドセル。
今 日本のお土産として買い求める人が増えている。
アニメなどの影響で特に中国の子どもたちに人気である。
「ランドセルをテレビで見てほしくなったの。」
「赤が大好きなので買ってもらってうれしい。」
(店員)
「一番多い方で1人で4つお買い上げいただいたことがあります。
いろんな国で人気が出ているようです。」
人口13億6千万の中国では
この1~2年ランドセルが売れ始めている。
上海にある百貨店では日本製で値段は2万円~6万円。
中国の一般的な通学かばんと比べ約10倍にもなる。
それでも去年から中国人の客の問い合わせが増えていると言う。
この百貨店では去年11月に日本製品の特設コーナーでランドセルを並べた。
これまでは月に1個売れるか売れないかだったのが
1週間で20個以上売れた。
「軽くて自分の持っているかばんより使いやすいの。」
(百貨店 販売担当者)
「正直 最初に取り組んだときはそこまで売れるとは考えていなかったんですけど
最近急にランドセルの需要に兆しが見えている状態です。」
ランドセル人気は地方にも広がりを見せている。
上海から車で1時間の蘇州に住む小学2年生 居旭恒くんは
去年の入学以来日本製のランドセルを使っている。
(居旭恒くん)
「とっても使いやすいんだ。」
居くんの家は中国では平均的な家庭である。
ランドセルはかなりの出費だが
何年使っても壊れないと聞き
母親は思い切って買った。
「少し高いけれど一生に一度の買い物なので奮発しました。」
こうしたランドセル熱の高まりに業界も熱い視線を注いでいる。
少子化が進む日本では大幅な成長は望みにくくなっているからである。
そこで老舗メーカーは近く中国向けランドセルの現地生産に乗り出す計画である。
ランドセルメーカー 現地営業責任者 北宏志さんは
現地生産で価格を下げられれば
主に富裕層に限られている顧客のすそ野が一気に広がると期待している。
(ランドセルメーカー 現地営業責任者 北宏志さん)
「価格は約半分にしたいと思っています。」
さらに北さんは年密な市場調査を繰り返しニーズをくみ取ろうとしている。
調査の結果
・大きな荷物がたくさん入るものがよい
・水筒をつけるポケットを着けてほしい
・手提げにもできるような取っ手がほしい
中国ならではのニーズを知ることができた。
こうした調査結果を踏まえ新商品の開発も急いでいる。
さらに販路拡大を目指す北さんは上海で開かれた国際見本市に参加。
そこで日本にはない顧客層の広がりを実感した。
ブースに多くの若者がやってくるのである。
実際 中国人のバイヤーからも若者向けに刺繍の模様をつけたいという要望があった。
若者を引き付けるきっかけになったのがアメリカの有名女優 ズーイー・デシャネルさんの写真である。
ランドセルをバックとして愛用していることが世界中の若者の間で評判となったことで
ランドセル人気を加速させている。
「女の子に人気があるんだよね。
大学生の妹に買ってやるんだ。」
(ランドセルメーカー 現地営業責任者 北宏志さん)
「中国のお客様のために
中国のニーズに合った新しい形のランドセルを提案していきたいと考えています。」
日本で100年以上 子どもたちに愛されてきたランドセル。
その魅力が海を超えて伝わり始めている。
3月25日 キャッチ!
