ある音楽人的日乗

「音楽はまさに人生そのもの」。ジャズ・バー店主、認定心理カウンセラー、ベーシスト皆木秀樹のあれこれ

モーターサイクル・ダイアリーズ (The Motorcycle Diaries)

2005年12月31日 | 映画


 この映画は、医学生エルネストと生化学生アルベルトのふたりの青年が1952年に敢行した南米縦断の旅を綴ったロードムービーであり、またバディ・ムービーとして観ることもできる。
 しかし、エルネストがのちの革命家チェ・ゲバラであることを知ったうえでこの作品を観ると、鑑賞後の感想は違ったものになるだろう。





 ポデローサ(怪力)号と名付けたバイクに乗って旅するふたり。
 アルゼンチンからチリ、ペルー、ベネズエラへと、1万キロ以上、6ヶ月にも及ぶ長旅である。
 しかし途中バイクは壊れてしまい、以後徒歩とヒッチハイクで旅を続ける。







 ないないづくしの乏しい旅だが、旅しながら出会う市井の人々や、経験したさまざまなことによって、エルネストの内部が徐々に変化してゆく。
 共産主義であるため、警察に追われながら職を求めて旅する夫婦との出会い。
 生活苦を訴える現地人との会話。
 ハンセン病療養施設での患者とのふれあいの日々など。
 療養施設でのお別れパーティーの席での、エルネストの「南米はひとつの混血国家なのです」というスピーチこそが、エルネストの中の変化を物語っている。





 この旅は、エルネストの思想・哲学がよりはっきり形作られることになった貴重なものだったと言えるだろう。
 派手なアクション・シーンは出てこないが、無駄な力を込めずに描かれる南米の現状は、物語を見ているぼくらにも問題を提起している。


 とても美しく撮られているアマゾン、アンデスなど南米大陸の壮大な自然や、そこに住む人々の生活の臭いが感じられる素晴らしい映像にも引き込まれる。





 エルネスト・“チェ”・ゲバラ・デ・ラ・セルナは、のちにフィデル・カストロとともにキューバ革命を成し遂げる。
 その後は南米各地の革命にゲリラとして参加したが、最後はボリビアで射殺された。
 この映画は、チェ・ゲバラによって書かれた旅行記「チェ・ゲバラ モーターサイクル南米旅行記」をもとに作られたものである。
 なお映画の最後にアルベルト本人が少しだけ登場しているが、このアルベルトを演じたロドリゴ・デ・ラ・セルナは、ゲバラのまた従兄弟にあたるそうである。


モーターサイクル・ダイアリーズ/The Motorcycle Diaries
  ■製作国
    アルゼンチン、アメリカ、チリ、ペルー、イギリス、ドイツ、フランス合作
  ■公開
    2004年
  ■製作総指揮
    ロバート・レッドフォード、ポール・ウェブスター、レベッカ・イェルダム
  ■監督
    ウォルター・サレス
  ■音楽
    グスターボ・サンタオラヤ
  ■出演
    ガエル・ガルシア・ベルナル(エルネスト・ゲバラ)
    ロドリゴ・デ・ラ・セルナ(アルベルト・グラナード)
    ミア・マエストロ(チチーナ・フェレイラ)
  ■上映時間
    127分

コメント (8)
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