正直なところ、ロックを聴きはじめた頃のぼくは、ロック・バンドのライブ・アルバムはあまり好きではなかったんです。
スタジオ録音盤と比べてなんとも粗さの目立つものが多かったので、あえてライブ・アルバムを聴く意味が見出せなかったんです。だからインプロヴィゼイションの発展によって曲の尺が長くなると、退屈にしか思えなかったんですね。
でも、ディープ・パープルを聴くようになって、ロック・バンドのライヴ・アルバムも捨てたもんじゃないぞ、と思うようになりました。
高校時代は、食わず嫌い、というか、聴かず嫌い、というか、「ハード・ロック」と呼ばれる音楽にはあまり手を出していませんでした。ちょいちょいは聴いていたんですが、ハード・ロック・バンドにありがちな「ハッタリ」(ファッションとか、言動とか)があまり好きではなかったんです。
でも、たまたまFMで「メイド・イン・ヨーロッパ」に収められている『紫の炎』を聴いて、一発でマイッてしまいました。バッハのコード進行を使ったと言われるこの曲のオルガン・ソロのカッコ良さ!それが、このアルバムを買うきっかけでした。
ディープ・パープルのライブ・アルバムといえば、「ライブ・イン・ジャパン」が有名ですが、この「メイド・イン・ヨーロッパ」における演奏も、「ライブ・イン・ジャパン」に負けず劣らず強烈ですね。ライヴならではの熱気に満ちた、臨場感あふれる生き生きとしたサウンドにとてもコーフンさせられます。
野性味と安定感を併せ持った演奏は、貫録さえ感じられるほどです。
収録されているのは5曲ですが、どの曲も密度が高く、アルバムを通して聴いてもダレるところがありません。
バンドとしてのサウンドも素晴らしいですが、ギター、オルガン、ドラムの、それぞれのアドリブ・ソロもたんのうできます。とくに脂の乗り切ったリッチー・ブラックモアのギター、まるで何かに取り憑かれたような凄味がありますね。
このアルバムが収録されたのは、リッチーがバンドを脱退する直前だったそうですが、鬼気迫るプレイは、そのあたりの複雑な事情を吹き飛ばすかのようです。
このアルバムがきっかけとなって、ぼくはハード・ロックもけっこう聴くようになったんです。
◆メイド・イン・ヨーロッパ/Made In Europe
■歌・演奏
ディープ・パープル/Deep Purple
■リリース
1976年10月
■録音
1975年4月3日 オーストリア グラーツ
1975年4月5日 西ドイツ ザールブリュッケン
1975年4月7日 フランス パリ
■プロデュース
ディープ・パープル、マーティン・バーチ/Deep Purple, Martin Birch
■収録曲
[side A]
① 紫の炎/Burn (Blackmore, Coverdale, Hughes, Lord, Paice)
② ミストゥリーテッド/Mistreated (Interpolating Rock Me Baby) (Joe Josea, B.B. King)
③ 嵐の女/Lady Double Dealer (Blackmore, Coverdale)
[side B]
④ ユー・フール・ノー・ワン/You Fool No One (Blackmore, Coverdale, Hughes, Lord, Paice)
⑤ 嵐の使者/Stormbringer (Blackmore, Coverdale)
■録音メンバー・・・ディープ・パープル/Deep Purple)
デヴィッド・カヴァーデイル/David Conerdale (vocal)
リッチー・ブラックモア/Ritchie Blackmore (guitar)
ジョン・ロード/Jon Lord (organ)
グレン・ヒューズ/Glenn Hughes (bass, vocal)
イアン・ペイス/Ian Paice (drums)
■チャート最高位
1976年週間アルバム・チャート アメリカ(ビルボード)148位、イギリス12位、日本19位