ぼくはよくいろんなブログを覗いていますが、この時期はバラの写真がいっぱい載っています。一方、我が家の庭ではパンジーが咲きほこっています。「バラとパンジー」ということで、今日は小坂明子さんの大ヒット曲、「あなた」を聴いてみました。
「あなた」の大ヒットは記録的なものでした。ぼくのとても好きな和製ポップスのひとつです。
小坂さんは高校2年の時、授業中に、この曲の歌詞をノートの隅に書いて完成させたということです。そして1973年の第6回ヤマハ・ポピュラー・ソング・コンテスト(通称ポプコン)に出場し、入賞します。続くポプコン・グランプリ大会ではグランプリに輝きました。ちなみにこの大会ではもう一組、伊勢功一&卍(まんじ)というグループもグランプリを受賞しています。この時の優秀賞は上条恒彦さん、その他の出場者には小坂恭子さんなどがいました。
ポプコン・グランプリに与えられる特典のひとつに、世界歌謡祭への出場がありますが、小坂さんも同年11月の第4回世界歌謡祭に出場し、ここでも見事グランプリに輝きました。
同年12月にレコードが発売されるや、翌年にかけて200万枚以上のセールスを記録する大ヒットとなりました。
メロディー、構成ともとても素敵ですね。不朽の名作と言っていいかもしれません。この曲を作った時の小坂さんは弱冠16歳。16歳でこんな曲を書くとは、ちょっとビックリです。洋楽ポップスの影響もあるのでしょうか。
オーケストラが奏でるダイナミックなイントロに続き、ミディアムの8ビートに乗ってヴォーカルが入ります。伴奏は最初はピアノだけ。透明感のある優しい歌声です。サビは一転、3連のロッカ・バラードに。曲終盤でのサビでは転調し、よりいっそうドラマティックな雰囲気が漂います。小坂さんの高音部での伸びやかな歌声も心地良いです。
大人びた曲調と、等身大の16歳の想いである歌詞とのギャップが面白いと思います。まだ本当の恋をしたことのない、夢見るティーン・エイジャーの思い描く「幸せな結婚生活」というのが、この曲で歌われている風景なのでしょう。
しかし歌詞をよく読んでゆくと、これは「わたし」の元を去っていった「あなた」との結婚生活を思い、叶うことのなかった「わたし」の夢が歌われていることが分かります。単なる甘いラヴ・ソングではなかったんですね。
ファースト・アルバム『あなた/小坂明子の世界』
意外なところでは、「あなた」は、ジャズ・フルーティストとして名高いハービー・マンによって、1974年にカヴァーされています。タイトルは「Anata~I Wish You Were Here With Me」。アルバム「サプライズ」に収められています。この曲のレコーディングには、スティーヴ・ガッド(drs)、トニー・レヴィン(b)といった凄いメンバーが参加しています。
最近では2006年にCharaが「世界」とのカップリングでシングルに取り上げているほか、徳永英明も彼のアルバムで「あなた」をカヴァーしていますね。
「あなた」が大ヒットした後、ヒット曲に恵まれなかったために、小坂さんには「一発屋」のイメージが付いてしまった感があります。その後の活動にはなかなかスポットライトが当たりませんが、コンスタントに自己の作品を発表しているのを始め、ミュージカルのプロデューサーを務めたり、アニメの挿入歌・CMソング・童謡などの作曲、他のミュージシャンへの楽曲提供など、現在では裏方として活発に活動を続けているようです。
[歌 詞]
◆あなた
■シングル・リリース
1973年12月21日
■作詞・作曲
小坂明子
■編曲
宮川泰
■歌
小坂明子
■収録アルバム
あなた/小坂明子の世界
■チャート最高位
1974年度オリコン週間チャート 1位(1974.1.28~3.11 7週連続7週)
1974年度オリコン年間チャート 2位