ペルシャ時代からの暦で3月21日に新年を迎えたイラン。
新年を前に加熱する伝統的な市場バザールは
特有の狭い路地を埋め尽くす大勢の買い物客でにぎわった。
(店員)
「ことしは皆まとめ買いをしないね。
買っても2,3個だよ。」
物価の高騰で市民の買い控えが起きていると言う。
新年の訪問客には新鮮な果物を振舞うのがイラン流。
しかし去年より値段が50%上がっているものもある。
ナッツも去年より15%ほど値上がりしている。
バザールを訪れていたモハンマド・マジディさん(26)。
カスピ海産の白身魚と新年のごちそうに欠かせない食材を求め
10軒近くの店を回ったが何も買えなかった。
(モハンマドさん)
「買い物はしたいけどこの先何があるかわからないので出費を抑えるしかない。」
物価が急上昇したのは核開発問題をめぐり欧米が制裁を強化した2012年以後。
一連の制裁でイランの生命線ともいえる原油の輸出量は3分の1に激減。
国外からの投資は滞り
通過リアルも先行きの不安から売られ大暴落。
輸入品などの値段が跳ね上がりインフレ率は45%(2013年)にまで達した。
イラン政府は
欧米と対話を進めるなどした結果インフレは大幅に改善したと主張しているが
それでも15%を超えている。
制裁の影響はモハンマドさんの仕事にも大きな影響を及ぼしている。
真新しい服を着て新年を迎える風習が残るイラン。
婦人服店を営むモハンマドさんにとってはかき入れ時のはずである。
(客)
「収入が変わらないのに値段は上がるのでなかなか商品に手が出ません。」
複数の仕入れ先を回り客の手が届く手頃な服を捜す努力を続けてはいるが
どこも卸売価格を引き上げていると言う。
(卸売業者)
「通関手数料の3割値上げの影響で卸売価格も2割ほど上げるしかない。」
コスト高による販売不振が響き
売り上げはこの数年で半分にまで落ち込んだ。
(婦人服店経営 モハンマドさん)
「本当にひどい状況です。
経済制裁が解除され景気が良くなることを願っています。」
制裁の影響はテヘランにあるNGO子ども支援施設にも及んでいる。
親元を離れて暮らす隣国アフガニスタン出身の子どもたちに勉強を教え
食事や服を無料で提供している。
運営資金は寄付金で賄いその4割は海外からの援助である。
制裁でイランへの送金が制限されたため外国からの寄付金が滞り
食事も満足に提供できない状況が続いている。
(NGO施設長 サハール・ムサビさん)
「以前は今日のように暖かい料理を毎日出していましたが
今は週2回が限界で今後がとても心配です。」
子どもたちのために何かできることはないか
サハールさんは新年を祝うイベントを開くことにした。
地元の支援者やボランティアも招待し
子どもたちの成長を間近に見てもらうことで支援の輪を広げるきっかけにしたいと考えたからである。
運営資金に充てようと子どもたちが描いた絵なども販売した。
(NGO施設長 サハール・ムザビさん)
「制裁で苦しんでいるのは彼らとその家族です。
私たちは政府同士が合意に達することを心から願っています。」
イランでは市民が外国メディアに対して本音を漏らすことは珍しいが
政権が欧米との交渉で制裁解除を引き出してくれると
期待の声の中にいら立ちや諦めのニュアンスも増えてきた。
一昨年発足した穏健派のロウハニ政権は
欧米との対話や経済再生といった公約通り
実際に核開発を制限する見返りに制裁の一部緩和で欧米側と合意するなど実績を上げている。
これは保守強硬派のアフマディネジャド政権時代には想像もできなかったことで
期待は一気に膨らんだ。
しかしその歴史的ともいわれた合意からすでに1年半近くが経った今も
制裁の全面解除の見通しは立っていない。
交渉期限を設けるものの去年も2度にわたって延長されるなど
国民は期待すれどもその都度裏切られるという状態である。
そうしたことが繰り返されれば
“政治的な駆け引きに気をとられ市民生活の実態に目が向いていない”
などと政権を批判する声が国民の間に広がりかねない。
イランとアメリカは過去の交渉で“実質的な進展があった”などと評価したうえで
これからが正念場だという認識を示している。
(3月21日 イラン ロウハニ大統領)
「いくつかの問題が残っている。
解決は可能だがまだ時間がかかる。」
(3月21日 アメリカ ケリー国務長官)
「双方にはまだ重大な隔たりがあり重要な決断をすべきだが容易ではない。」
イラン側はロウハニ大統領や外相らが
“すべての制裁の解除はデッドラインだ”として
この問題では譲らない姿勢を繰り返し強調してきた。
さらに最高指導者や議会の多数を占める保守強硬派の勢力は
もう1つの大きな争点の核開発の規模でも譲歩はしないようロウハニ政権を突き上げている。
ロウハニ政権としてはどちらか1つではなく
どちらも勝ち取らなければ自らの政治生命を危機にさらすことになりかねず
背水の陣で交渉に臨んでいる。
一方の欧米側も
制裁をかけたからこそイランを交渉のテーブルに引き戻すことができた。
さらには
制裁の緩和と引き換えに核開発の制限も受け入れさせることができた
と考えている。
長期にわたって軍事利用を疑うイランの核開発を制限するためにも
イランに圧力をかける有効な手段は残しておきたいというのが本音で
段階的な解除は譲らないものとみられる。
イランとアメリカは26日 外相会談を再開する。
双方ともに相手方の政治的決断だと譲歩を求めあっているのが現状で
期限内に枠組みをまとめることができるのか予断をゆるさない状況である。
3月24日 キャッチ!
