今でこそあまりいないでしょうが、私が小学生の頃は「日本は単一民族国家」だと言う人は多くいましたし、学校でもそう教えられたと記憶しています。
しかし、日本はけっして単一民族で構成されている国ではありません。
先住民族としてのアイヌ民族がいて、いまもたくましく国内で生を送っています。
歴史をみてみます。
明治の初め頃に、北海道を開拓の使命を持った開拓使はアイヌ民族の呼び方を「旧土人」という蔑称に統一しました。
そして、1899年に「北海道旧土人法」が定められました。
その法により、アイヌ民族の人に土地を与えて農業をしなさいと推奨するものでした。
しかし、実際はアイヌ民族の共有財産である森などの土地を取り上げ、日本人に同化させるねらいでした。
この頃からアイヌ民族へ対する厳しい差別の歴史となります。
アイヌは元来、アイヌ語という文化ももっています。
「ウタリ」はアイヌ語で同胞、「カムイ」は神のことです。
また、自然と共生する生活が伝統文化であり、人間に命があるのと同じように森羅万象に命があり、多くのカムイが宿ると考えます。
その意味で、人間が自然よりすぐれているとは考えず、人間も存在するものの一部にしか過ぎないと考えます。
アイヌは母なる大地に養われ、自然と共に生きてきました。ですから自然を敬う気持ちを大切に保ちます。
いまのSDGsに少し通じる文化がアイヌ文化であると言えるのです。
1997年に「北海道旧土人法」が廃止されました。かわって「アイヌ文化振興法」が施行されました。
しかしこの法律は文化振興だけで、アイヌ民族の権利には言及していませんでした。
そして、2019年にアイヌを日本の先住民族であると規定する法律(「アイヌ民族支援法」=「アイヌ新法」)が成立しました。
ただ、これも先住民族であると規定しただけで、たんに文言だけで今までアイヌ民族に強いてきた苦難に対する謝罪も、どう権利保障をしていくかの規定もありません。
また、この法律ではアイヌ文化の振興や福祉政策を国は打ち出しました。
国はアイヌ民族の文化を継承していくため、北海道の白老町に「民族共生象徴空間」を整備しました。
今後、アイヌの人びとの誇りが尊重された社会の実現に向け取り組むべき課題はたくさんあります。
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