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そこには恐ろしき酒の精のひそめば

2015-04-04 07:30:00 | 編集手帳

3月27日 編集手帳

 

なぞかけがある。
歌舞伎の好きな方に説明は要るまい。
「理想の酒」とかけて「義経千本桜」と解く。
その心は「静かに、ただ飲む」。
源義経の愛人・静(しずか)御前と家臣・佐藤忠信(ただのぶ)の 名を配したシャレである。

桜の咲く頃は何かと酒の席も多くなる。
飲める人は静かに、
ただ飲む。
飲めない人には無理じいをしない。
改めて、
なぞかけを肝に銘 じていい季節である。

〈未成年飲酒、
 過度の飲酒、
 無理な飲酒を『しない』『させない』ことを約束します〉。
本紙の北海道版によれば、
小樽商科大学が新入生全員に対して誓約書の提出を求めるという。

若い人の命を奪う飲酒事故ほど、
つらく悔しい思いに駆られるニュースはない。
履歴書の趣味欄に「飲酒」と書きたいクチの身で申し上げるのも僭越(せんえつ)だが、
新入生に限らず、
誰もが宴席の前には服用すべき言葉だろう。

北原白秋に『酒の精』という詩がある。
〈酒倉に入るなかれ、
 奥ふかく入るなかれ、
 弟よ
 そこには恐ろしき酒の精のひそめば〉(岩波文庫『北原白秋詩集』)。
自分の人生を断ち切ってまで、
誰かの命を縮めてまで、味わう価値のある酒はこの世にな い。

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桃色の切符

2015-04-03 19:48:16 | 編集手帳

3月24日 編集手帳

 

桜の花びらには小さな切れ込みがある。
詩人の杉山平一さんは切符に見立てた。
〈みんなが心に握つてゐる桃色の三等切符を/神様はしづかにお切りになる…〉(『桜』)

「三等」というのがいい。
人に揉(も)ま れて押し合い、
へし合い、
ときには窓から雨風が吹き込む人生の旅にはたしかに、
グリーン車の切符は似合わない。
きのう、
東京で桜が開花した。
若い血潮を連想させる桃色の花びらを見ては多くの人が、
命の尊さに思いをめぐらす季節である。

いやな記事を読んだ。
千葉県船橋市の県立高校で、
30歳代の男性教諭が子猫を学校の敷地に生き埋めにしたという。

野良猫が産み落とした5匹で、
少なくとも4匹は生きていた。
「いずれ死んでしまうと思った。対処の仕方が分からな かった」そうだが、
穴を生徒に掘らせるとき、
わが手で埋めるとき、
どんな気持ちでいたのだろう。

〈百代(はくたい)の過客(かかく)しんがりに猫の子も〉(加藤楸邨)。
「百代の過客」(永遠の旅人)は時の流れを指す。
生まれたばかりの子猫だって、
小さな肉球の手に切符を授かっている。
限りある時間を精いっぱい生きていく桃色の切符である。

 

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日本・フィリピンの若者たち “被災体験を防災に生かしたい”

2015-04-03 07:30:00 | 海外ネットワーク

3月22日 NHK海外ネットワーク


4年前の東日本大震災
そして一昨年 フィリピンに壊滅的な被害をもたらした台風。
2つの被災地の若者同士が交流を深め
自分たちの経験をどう防災に生かしていくか
1年かけて話し合った。

