ある音楽人的日乗

「音楽はまさに人生そのもの」。ジャズ・バー店主、認定心理カウンセラー、ベーシスト皆木秀樹のあれこれ

愛するデューク (Sir Duke)

2007年05月24日 | 名曲


  ステイーヴィー・ワンダーが1976年に放った大ヒット・アルバムが「キー・オブ・ライフ」です。リリースされるや、いきなり初登場で全米アルバム・チャート1位となり、13週連続、計14週チャートの1位に輝いています。同年度のグラミー賞では4部門を制覇しました。
 「キー・オブ・ライフ」は、スティーヴィーの持つ豊かな音楽性を遺憾なく発揮した、大傑作アルバムだと言えるでしょう。


     
     『キー・オブ・ライフ』


 「愛するデューク」は「キー・オブ・ライフ」に収録されている曲で、これもシングル・カットされるや大ヒットを記録、全米ソウル・チャート、全米ポップ・チャートの両方で1位になりました。
 

 「デューク」とは、ジャズ界の偉人、デューク・エリントンのことで、スティーヴィーがナット・キング・コールと並んで最も敬愛しているアーティストです。
 1975年のグラミー賞授賞式では、最優秀アルバム賞受賞後に「前年に亡くなったデューク・エリントンに捧げる」とスピーチしているほどです。


     


 「愛するデューク」の、ホーン・セクションとドラムだけのイントロを聴くだけで、すでにワクワクしてしまいます。生き生きとしたビートに乗って流れてくるメロディーが楽しい。バックのホーン・セクションは、まるでビッグ・バンドのアンサンブルのようです。
 そして『音楽には誰もが歌い踊る平等な権利がある。そしてそれは生活と切っても切れないもので、みんな全身でそれを感じることができるはず』というメッセージが込められています。人種や言葉の壁を超えた、人間にとってはなくてはならない音楽というものを、心から讃える歌詞が歌われているんですね。
 後半、同じメロディーが何度も繰り返されるごとにどんどん盛り上がり、スティーヴィーのソウルフルな歌声もテンションが高まってゆきます。


 この曲の間奏は、ホーン・セクションとベースのユニゾンで演奏されています。みんなが気持ちよくスウィングしていて、とってもカッコいい。
 ぼくが初めてベースを弾いた(弾かざるをえなかった)時、渡された楽譜の中にこの曲があったんです。ろくに指も動かない全くの初心者なのに、あんな長い間奏、しかもユニゾンでキメなければならない難しいフレーズが弾けるわけがないと思いました。でも、一ヶ月ほど「デューク」ばかり弾いた甲斐があったのでしょうか、本番でもヒヤヒヤものながら、無事弾き終えることができたのもいい思い出です。


     


 歌詞の中にはエリントンのほか、カウント・ベイシー、グレン・ミラー、サッチモことルイ・アームストロング、エラ・フィッツジェラルドの名前が出てきます。スティーヴィーが愛してやまないグレイトなアーティストの名を登場させることで、彼らをリスペクトしているのかもしれませんね。


 スティーヴィーの書く曲は、単なるブラック・ミュージックのカテゴリーにはとどまらず、さまざまなジャンルの音楽を貪欲に吸収し、消化しています。
 「愛するデューク」もソウル、ポップス、スウィング・ジャズなどのエッセンスを取り込んだ、とても楽しいナンバーです。
 この曲は2002年にはトヨタ自動車のCMに使われていたので、耳馴染みのある方もきっとたくさんいらっしゃることでしょう。



[歌 詞]
[大意]
音楽はそれ自体がひとつの世界で そこには誰でも理解できる言葉があり
みんなに歌い、踊り、手拍子を取る平等な権利があるんだ
レコードに溝が刻まれているからって 決まりきったことはしないこと
でも最初のAの文字から みんなが動き始めれば分かるはずさ

みんな全身で感じられるんだ そこら中に感じられる
みんな全身で感じられるんだ そこら中に感じられるのさ

音楽は知っているんだ それが生活に切っても切れないものだと
そしてそこには時間を経ても忘れられない 音楽の先駆者たちがいる
ベイシー、ミラー、サッチモ、そして全ての王者デューク・エリントン
エラのような声が鳴り響いても バンドは絶対に負けちゃいけない

君はそれを全身で感じる みんな全身でそれらが感じられる
君はそこら中にそれを感じる 僕も全身でそれを感じている
みんなそこら中に感じるんだ それが全身に感じないかい?
さあ、そこら中に感じよう 君も全身で感じられるさ みんな-全身で
 


愛するデューク/Sir Duke
■収録アルバム
  キー・オブ・ライフ/Songs in the Key of Life(1976年)
■シングル・リリース
  1977年3月22日
■作詞・作曲
  スティーヴィー・ワンダー/Stevie Wonder
■プロデュース
  スティーヴィー・ワンダー/Stevie Wonder
■録音メンバー
  スティーヴィー・ワンダー/Stevie Wonder(vocal, electric-piano, percussion)
  マイク・センベロ/Michael Sembello(lead-guitar)
  ベン・ブリッジス/Ben Bridges(rhythm-guitar)
  ネイサン・ワッツ/Nathan Watts(bass)
  レイモンド・パウンズ/Raymond Pounds(drs)
  レイモンド・マルドナード/Raymond Maldonado(trumpet)
  スティーヴ・マダイオ/Steve Madaio(trumpet)
  ハンク・レッド/Hank Redd(alto-sax)
  トレヴァー・ローレンス/Trevor Lawrence(tenor-sax)
■チャート最高位
  1977年週間チャート  アメリカ(ビルボード)1位  イギリス2位
  1977年年間チャート  アメリカ(ビルボード)18位



スティーヴィー・ワンダー『愛するデューク』


コメント (8)
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