映画という非日常の世界に、共感を覚える命題が含まれていたり、自分の感情を刺激する場面があったりすると、それだけでその作品が好きになってしまうことが多々あります。
見た映画の数が増えるにともない、「これ良いなぁ~」と思ってしまう映画の数も当然増えることになりますが、このことは、ぼくがわりに女性にホレっぽいこととなにか関係があるのか、などと思ってしまったりいたします。
しかし良くしたもので、ホレっぽくはあっても、のめりこんでしまう女性にはそうそう出会うものではないのですね。
「ミッドナイト・ラン」という映画に対してぼくが抱く感情は、「好き」というレベルを通り越してます。
でも、部屋中をポスターで埋め尽くしたり、一日に必ず一度は見る、などの情熱的な行為に走ってるわけじゃありません。
出演者、登場人物の性格描写、話の筋立て、それやこれやが全てぼくのツボなんです。そうそう巡り会うことのない「のめりこめる相手」なんでしょうね。
孤独なバウンティ・ハンター(賞金稼ぎ)と正義感の強い会計士の、命がけの「逃避行」をコミカルに描いた、一種のロード・ムービーにしてバディ(相棒)・ムービーです。格闘シーン、カーチェイスもふんだんに出てきます。
ジャック・ウォルシュ(ロバート・デ・ニーロ)のデューク(チャールズ・グローディン)に対する受け答えは粗暴で突き放したものですが、グローディンの返しがユーモラスでどこかとぼけた味があって、思わず笑ってしまいますね。
ロバート・デ・ニーロ(左)、チャールズ・グローディン(右)
ジャックが別れた妻ゲイルと娘デニースに再会する場面では、いまだに消し去ることのできないゲイルへの愛情、決してジャックを嫌いになったわけではないゲイルの気持ち、そしてジャックのデニースに対する情愛が伝わってきて、思わずしみじみしてしまいます。
とにかくぼくの好きな要素・エピソード満載です。
ロバート・デ・ニーロ(左)、チャールズ・グローディン(中)、ウェンディ・フィリップス(右)
ロバート・デ・ニーロ(左)、ダニエル・デュクロス(右)
「ビバリー・ヒルズ・コップ」では石頭の刑事を好演したジョン・アシュトンが、ここでは対照的に一筋縄ではゆかない、油断のならないライバル賞金稼ぎマービンを演じているのですが、このマービンの存在が面白いし、マービンとジャックの絡みにいろんな伏線がひそんでいたりして、目が離せません。
今では名脇役に成長したジョー・パントリアーノの存在もキマッてる。
ジョン・アシュトン(左)、ロバート・デ・ニーロ(中)、チャールズ・グローディン(右)
ロバート・デ・ニーロ(左)、チャールズ・グローディン(中)、ジョン・アシュトン(左)
ジョー・パントリアーノ(左)、ロバート・デ・ニーロ(右)
一発も銃弾が放たれず、殴り合いもないのに、今まで見た映画の中でも有数の興奮を感じた空港でのクライマックスは、まさに白眉。
ラストのデ・ニーロとグローディンの「来世での友情」を誓うやりとり、そして友情と寂寥感漂う別れのシーン。
ヤフェット・コットー(中)
左からリチャード・フォロンジー、チャールズ・グローディン、ロバート・ミランダ、デニス・ファリーナ、ロバート・デ・ニーロ
そして忘れちゃならないテーマ曲。アメリカン・ロックのエッセンスを抽出したような曲です。そしてエンディング・テーマはそのバリエーション。カッコ良い曲です。
しかし一番好きなのは、全編を通じて「一匹狼の裏側にある孤独感」を感じられるところなんです。
そしてそれらはみな「アメリカ映画のお決まりパターン」のひとつなんでしょうね、きっと。
そしてまんまとそれにハマってしまったぼくがいるわけです。
でも、わかっていながら何度でも繰り返して見てしまうのです。
◆ミッドナイト・ラン/Midnight Run
■1988年 アメリカ映画
■監督・製作
マーティン・ブレスト/Martin Brest
■音楽
ダニー・エルフマン/Danny Elfman
■出演
ロバート・デ・ニーロ(ジャック・ウォルシュ)
チャールズ・グローディン(ジョナサン・マデューカス)
ヤフェット・コットー(アロンゾ・モーズリー)
ジョン・アシュトン(マービン・ドフラー)
デニス・ファリーナ(ジミー・セラノ)
ジョー・パントリアーノ(エディー・モスコーネ)
リチャード・フォロンジー(トニー・ダーボ)
ロバート・ミランダ(ジョーイ)
ジャック・キーホー(ジェリー・ガイスラー)
ウェンディ・フィリップス(ゲイル)
ダニエル・デュクロス(デニース・ウォルシュ)
フィリップ・ベイカー・ホール(シドニー)
トム・マカレイスター(ビル・レッドウッド)
『Midnight Run』 First Scene
『Midnight Run』 Ending