1960年代後半から70年代にかけて、「ブラス・ロック」といわれたカテゴリーが存在しました。文字通りブラス・セクションを加えたロック・バンドで、その代表格が、
シカゴとブラッド、スウェット&ティアーズです。
ぼくはこれにチェイスを加えて、ひそかに
「三大ブラス・ロック・グループ」と呼んでいます。
なぜ「三大」なのか。
それは、ぼくが
ちゃんと聴きこんだことがあるのが
このみっつしかないから なんですね。
この「チェイス(Chase)」というグループのユニークなところは、ジャズ畑出身のプレイヤーがバンドを作っていたことです。しかも、管楽器がトランペットばかり4本!
高校時代、先輩に「文化祭にバンド作って出るから、お前ベース弾け!」と無理矢理かり出されたことがあります。ブラスバンド部でトランペットを吹いていたその先輩(これがまたうまいと評判だったのよ)が持ってきた楽譜の中にこの「黒い炎」があったわけです。
黒い炎!
もうタイトルからしてカッコよすぎる!
思わず体の奥からウズいてしまうくらいですわ・・・。
しかもトランペット部隊によるアンサンブルのゴキゲンなことときたら、もうシビレっぱなしです!!
特筆しておきたいのは、チェイスのブラス・セクション。
たいていブラス・セクションにはサックスやトロンボーンなども加わっているのですが、チェイスはトランペットのみ4本、というところがユニークであり、サウンドの特徴でもあります。
トランペットのハイノートというものがどれだけ聴衆の血を沸き立たせるのか、ご存じの方はご存じでしょう。
しかもそれが見事なアレンジのもと、パワー全開の完璧なアンサンブルで迫ってくるんです!!!
このグループはデビュー後ほんの数年活躍しただけで解散。1974年に再結成されましたが、その年8月、飛行機事故のためメンバーのほとんどを失ってしまいました。
さて、この曲の意外な「効果」というか、「波紋」ですが、「ああそうか、ジャズにもこんな感じの曲があるんかぁ~」と思えるようになったことですね。つまり、いつの間にか「ムズカシそうでワケわからん」としか思ってなかったジャズに対する偏見がなくなってたってことです。
しかし偏見はなくなっても、ジャズっつーものがムズカシく感じられるという思いにはまだまだ変わりはなかったのです・・・
◆黒い炎/Get It On
■シングル・リリース
1971年
■作詞・作曲
ビル・チェイス/Bill Chase、テリー・リチャーズ/Terry Richards
■プロデュース
フランク・ランド/Frank Rand、ボブ・デストッキ/Bob Destocki
■チャート最高位
1971年週間チャート アメリカ(ビルボード)24位(1971年7月)
■録音メンバー
[チェイス (Chase)]
ビル・チェイス/Bill Chase (lead & solo trumpet)
テッド・ピアースフィールド/Ted Piercefield (2nd.trumpet)
アラン・ウェア/Alan Ware (3rd.trumpet)
ジェリー・ヴァン・ブレア/Jerry Van Blair (4th.trumpet)
エンジェル・サウス/Angel South (guitar)
デニス・ジョンソン/Dennis Johnson (bass)
フィル・ポーター/Phil Porter (keyboards)
ジェイ・バリッド/Jay Burrid (drums)
テリー・リチャーズ/Terry Richards (vocal)
■いとしのレイラ (Layla)
■1970年
■デレク&ザ・ドミノス (Derek & The Dominos)
☆エリック・クラプトン(g,vo)
☆デュアン・オールマン(g)
☆カール・レイドル(b)
☆ボビー・ウィットロック(keyb,g)
☆ジム・ゴードン(drs)
せつなさを秘めたホロ苦いラブソングですね。親友の奥さんに抱いてしまった想いをこの歌に託している、というのは非常に有名な話です。
しかしちょっと待て!
親友の嫁さんに横恋慕したとしても、その気持ちは普通隠すんと違うか?堂々とレコードにして売り出すっちゅーのはどーゆー心境?
この曲を知ったばかりの頃は「クラプトンってなんて一途なんだろう…(感涙)」としか思えなかった純情なボクだったのに、ナゼ今ではこんなウワサ好きの近所のオバサンようなことしか頭に浮かんでこないのだ、ううぅぅ……。
アルバム『いとしのレイラ』(正式なタイトルは『レイラとその他色とりどりのラブ・ソング』という長いもの。デレク・アンド・ザ・ドミノス。)にロング・ヴァージョンが収められています。これは有名なリフを持つ前半部分と、ボビー・ウィットロックのどこか温かいピアノにデュアン・オールマンの聴く者の胸をかきむしるようなスライド・ギターがちりばめられている後半部分とで構成された、とてもドラマティックなものです。
ちなみに、このアルバムには「リトル・ウィング」、「恋は悲しきもの」、「ベル・ボトム・ブルース」などの、多くの名曲も収められています。
「レイラ」は、聴いたその日から大好きになった曲です。これからもずっとずっと聴き続けてゆくでしょう。