3月15日 国連防災会議の一環として開かれたイベント。
自然災害にどう立ち向かっていけばよいのか
若者たちが自分たちの考えを発表した。
(被災地出身の学生)
「震災を経験した僕がやりたかったのは
 被災地の未来やこれからの防災を考えること。」
中心になったのは東日本大震災で被災した4人とフィリピンの台風で被害にあった3人である。
7人はこの1年間 発表に向けて議論を積み重ねてきた。
メンバーの1人 西城国琳さん(22)は
宮城県南三陸町の自宅が津波で流され叔母やいとこら親せき5人を亡くした。
フィリピンの若者と話すうちに“復興にかける思いに変わりはない”と強く感じるようになった。
(西城国琳さん)
「南三陸町はすごくいい場所。
 大好き。
 その南三陸町から若者がいなくなると将来が不安。
 それをどう立て直していくか。」
フィリピンの台風被害からの復興に学べることはないか。
西城さんたちは最大の被災地タクロバンを訪れた。
死者・行方不明者が合わせて7,900人にのぼったフィリピン。
西城さんたちは被災地の住民たちからインフラ整備などが進まない現状を聞いた。
そんな厳しい状況の中でも復興の支えになっているのが大勢の若者たちだった。
西城さんの目には
自分たちの力で新しい家を建てていた若者たちの姿が強烈に焼き付いた。
(西城国琳さん)
「若者の団結力と
 若者で社会を作ろうとするパワーがすごく勉強になる。」
帰国した西城さん。
“フィリピンと比べて日本の復興は国からの手厚い支援に支えられている”と気づいた。
(西城国琳さん)
「最初はがれきもあったがかさ上げしている。
 インフラの部分はだいぶ復興していると思う。」
しかし“日本には復興に自らかかわろうとする若者が少ないのでは”と感じている。
3月 今度は西城さんが南三陸町にフィリピンの若者たちを迎えた。
向かったのは津波で流された西城さんの自宅の跡地。
思い出がたくさん詰まった家を一瞬で失った恐ろしさを訴えた。
続いて西城さんは家族が暮らす仮設住宅に案内した。
“フィリピンを訪れて初めて気づいたことがある”と伝えた。
(西城国琳さん)
「以前は自分の仮設住宅は狭いと思っていたけど
 タクロバンの仮設住宅を見た後は考えを改めた。
 私はじゅうぶん恵まれていると思った。」
フィリピンの若者も日本の状況を見て復興への思いを強くした。
(フィリピンの被災者)
「日本の復興のスピードはとても早い。
 政府が地域社会をしっかり支えている。
 圧倒されました。」
発表当日 西城さんたちは
被災したアジアの若者たちが防災を話し合う会議を定期的に開くことを提案した。
海外の災害でも決して他人事ではない
自分たちの問題だと思って防災に取り組んでいきたい
と考えたからである。
会場の参加者からは
被災した自分の経験を世界のために役立てたいという意見が相次いだ。
(参加者)
「体験を今まで語ることができなかった。
 震災から4年たってフェイスブックで投稿できてやっと気持ちの整理がつき始めたので
 これからいろんなところに行って
 外国や日本国内でもどこでもいいので自分の体験を伝えていこうと思った。」
会場の若者たちの熱意に西城さんは勇気づけられた。
(西城国琳さん)
「みんな心の中にはすごく熱いものを秘めていると改めて感じた。
 みんな頑張ろうとしているんだなというのがすごく伝わってきた。
 世界を変えていくのは若者なので世界中の若者をつなげていきたい。
 使命感と負けていられないというのは強いですね。」

 

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世界中で舌鼓“世界中料理の日” 

2015-04-02 07:30:00 | 海外ネットワーク

3月22日 NHK海外ネットワーク


3月19日 世界150か国のレストランで一斉にフランス料理を楽しもうというイベントが開かれた。
グード・フランスと銘打ったこのイベント
フランス語でフランスの味覚を表す Gout de Franse と
英語の Good France からつけられた。

フランス ベルサイユ宮殿で19日に行われたグード・フランスのセレモニー。
フランスの代表的なシェフと外務省が企画した政府肝いりのプロジェクトである。
(シェフ アラン・デュカス氏)
「24時間 世界がフランス料理をたたえ続けます。」
同じ日 ニューヨークでもグード・フランスのイベントでたくさんの人たちがフランス料理を楽しんだ。
食前酒に始まり
メインディッシュ
デザートと続くフランス料理のコースを味わってもらう。
プロジェクトに賛同した150か国 1,300以上の店が
正統派のフランス料理で客を楽しませた。
来日したプロジェクトの責任者フランスのファビウス外相は
グード・フランスの目的の1つは
郷土色豊かなフランスの地方の文化に目を向けてもらうことだ
と話していた。
(フランス ファビウス外相)
「フランスの美食文化はフランスじゅうに浸透していて
 たとえ小さな町であっても素晴らしい料理に出会うことができる。
 フランスのさまざまな地方に海外からも大勢の観光客が訪れれば
 各地方の発展にもつながるのではないかと考えている。」
日本でも60を超えるレストランがグード・フランスに参加している。
一口にフランス料理と言ってもさまざまで
沿岸部と内陸部では使う食材も異なる。
フルコースもあれば気軽に食べられる1品料理もある。
銀座のフランス料理店では
美食の街と言われるリヨンの家庭料理を売りにしている。
魚は川魚。
ソースのだしは湖でとれるザリガニの殻でとる。
20を超える地方があるフランス。
そのそれぞれに伝統の味がある。
(料理店の客)
「そういう料理は知らなかった。
 発見だった。」
(フランス料理店 シェフ クリストフ・ポコさん)
「地方によって別々のスペシャリティがある。
 自分の生まれたところの味
 思い出をお客さんに伝えたい。」
地方の料理の特色を生み出しているのは地元の食材である。
ブルゴーニュ地方で180頭のヤギを飼っているミシェル・ラシャルヌさん。
ヤギの乳でつくる独特の風味があるチーズがこの地方の特産である。
(ミシェル・ラシャルヌさん)
「とても薄く切れる。
 フォアグラのようでしょう。
 とても繊細でなめらか。」
チーズの発酵にはゆっくりと時間をかける。
舌触りのよいチーズを作るため手間は惜しまない。
“地域の伝統を守っていくのは自分たちの責任だ”と言う。
(ミシェル・ラシャルヌさん)
「チーズは私たちの生活の一部で
 この地域では“食の文化遺産”のようなもの。」
地域の食材を生かして作るフランス料理。
都内にある大使公邸の厨房では腕利きのシェフが本国から食材を取り寄せて晩餐会の支度中。
ブルターニュ地方のスズキは店頭的な一本釣り漁で獲ったもの。
肉料理は風味の良さが特徴のロワール地方の合鴨。
こうした食材がその地方ならではの味付けで仕上げられていく。

