6月21日 おはよう日本
今年4月に完成公開された超小型衛星のモデル機。
福井県内の企業4社などが共同開発した。
縦横10cm
長さ30cmとコンパクトなこの衛星。
費用が安く短期間で製造できるのが長所である。
(開発チームリーダー セーレン電子 山田さん)
「衛星を作る
しかも量産型で世界と戦える状態に対してどうだ
そう言われてみると
もうけっこう7割とか8割とかの段階まで来ている。
そう我々は思っている。」
この技術を生かしていま福井県が作ろうとしているのが「県民衛星」である。
縦横60cm長さ80cmと一回り大きい小型衛星で
宇宙から地上を撮影し
精度の高い画像データを送る機能を備える。
背景には県内の産業がおかれた厳しい現状がある。
(県 新産業創出課 堤参事)
「経済が縮小に向かう恐れを非常に感じているなかで
やはり新しい産業というのを立ち上げていく必要があるんじゃないかというふうに考えたのが発端。」
平成の初めに1千億円を超えていた「眼鏡フレーム」の出荷額は20年余で半減。
もう1つの基幹産業「繊維」の事業所数はこの20年で5分の1に減少した。
県内産業の生き残りをかけて宇宙ビジネスの創出に狙いを定めた福井県。
約4億円の費用を投じて県の施設の中に衛星開発のための新設備を整備した。
1800ワットもの強力な光を当てる設備。
衛星のソーラーパネルが宇宙で太陽光に耐えられるか確かめることができる。
「振動試験機」はロケットで打ち上げられる際の衝撃に耐えられるかどうか
あらゆる方向から激しい振動を与えて確かめる。
小型衛星の性能試験は一通りこの場所で行うことができ
県によるとこれだけの設備がそろった施設は全国でも数少ないということである。
この施設で5月から「県民衛星」の開発・設計に向けた動きが本格的に始まった。
集まってくるのは福井県の伝統産業「繊維」や「眼鏡フレーム」の製造にかかわる企業の人たちである。
日頃は「眼鏡フレーム」を削る機械の組み立てが専門のメンバー。
その技術は精密な作業が求められる衛星の組み立てにも生かされているという。
(開発メンバー 鯖江精機 大久保さん)
「この会社で組み立てとか経験して
そういったのがわかってきて
今までの業務が少しは生きてるのかなと。」
さらに衛星の心臓部分となる基盤の製造には中小企業ならではのノウハウも生かされている。
(開発メンバー セーレン 荒井さん)
「ふつう人工衛星だと宇宙船用の部品を使うが
我々はそういう部品を使わずに普段使い慣れた民生部品を使うことで
コストと開発工数を削減している。」
福井県が来年の打ち上げを目指す「県民衛星」。
たとえば去年のような記録的な大雪で地上からの状況把握が難しい場合でも
衛星からの画像データがあれば
渋滞の恐れがある道路などを随時把握して優先的に除雪できる可能性がある。
(県 新産業創出課 堤参事)
「過去には福井豪雨とか
まだ記憶に新しい大雪
こういったものでやはり何年に1回か発生する恐れはこれからもあるのではないかと思っている。
どういった使い方ができるかというのもいろいろ掘り起こしていくことが必要かと思う。」
福井市では宇宙に関する国内最大の国際シンポジウムISTSが6月21日まで開かれ
福井県の担当者も県独自の衛星を持つメリットを国内外の研究者などにアピールしていた。
地方初の宇宙ビジネスに期待が寄せられている。