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女性の生きづらさ描く 韓国小説に共感の声

2019-07-01 07:00:00 | 報道/ニュース

6月5日 国際報道2019


韓国で記録的なベストセラーとなっている小説
「82年生まれ、キム・ジヨン」。
儒教の伝統が根強く残る韓国では
さまざまな局面で
男尊女卑の考えが見え隠れすると言われる。
この小説はそうした韓国社会で
1人の女性が
就職や結婚・出産など人生のさまざまなステージで直面する生きづらさを描いている。
「82年生まれ、キム・ジヨン」は韓国での売り上げが100万部を超えた。
これはおよそ10年ぶりの記録である。
読んだ女性たちの間で深い共感を呼び
そして影響を与え始めている。

小説「82年生まれ、キム・ジヨン」。
主人公は1982年に生まれた30代前半の女性である。
広告代理店で働く主人公のキム・ジヨンが
出産を機に仕事を辞めて
家事や育児に追われるなか心を病んでいく姿が描かれている。
特に読者の共感を呼んだのが出産をめぐって夫に詰め寄るシーンである。
「最悪
 君が会社を辞めることになったとしても心配しないで。
 僕が責任を持つから。」
「私は今の職場や友だちも
 今までの計画も
 全部失うかもしれないんだよ。
 あなたは何を失うの?」
出産したら女性は仕事を辞めるのが当たり前ー。
こうした韓国社会に根強く残るさまざまな男尊女卑の考えや実態を描いた小説でである。
作者のチョ・ナムジュさん。
放送作家として働いていたが
出産を機に退職せざるを得なかった。
1980年以降
韓国では経済成長が加速し女性の社会進出が進んだが
家事・育児は女性が行うものという価値観が根強く残ってきたのである。
自分と同じような境遇に苦しむ女性たちが多いことを知ったチョさん。
自らの体験のほか記事やブログから実際の出来事や女性の本音を題材にして小説を書いた。
(チョ・ナムジュさん)
「周りの女性たちの声を聞きながら
 女性としての人生を振り返る機会になり
 私の人生
 韓国の女性たちの人生を買いたいと思い小説を書きました。
 主人公の悩みや生活が普通の女性たちに共感してもらえたらと思いました。」
この小説の読者の1人 
1984年生まれのイ・ソンギョンさん(35)。
夫と2人の子どもたちを暮らす専業主婦である。
同世代の女性の悩みが描かれていると知り
この小説を手に取った。
かつては伝統建築の修復を行う会社に勤めていたイさん。
ずっと働き続けたいと考えていたが出産を機にやむなく退職。
仕事をあきらめ子育てに専念してきた。
夫はそれが当然のことだと考え
イさんもそれが女性の役割だと受け入れてきたという。
そんなイさんの心に小説のある一説が突き刺さった。
仕事をやめ子育てに専念する主人公のキム・ジヨンが公園でコーヒーを飲んで休んでいると
行きずりのサラリーマンがこうつぶやく。
俺も旦那の稼ぎでコーヒー飲んでぶらぶらしたいよなあ・・・
ママ虫もいいご身分だよな・・・
“ママ虫”とは
“夫の稼ぎで遊んで暮らしている”として専業主婦を揶揄する言葉である。
イさんも言われたことがあるという。
(イ・ソンギョンさん)
「母親たちを虫に例えた“ママ虫”という言葉が出てきます。
 “家で楽な生活してるね”とか“いつまで遊んでるつもり?”と言われて
 だけど私は遊んでなんかいません。
 本当につらかったんです。
 でも我慢するのが当たり前で
 おかしいと思いながら何も言えませんでした。」
イさんはこの小説を読んで
心に封印してきた男女の役割分担への疑問が強くなったという。
そしてこれからの人生は自分のやりたいことを実現しようと決意した。
それはもう一度働き始めることである。
(イ・ソンギョンさん)
「渡井も仕事の面でずっと夢を持っていたので
 これからは違う人生を生きていきたいです。」
イさんは再び働くためにかつて携わっていた伝統建築の修復に関する資格を取る勉強を始めた。
当初は理解を示していなかった夫も
妻が真剣に取り組む姿を見ているうちに
家事や育児に協力するようになった。
今ではイさんが勉強しているときは夫が子どもたちの食事を作っている。
夫が作ったのは娘の大好物の煮込みうどん。
今では料理も手慣れたものである。
(夫 イ・スングさん)
「最初は少し当惑したけど
 妻が外で活躍することで新たな人生を見つけられるので前向きに捉えています。」
小説をきっかけに女性たちに変化が生まれ始めた韓国。
インターネット上には“自分の生き方を見つめ直した”という読者の声が次々と寄せられている。
“これまでの考えが変わりました”
“自分も変わらなければと思いました”
作者のチョさんは
女性の生きづらさに社会が目を向けるきっかけになればと考えている。
(チョ・ナムジュさん)
「不条理な状況に直面したときその場で問題提起できる女性は多くはありません。
 小説の影響が大きいかはわかりませんが
 女性たちの不条理な状況への態度が変わってきていると思います。」




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