ある音楽人的日乗

「音楽はまさに人生そのもの」。ジャズ・バー店主、認定心理カウンセラー、ベーシスト皆木秀樹のあれこれ

音楽は育つもの

2005年12月30日 | 価値観
 「ジャズなんて難しくて分からない」と、半ば軽侮の念を込めて言われることがあります。
 「そうですか、そうかもしれませんね」としか返事のできないぼく。
 ここで、「そんなことないですよ」と力説しても、「難しい」と思い込んでいる人や、「難しいこと」を理由にジャズを否定しようとしている人の価値観を覆すことはできません。その人たちは、「難しくてつまらない」ことを前提に話をしようとしているのですから。
 ヘタに「そんなことないですよ」と言っても、話は平行線をたどるばかり、最後には気まずさしか残らない、ってことにもなりかねませんからね。


 ロックにだって単純なものから難解なものまであるし、それはジャズやクラシックだって同じです。
 本当に難解な、前衛的なものは別としても、ジャズ、あるいはクラシックって、「難しい」とか「つまらない」ことを理由に敬遠されることが多いようです。でも、果たしてそうなんでしょうか。


 たいていの人が最初に読む本は絵本だと思います。絵本は、字が少なく、挿絵がふんだんにありますね。もちろん読むのも簡単です。そして自分が成長するにつれ、手にする本に書かれている文字の数は次第に増え、挿絵の量が減り、ページ数も増えていきます。
 読書が好きな人、本をよく読む人は、文章や内容が難しくなっていっても読みこなす反面、あまり本に親しまない人は、比較的易しい本でも「難しい」と感じることもあるでしょう。このように、読む本の難易度は、人によって違ってゆきます。もちろん、「難しいこと」が悪いことだとは、一概には言えないと思います。
 音楽もこれと似ているんじゃないか、とぼくは思うのです。


 いろんな音楽を吸収したい人は、多少難しそうに思えても、積極的にさまざまな音楽に親しもうとします。それだけアンテナが敏感だ、とも言えるでしょうね。こういう人はしぜん、「耳が肥えた」状態になっていくわけです。これはまさに、読書欲が旺盛な人がだんだん難しい本を読みこなしていくのと同じだと思うのです。
 例えば、アイドルが歌うポップスしか興味のない人は、耳が、つまり自分の中の音楽に親しむ心が、それ以上に育たないだけだと思うのです。(それが悪い、という訳ではありません、念のため)


 ぼくがガッカリするのは、深く聴いてもいない人が、深く聴いてもいない音楽に対して、自分の狭い価値観で否定することに対して、なんです。
 音楽に対して自分の狭い価値観だけでしか接することのできない人は、音楽以外のことに対しても狭い視野でしか見ることができないのでしょうけれど。
 もちろんそれぞれの「好み」はあります。これは、また別の問題です。


 音楽(に限らず、どの分野でも)を感じる心は自分の中にあります。それは、最初から大きなものではないかもしれないけれど、自分次第でどのようにも成長するのではないでしょうか。
 「音楽する心は育つもの」だと思っています。


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コメント (6)
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