ある音楽人的日乗

「音楽はまさに人生そのもの」。ジャズ・バー店主、認定心理カウンセラー、ベーシスト皆木秀樹のあれこれ

真夏の夜のジャズ (Jazz On A Summer's Day)

2007年05月18日 | 映画
 
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真夏の夜のジャズ (Jazz On A Summer's Day)
■1959年
■監督…バート・スターン、アラム・アヴァキアン
■音楽…ジョージ・アヴァキアン
■演奏曲目・出演
 01. トレイン・アンド・ザ・リヴァー(ジミー・ジュフリー・スリー)  
 02. ブルー・モンク(セロニアス・モンク)
 03. ブルース(ソニー・スティット)
 04. スウィート・ジョージア・ブラウン(アニタ・オデイ)
 05. 二人でお茶を(同)
 06. ロンド(ジョージ・シアリング・クインテット)
 07. オール・オブ・ミー(ダイナ・ワシントン)
 08. アズ・キャッチ・キャン(ジェリー・マリガン・カルテット)
 09. アイ・エイント・マッド・アット・ユー(ビッグ・メイベル・スミス)
 10. スウィート・リトル・シックスティーン(チャック・ベリー)
 11. ブルー・サンズ(チコ・ハミルトン・クインテット)
 12. レイジー・リヴァー(ルイ・アームストロング・オールスターズ)
 13. タイガー・ラグ(同)
 14. ロッキン・チェア(ルイ・アームストロング,ジャック・ティーガーデン)
 15. 聖者の行進(ルイ・アームストロング・オールスターズ)
 16. 神の国を歩もう(マヘリア・ジャクソン)
 17. 雨が降ったよ(同)
 18. 主の祈り(同)



 この作品は、1958年7月3日から6日までの4日間にわたって開催された、第5回ニューポート・ジャズ・フェスティヴァルの模様を収録した記録映画です。
 監督には当時弱冠28歳、新進気鋭のファッション・フォトグラファー、バート・スターンが起用されました。
 1959年のカンヌ映画祭で特別公開されています。日本公開は翌60年でした。


     
ジミー・ジュフリー(左)とボブ・ブルックマイヤー  ジェリー・マリガン


 大西洋を臨むロードアイランド州ニューポートは、ハイ・ソサエティの別荘地でもあります。このジャズ・フェスティヴァルは、ちょうど行われていたヨットのアメリカズ・カップと同時に開催されています。
 ジャズ・フェスのあった4日間ずっとカメラが回され、トータルで24時間分、10万フィート以上のフィルムが撮られました。これをスターンとA・アヴァキアンが半年をかけて82分の記録映画に編集したというわけです。


     
     セロニアス・モンク


 洒落たカメラ・ワークも見どころの、スタイリッシュな作品だと思います。
 出演ミュージシャンも豪華ですが、垢抜けたファッションの観客や、客席の雰囲気、ニューポートの街の情景にも魅了されます。
 冒頭のヨット、客席のウッド・チェア、観客のファッション、アイスクリームを食べる若い女性、キラキラした海面の照り返し、田舎道を走るオープン・カーなど、ライヴ会場周辺の様子がふんだんに挿入されています。そんなニューポートの風景をスケッチしたフォトジェニック的美しさと、観客の陽気な仕草やリアクションがシンクロしている構図がまた楽しいんです。


     
     ルイ・アームストロング


 ステージで一番ぼくの印象に残っているのは、なんといってもアニタ・オデイの熱唱ぶりでしょう。
 アニタは、黒のノースリーブ、羽飾りのついた帽子、白い手袋と、まるでファッション雑誌に出てくるようなスタイルで登場します。まずは「スウィート・ジョージア・ブラウン」です。アフリカン・リズムを思わせるドラムと歌とのデュオで始まります。エキゾチックな雰囲気を醸し出しておきながら、一転してミディアム・スローの粘っこいテンポに変え、実にブルージーに歌い込みます。アニタはこの曲をクールに、そしてエレガントにキメてみせます。
 続く「二人でお茶を」が圧巻です。超高速でカッ飛ばすアニタ、余裕しゃくしゃくです。オッフェンバックの「天国と地獄」の一節をまじえながら、バック・バンドを翻弄するように自在にリズムで遊んでいます。後半部分の、バックとの掛け合いがこれまた見事。おてんばなアニタが、ユーモラスかつスリリングにバンドを煽ること煽ること。そんなアニタの陽気でイタズラっぽい表情がまたキュートなんですね。強烈なスウィング感あふれるこのパフォーマンスに、観ているぼくの目は釘付け、体は思わずリズムを取っています。


     
     アニタ・オデイ     


 サッチモことルイ・アームストロング(tp)と、ジャック・ティーガーデン(tb)の掛け合いもとびきり愉快です。まさに最高のエンターテイナー、サッチモの本領発揮、といったところでしょうか。
 とてつもないパワーで観衆を興奮させるダイナ・ワシントンの歌も素晴らしいです。曲中、間奏部分で自らもマレットを持ち、テリー・ギブズにヴィブラホンでのバトルを仕掛けているのも、これまた楽しい。
 最後に登場するマヘリア・ジャクソンは、聴く者をみな包み込むような温かいゴスペルを貫禄たっぷりに歌っています。


     
     ルイ・アームストロング(左)とジャック・ティーガーデン


 この映画は、1950年代のアメリカの文化を鮮やかに写し出していると思います。それに、当時のミュージシャンたちの動く姿がカラーで見られるなんて、ちょっとした感動ですね。
 欲を言えば、もっとミュージシャンの演奏する姿を観ていたいのですが、この映像が単なるライヴ・フィルムではなく、1958年7月のニューポートの光景を切り取った記録映画だというふうに受け取れば、それもまた仕方がないでしょう。
 とにかく、「真夏の夜のジャズ」を観るたびに、ジャズを体感できる至福の時を味わえるのです。


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コメント (4)
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