スイスとドイツの国境バーゼル。
今スイスから国境を越えてドイツに買い物に行く人たちが急増している。
背景には急激なユーロ安」スイスフラン高がある。
今年1月スイスの中央銀行が
通貨フランの上昇を食い止めるために設定した対ユーロの為替レート上限を撤廃し
フランが急騰。
さらに3月ヨーロッパ中央銀行が量的緩和を始めたことからユーロが売られ
スイスフランの高止まりが続いている。
週末のたびに割安なドイツの小売店にスイスの人たちがこぞって買出しに行くことから
スイスとドイツの国境を超える路面電車は“ショッピングトラム”と呼ばれるようになった。
(買い物客)
「価格が安いからドイツに来ます。」
「同じもので同じ品質なのにスイスより安いわ。」
一方国境のスイス側にあるシュッテッキ・ショッピングセンターは苦戦を強いられている。
ドイツ側の小売店に対抗するため値下げをするなど対策をとっているが
1月以降売り上げは7%減少。
価格」競争では太刀打ちできないとして
今後サービスの向上などで客の減少に歯止めをかけたい考えである。
(シュテッキ・ショッピングセンター責任者 ティム・マイヤーさん)
「多くの店が商品すべてを10~15%値上げしています。
独自ブランドの良いサービスがあれば今後も生き残ることができるでしょう。」
ユーロ安フラン高はスイスの基幹産業である製造業にも打撃を与え始めている。
西部ローザンヌにある精密機械メーカー。
計測用の精密機器などを製造し
売り上げの半分以上をユーロ圏への輸出で賄ってきた。
しかし急激に進むユーロ安フラン高でコストは一気に20%上昇。
ユーロ圏の顧客から注文の延期やキャンセルが相次いでいる。
今は部品の調達先に値下げをしてもらうことでなんとかやりくりしているが
この状況が長引けばさらなるコストの削減に踏み切らざるを得ないという。
(シルバック社CEO エリック・シュニーダー氏)
「1年~1年半は利益がなくてもやっていけますが長期的には維持できません。
そうなれば工場の一部の海外移転や従業員の削減など
思い切った方法をとることが必要です。」
さらに観光産業にも大打撃となっている。
スイスはアルプスに囲まれていることからスキーリゾートが多く
本来なら冬から春にかけてかき入れ時を迎える。
しかし急激な為替の変動で
1月以降ホテルの予約が30㌫と減少した。
こうしたなか独自の対策をとるスキーリゾートも出てきた。
ヨーロッパでも有数のスキーリゾートを抱える南部の町グレヘン。
ユーロ安フラン高が進んだ今年1月
1ユーロ=1,35フランの固定レートを導入した。
この地域にあるホテルやレストランのほとんどがこの仕組みを採用。
このレートはユーロ危機が起きる前の水準で
ユーロ圏の客にとっては今より30%程度割安である。
(スキー客)
「ユーロで支払えば信じがたいほど得です。
本当に大きな割引受けられます。」
リゾートにとっては本来得られる収入を不意にすることになるが
対策の効果でキャンセルはほとんどなく
客をつなぎとめることに成功していると言う。
(グレヘン観光協会CEO ブレノ・シュトッフェル氏)
「今のレートで日々換算すれば損失は出ますが良い効果があります。
スイスフランのレートに敏感の人が各国から多く来るようになり
この営業努力によって良い見返りが期待できるのです、」
スイス経済全体はかなり深刻な状況である。
スイスの主力産業は精密機器や時計など輸出産業と観光産業。
この2つの産業が同時に打撃を受けていることから
スイスの大手銀行や主要なシンクタンクは
これまで1%後半としていた今年のスイスの経済成長率の見通しを
0,5%前後にまでいきなり引き下げたのである。
さらにスイスでは通貨高によってデフレに陥りつつあって
今年の消費者物価指数は1%以上のマイナスになるとみられている。
スイスの中央銀行は通貨高に歯止めをかけるため
