ある音楽人的日乗

「音楽はまさに人生そのもの」。ジャズ・バー店主、認定心理カウンセラー、ベーシスト皆木秀樹のあれこれ

ヘイ・ジュード (Hey Jude)

2007年05月16日 | 名曲


  ビートルズの18枚目のシングルにして、最大のヒット曲が「ヘイ・ジュード」です。このシングルは、ビートルズ自身が設立したアップル・レコードからの最初のシングルとして1968年8月にリリースされ、全世界で約1300万枚を売り上げました。全米チャートでは驚異の9週連続1位を記録しています。
 今では日本の音楽の教科書にも載っているほどです。


     
     アメリカ編集アルバム『ヘイ・ジュード』     


 この曲は、ジョン・レノンとシンシアの夫妻が離婚することになり、それを悲しんだ、レノン夫妻の長男で当時5歳のジュリアンを励ますために、ポール・マッカートニーが贈ったものです。そのため、当初のタイトルは「ヘイ・ジュールス」(ジュールはジュリアンの愛称)でした。
 歌詞は、ジュリアンに向けた「前向きに考えろよ」「君の両親は今離婚するところだから落ち込むのは当然だけれど、きっと大丈夫だよ」というメッセージです。
 余談ですが、俳優ジュード・ロウの名は、トマス・ハーディの小説「日陰者ジュード」と、この「ヘイ・ジュード」にちなんだものです。


 また、この曲は、ユダヤ人(ジュー)のことを歌ったのだ、とする説もあり、実際「ヘイ・ジュード」によって勇気づけられたユダヤ人が数多くいるんだそうです。
 「ヘイ・ジュード」の宣伝のため、ポールはアップル社のショー・ウィンドウに大きく「ヘイ・ジュード」の文字を入れましたが、これには逆に、「ユダヤ人を追放したいのか、それとももう一度ナチスを始めたいのか」という強い抗議の電話があったということです。


     


 イントロなしで、ポールがいきなり「Hey Jude~」と歌い始めます。最初の伴奏はピアノだけの静かなもの。ちょっとゴスペル風だったりします。そしてコーラスとジョンのギターが被ってきます。リンゴのドラムはサビ直前から入ります。
 低音部から高音部まで幅広く音を使った、メリハリのついた美しいメロディーです。この曲はポールの甘い声にピッタリですね。
 最後に何度も何度も繰り返されるリフレインには、オーケストラが入って盛り上げてゆきます。ここでオブリガードっぽく入ってくるポールのシャウト、実にソウルフルです。
 シングルは普通3~4分程度にまとめられますが、この曲の演奏時間は、当時のシングルとしては画期的な7分11秒という長尺です。最後のリフレインが半分以上の約4分を占めています。


 「ヘイ・ジュード」は、落ち込んでいる人に対する、いわば応援歌のようなものでしょう。落胆した人の肩をそっと抱き、支えてくれるような感情が曲からも歌詞からも伝わってきます。
 こうしたことを思うなら、これは若者たちに呼びかける、率直で力強い励ましの歌だと捉えることもできるのではないでしょうか。だからこそ大勢の人々の共感を呼んだのだと思います。


     


 1968年8月、ドプチェク第一書記の英断によって加速していたチェコの民主化を抑え込むため、モスクワはワルシャワ条約機構軍60万人をチェコに派遣し、武力で「プラハの春」を弾圧しました。この時、チェコのシンガー、マルタ・グビショヴァによって歌われたのが、チェコ語で「自分の人生を信じなさい」という内容の歌詞が新しくつけられた「ヘイ・ジュード」でした。弾圧の中、まさに命をかけて歌われたのです。マルタの歌う「ヘイ・ジュード」はチェコ国民によって、自由と民主化のシンボルとして歌い継がれてきたのです。


 「ヘイ・ジュード」のカヴァーはとてもたくさん存在します。ウィルソン・ピケット、ダイアナ・ロス&シュープリームス、ビング・クロスビー、テンプテーションズ、エラ・フィッツジェラルド、メイナード・ファーガスンなど、枚挙にいとまがありません。
 2005年のビッグ・イヴェント、「ライヴ8」のフィナーレでは「ヘイ・ジュード」の大合唱が響きわたったのを記憶している方もきっとたくさんいらっしゃるでしょうね。



[歌 詞]
[大 意]
ヘイ、ジュード そんなにくよくよするなよ 
悲しい歌だって気持ちひとつで良くなるさ
彼女を君の心に受け入れるんだ そうすれば、全てはうまくいくだろう
ヘイ、ジュード 怖がるな 君自身が彼女を手に入れるんだ
彼女を抱きしめたとたん 全てはうまくいくだろう

苦しい時はいつでも ジュード、思い出せ
何もかも一人で背負い込むことはない
分かるだろ、自分の世界を冷ややかにして
クールに気取ってるヤツが、なんてバカげているか

ヘイ、ジュード がっかりさせないでくれ
せっかく見つけた彼女を手に入れるんだ
彼女を君の心に受け入れるんだ そうすれば、全てはうまくいくだろう

さあ 心を開いて受け止めろ ジュード 行動を起こすんだ
自分の相手の動きを待っていてはダメさ
ジュード いいかい、うまくいくのもしくじるのも君次第だよ 
君自身で動きを起こすんだ
      
ヘイ、ジュード くよくよするな
悲しい歌だって気持ちひとつで良くなるさ
彼女を抱きしめたとたん 全てはうまくいくだろう



ヘイ・ジュード/Hey Jude
  ■シングル・リリース
    1968年8月26日(アメリカ)
    1968年8月30日(イギリス)
  ■歌・演奏
    ビートルズ/Beatles
  ■収録アルバム
    ヘイ・ジュード/Hey Jude (1970年2月)
  ■作詞・作曲
    ジョン・レノン、ポール・マッカートニー/John Lennon, Paul McCartney
  ■プロデュース
    ジョージ・マーティン/George Martin
  ■録音メンバー
   ☆ビートルズ/Beatles
     ポール・マッカートニー/Paul McCartney (lead-vocal, piano, bass, handclaps)
     ジョン・レノン/John Lennon (acoustic-guitar, chorus, handclaps)
     ジョージ・ハリスン/George Harrison (electric-guitar, chorus, handclaps)
     リンゴ・スター/Ringo Starr (drums, tambourine, chorus, handclaps)
  ■チャート最高位
    1968年週間チャート  アメリカ(ビルボード)1位、イギリス1位、日本(オリコン)5位
    1968年年間チャート  アメリカ(ビルボード)1位、イギリス1位
    ※ビルボード オール・タイム・チャート12位


ビートルズ『ヘイ・ジュード』

コメント (14)
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