ある音楽人的日乗

「音楽はまさに人生そのもの」。ジャズ・バー店主、認定心理カウンセラー、ベーシスト皆木秀樹のあれこれ

アローン・アゲイン  Alone Again(Naturally)

2007年05月22日 | 名曲


  ギルバート・オサリヴァンという名前や、アローン・アゲインという曲名を聞いて、すぐにピンと来る人ってどのくらいいるのでしょうか。今やあまり耳にすることのないそのタイトルですが、実際に曲を聴いてみると「あ、知ってる」と思う人って案外多いんじゃないか、と思います。
 日本では金曜ドラマ『ホーム・ドラマ!』の主題曲に使われたり、三菱自動車やJTのコマーシャルにも使われていましたね。あ、そうそう、アニメ『めぞん一刻』の第24話や、実写版の『めぞん一刻』にも使われたんでしたね。


 ギルバート・オサリヴァンは姓で分かるようにアイルランドの出身です。ジェリー・ゴフィン&キャロル・キングに影響されて曲を作るようになり、デモ・テープをありとあらゆるレコード会社に送ってチャンスを伺いますが、全く相手にされませんでした。業を煮やしてロンドンに出てきたギルバートは、1967年、ようやくデビューに漕ぎつけます。しかし当時はアート・ロックやサイケデリック・ロックの全盛期だったので、牧歌的なギルバートの作品はほとんど売れませんでした。


 1970年代に入ってアメリカでシンガー・ソング・ライターのブームが起こると、ギルバートにも次第にスポットが当たるようになります。70年にシングル『ナッシング・ライムド』とファースト・アルバム『ヒムセルフ』がヒットし、それが72年の『アローン・アゲイン』『クレア』のヒットにつながっていくわけです。
 『アローン・アゲイン』は72年7月から8月にかけて4週連続、計6週連続全米1位、年間チャートでは2位となる大ヒットを記録しました。


     


 『アローン・アゲイン』はピアノとアコースティック・ギターを主体としたシンプルな伴奏で、柔らかいストリングスと軽めのホーンが、曲に優しく味付けしています。ジョン・レノンに似た、少し鼻にかかったようなとても優しげな歌声です。どこか寂しげで、それでいてどこか懐かしい、とても印象的なメロディーを持っている曲です。哀愁が漂っているんですが、哀しみに打ちひしがれるような暗さはなく、不思議に安堵感があるんです。
 賑やかでケバケバしい音が氾濫する中でこの曲を聴くと、ちょっとホッとする気がしますね。
 しかし、きれいなメロディーに対して歌詞はとても重い内容を持っています。傷ついて孤独な人生を送っているあわれな男の物語が歌われているのです。


 『アローン・アゲイン』のヒットでギルバートは一躍新進のメロディー・メイカーとして注目されるようになります。当時、ポール・マッカートニーは「ぼくの後に続くアーティストはエルトン・ジョンとギルバート・オサリヴァンだ」と公言していました。そのエルトン・ジョンも「ライバルはギルバート・オサリヴァンだ」と発言。また、後年ビリー・ジョエルは「ぼくはギルバート・オサリヴァンの次を狙っていた」と言っていますが、これらの言葉から、ギルバートがいかに注目されていたかが分かります。


 ギルバートは80年代になると音楽業界から遠ざかります。しかし90年代になると復活、マイ・ペースで活動しています。1992年には初来日を果たしました。
 近年はドーバー海峡に浮かぶイギリスの小島、ジャージー島で創作活動に励んでいるということです。



[歌 詞]
[大 意]
今からちょっと時間が経っても もしまだ気がくさくさしてたら
ひとつこうしてやろうと自分に約束してある。
近くの塔へ行って てっぺんまで登って 身投げしてやるぞって
みんなに教えてやろうという気があるんだ
体がバラバラになるってどんなのかをね
でも今は教会で誰にも相手にされずポツンとしている
こんな声が聞こえる―
「お気の毒に」「彼女に待ちぼうけ食わされたんでしょう」
「私たちここにいてもしょうがないですね」「家に帰りましょうか」
昔もそうだったようにまた一人になってしまった 当たり前みたいに

もしこう考えたら 
昨日まではぼくは陽気で明るく楽しげで わくわくしてたって考えたら
ぼくが演じようとしている役を 私ならしないと誰が思うだろう。
でもまるで打ちのめしてやるとばかりに 現実が現れて
ちょこっとも触ることすらせずに ぼくをこなごなに切り裂いてしまった
それでぼくは疑っている 慈悲に満ちた神の話とか
もし本当に神がいるならだれが神なのかとか なぜボクを神は見捨てるのかとか
まさかのときに 本当にぼくは また一人になってしまった 当たり前のように

ぼくには思えるんだ もっともっと
世界には傷心しているのにそれを癒すこともできずに
相手にもされないままの人がたくさんいるって
どうしたらいいんだ どうしたらいいんだ

また一人になってしまった 当たり前のように

過去数年を振り返ってみると 他に何が目に浮かんで来ても
父が死んだとき泣いたことを覚えている 
涙を隠そうという思いなど毛頭なかった
そして65歳で母は他界した
理解できなかった なぜ母が愛した唯一の男はあの世に連れて行かれ
その男のせいで母は傷心した生活を始めなくてはいけなかったのか
ぼくの励ましにもかかわらず 母は言葉を失っていった
そして母が他界したとき ぼくは一日中泣いて泣きまくった
また一人になってしまった 当たり前のように
また一人になってしまった 当たり前のように



アローン・アゲイン/Alone Again(Naturally)
■シングル・リリース
  1972年2月18日(英) 1972年5月(米)
■収録アルバム
  グレイテスト・ヒッツ/Greatest Hits (1973年)、バック・トゥ・フロント/Back to Front (2012年リマスター)
■作詞・作曲・歌・プロデュース
  ギルバート・オサリヴァン/Gilbert O'sullivan
■チャート最高位
  1972年週間チャート アメリカ1位(ビルボード 1972.7.29~8.19、11.2~11.9 計6週)、イギリス3位、日本1位(オリコン 1972.10.23~11.20 5週連続)
  1972年年間チャート アメリカ(ビルボード)2位、イギリス36位


ギルバート・オサリヴァン「アローン・アゲイン」



コメント (8)
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