1月にマイナス金利の幅を0,25%から0,75%にまで拡大したが
今のところその効果は出ていない。
スイスだけではなくデンマークやスウェーデンでも通過高を阻止しようと
マイナス金利を導入するなど
各国の中央銀行が競うようにして金融緩和に踏み切っている。
これを受けて金融市場に変化が出てきている。
ヨーロッパでは国債の利回りがマイナスになる
つまり国債を満期まで保有した場合
元本が目減りしてしまうという異常な事態になっている。
また株式市場にも資金が流れ込んでいて
ドイツやイギリスで株価が過去最高値を更新している。
デフレが懸念されている実態面での弱さとは裏腹に
株価債券高が進む状況に金融緩和による金あまりがバブルを招きつつあるという見方も出ている。
緩和競争は世界的に広がっていて
世界は経験したことのない“大緩和時代”に突入したとも言われている。
大規模な金融緩和を続ける日銀も紺の競争に加わっているととらえ
実際 日本国債も一時償還期限の短い国債の利回りがマイナスになった。
国債の取引量はほかの金融商品とは比較にならず
こうした国債バブルは仮に崩壊することになれば金融市場に与える影響は計り知れない。
ほかの国が緩和に踏み切ったから自分たちも緩和するといった安易な発想にとらわれるのではなく
中央銀行の政策が金融政策や世界経済にどういった影響を与えるのか
当局者が世界経済の安定に向けて
冷静に適切に対応することが必要である。
3月31日 編集手帳
釣ってきた魚を七輪で焼く。
火をおこすには風を送る団扇(うちわ)が要るのだが、
その団扇がない。
〈田中稔之(としゆき)くんはうちわがないので七輪をもってはしった…〉
画家、安野光雅さんの『絵のある自伝』(文芸春秋)には七輪を抱いて走る青年の姿が楽しく描かれている。
独自の幾何学的な抽象画の世界を切り開き、
9年前に78歳で亡くなった田中画伯の、
若き日の一場面という。
自分で走り、
おのが身体で風を起こす若い人に、
好都合な風は要らない。
七輪の挿話が胸に残るのは、
こちらが追い風頼みの年齢にあるせいかも知れない。
陸上の男子100メートルで桐生祥秀(よしひで)選手(19)が9秒87の快記録で優勝した。
追い風参考記録だが、
正式の記録に残る範囲に風速がとどまっていたとしても、
9秒台が出たはずと専門家は言う。
追い風をありがたがるよりは、
むしろ残念に思わせるところが大器の大器たるゆえんだろう。
〈今のわがこころに似たり春嵐〉(阿部みどり女)。
2020年の東京五輪でもまだ24歳か…と考えると、
わが心も春嵐に波立つ。
気の早い想像はおくとして、
競技場の風神には「助太刀無用」と告げておく。
3月29日 編集手帳
「水と安全はタダ」という言葉の原典は、
高度成長期のベストセラー 「日本人とユダヤ人」だといわれる。
イザヤ・ベンダサンと名乗る自称ユダヤ人の著者が、
「日本人は、安全と水は無料で手に入ると思いこんでいる」と書いた。
命の長い警句である。
本の出た四半世紀後に阪神大震災とオウム真理教の無差別テロが起きたときも、
危険に無防備な日本人を語る際の枕ことばになった。
さ らに20年がたち、
さすがに少し時代に合わなくなってきた感もある。
安全に対する意識に限らない。
店で水を買って飲む。
以前は想像すらできなかったことが当たり前になった。
東京都水道局が今年に入り、
水道水をテーマに川柳、短歌、四コマ漫画を募集した。
小学生が詠んだ入選作を紹介したい。
〈小学校まいにち 行列水飲み場〉。
校庭で汗をかいた子供には水道の水もごちそうだろう。
どんな水を飲むかは好みの問題である。
水道水の復権に加担するつもりもないが、
安全な水が簡単に飲めることのありがたみは忘れずにいたい。
原発事故で、
校庭から子供の姿が消え、
蛇口も閉められた学校があった。
つい4年前である。