ある音楽人的日乗

「音楽はまさに人生そのもの」。ジャズ・バー店主、認定心理カウンセラー、ベーシスト皆木秀樹のあれこれ

怪談好きです・その2

2005年06月30日 | 見る聴く感じるその他

                     円山応挙の作として有名な幽霊画。凄みを出すために応挙がわざと幽霊の足を描かなかったことから、「幽霊に足がない」イメージが広まったそうです。


 昨日というか、今日というか、とにかく夜中に帰ってきて、それから「また怪談の記事を書こうかな~」と思ったのですが、やっぱりちょっとコワくなったので、ヤメにしました。


 ぼくは、幽霊などの超自然現象よりも、日常に潜む恐怖を題材にしたものの方に恐ろしさを感じます。
 もっと言えば、生きた人間のしでかすことの方がコワい。
 幽霊が怖くないのではなくて、安直に幽霊話をでっち上げるのはなんか反則技(笑)のような気がするのです。
 それよりは、誰にでも起こりそうな日常のひとコマから恐怖を導き、それを作品として昇華させたものの方に読みごたえを感じるのです。
 もちろん、創作と分かっていても髪の毛が逆立つような思いをさせられる幽霊譚もいくつもありますね。


 では、本日も紹介してみることにします。


炎天 August Heat   作 ウィリアム・F・ハーヴィー(1885~1937)
 挿絵画家の「自分」は、大理石彫工の男と知り合います。ふたりは話しているうちに二重の驚くべき偶然を発見するのです。頭がへんになりそうなくらい暑い日のことです。
 読み手は示唆を与えられるだけ。それがとても奇妙な恐怖を生みます。
 珠玉の一編だと思います。


人間嫌い The Misanthrope   作 ジョン・D・ベレスフォード(1873~1947)
 島に渡った「わたし」は、そこで隠者同様の生活を送る男からある秘密を打ち明けられます。好奇心にかられた「わたし」は、その秘密を自分にも試して貰いたくてたまらなくなり、隠者もしぶしぶそれに同意するのですが・・・。
 幽霊は出てきませんが、どっぷりと
奇妙な読後感に浸ることのできる作品です。


幽霊駅馬車 The Phantom Coach   作 アメリア・エドワーズ(1831~1892)
 鳥撃ちにでかけた「わたし」は大雪に遭い、やっとのことで駅馬車に乗り合わせたのですが、そこで凄惨なものを見ることになります。
 オーソドックスな幽霊譚の一種です。話の内容はタイトルから想像できるかもしれませんが、鬼気迫る筆力によって戦慄を覚える作品です。


幽霊滝の伝説 The Legend of Yurei-Daki  作 ラフカディオ・ハーン(=小泉八雲 1850~1904)
 ハーンの作品のなかでぼくが最も恐怖を感じたのが、この短編です。
 勝気な主人公が賭けを兼ねた肝試しに夜の幽霊滝へ行きます。滝では不思議なことがありますが、みごとに賭けをせしめます。しかしその引き替えに・・・。
 「幽霊滝」は実在の滝です。それがより恐怖感を醸し出すことにつながっています。
 ハーンの作品は日本の風土に対する深い愛着や、人間の持つ哀れみが感じられるので、とても好きです。 


スペードの女王 Пиковая Дама   作 アレクサンドル・プーシキン(1799~1837)
 主人公は、賭けカルタの必勝法を知っていると噂される伯爵夫人にその方法を教えるよう迫ります。主人公に対する恐怖のためこと切れた伯爵夫人は、ある夜主人公の枕元に現れ、その必勝法を教えます。ついに秘策を手に入れた主人公は、賭けの席に着くのですが・・・。
 民話・寓話的な要素も含まれているこの幻想的な物語は、ロシアの文豪プーシキンの最高傑作とも言われています。


 短編は、まさに怪談の醍醐味ですね。







コメント (2)
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