このグード・フランスの取り組みを来年以降も続けていきたいということである。
グード・フランスのイベントには今回世界中で10万人が参加してフランス料理を楽しんだ。

 

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キューバ 新時代へ 個人のビジネス急増

2015-04-01 07:45:00 | 海外ネットワーク

3月15日 NHK海外ネットワーク


野球がさかんなキューバ。
子どもたちの心もアメリカへと飛んでいる。
「ヤンキースに入りたい。」
「アメリカの選手のプレーが見たい。」
時流に乗ってビジネスに取り組む人も増えている。
オープンカーに観光客を乗せるツアーで生計を立てている男性。
社会主義のキューバでは原則として労働者全員が公務員である。
男性もかつては公務員だった。
しかし政府が経済活性化のために一部の職種で個人のビジネスを認めたのを機に
思い切って仕事を変えた。
その結果 公務員試合には約3,000円足らずだった月収は
多い月は10万円を上回るまでになった。
「国交正常で観光がさらに盛んになれば仕事が増えてもっとお金を稼げる。」
個人経営のレストラン。
エビなどカリブ海の海産物をふんだんに使ったメニューで外国からの観光客をもてなす。
店では最近 客の半数以上をアメリカ人が占めるようになった。
(アメリカ人観光客)
「キューバの本場の料理を食べることができてよかった。」
今はアメリカから直接キューバに行くことはできないが
第三国を経由して入国するアメリカ人旅行客が増え続けている。
1日の売り上げは多い日には30万円以上になる。
(レストランの店主)
「まずキューバで店を大きくして
 アメリカ 世界各国に店を広げたい。」
個人でビジネスを営む人はキューバで年々増えている。
しかしその割合はまだ労働者全体の1割程度と言われている。
ビジネスには多額の資金が必要だからである。
大半の労働者は個人のビジネスとは無縁である。
アメリカとの国交正常化が実現しても
収入の上ではあまりメリットがないと見込まれている。
ハバナに住む元公務員のカルメン・カルミナールさん
国交正常化は社会主義体制に手厚く守られてきた市民生活を変えてしまいかねないと懸念している。
カルミナールさんは家事手伝いの仕事をしていて去年病気で働けなくなった。
それでも母親と娘2人となんとか暮らしてこられたのはキューバの福祉制度のおかげである。
その1つが配給制度。
主食の米・油・豆
キューバでは政府の補助ですべての国民がひと月に決められた量の食料品を割安で手に入れることができる。
しかしキューバ政府は財政難から配給を年々減らしている。
今の1か月分の配給量では10日ほどで食料が尽きてしまうと言われている。
(カルメン・カルミナールさん)
「以前よりも配給でもらえる量が減った。
 どんどん減っていって大変なことになるのではないかと心配。」
足りない分ははるかに高い市場価格で買う人もいる。
しかしカルミナーラさんはお金がなく米も配給頼みである。
配給と娘の収入でなんとか暮らしているカルミナーラさん。
アメリカとの国交正常化の実現はキューバ国民の間に
昔は無かった格差を生み出すことになるのでは。
そんな新たな懸念が持ち上がっている。
(カルメン・カルミナールさん)
「私は皆が平等なのが理想だと小さいころから教わって育ってきた。
 不平等は嫌いだが残念ながら今はそれが現実になっている。」


 

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