わたしが現役の中学校教員だった頃、ひとり親家庭の生徒は問題を抱えることが多いという教職員が少なからずいました。
しかし、今ではそのようなことを言う教員はまずいなくなったと言えます。
親が一人であろうが、父母そろっていようが、子どもの成長には関係ありません。
また、ほかにもあります。
今ほど夫婦の共働きが多くなかった頃には、母親が働くことについて、いいように言わない人がいました。
「子どもが学校から家に帰ったとき、母親がいないとさみしがるでしょう」「働く母親の子どもはかわいそう」。
ところが、年月が流れ、今では母親が働いていて、日中は家にいないことが当たり前になるとともに、保育所や学童で放課後を過ごす子どもが増え、周りの人びとの考えかたも、大きく変わりました。
このように、世の中でまことしやかに言われていたり、考えられていたりしていたことが、わずか20年・30年ほどで180度ほど変化することはけっこうあると思います。
20年ほど前までは、人が亡くなるとお通夜や告別式には、家族や親族以外に故人の仕事上の知人、近所の人にまでご案内し、参列してもらい、ご香典を受け取っていました。
しかし、今は十中八九が家族葬で、参列不要、香典辞退がほとんどになりました。
それが、100年・200年という歳月を経て変わるのではなく、わずか20・30年ほどで考え方や価値観が正反対になるまで変わるのが現代です。
そして、人はその時に広く受け入れられている考え方や価値観に立って話すべきです。
母親が働くことについて本人は、
「私の夫も親も、わたしがはたらくことに同意していますよ。家族で協力しあって、子育てをしています。だから、子どものことは言わないでください」
こんなふうに、どこまでも相手に合わせるのではなく、ここまでは言われてOK、ここからはNOという基準をもっておくべきです。