タイタンの海に新探査計画

太陽系で唯一、分厚い大気層を持つ衛星“タイタン”。

“タイタン”は土星の最大の衛星で、地表面には安定した液体が存在しています。
そこには湖と海と砂丘からなる風景が広がっているんですねー
天文学者が“タイタン”に注目する理由が分かる気がします。

“タイタン”には2005年に、欧州宇宙機関（ESA）の小型惑星探査機“ホイヘンス”が着陸しているのですが、
着陸の際に“ホイヘンス”は地表で跳ね返り、横滑りしてぐらついたんですねー
でも、このデータから、地球に似た“タイタン”の地面について新たな手がかりが得られています。






“タイタン”の大気中を
降下する“ホイヘンス”
想像図



一方、スペインの研究チームが、“タイタン”に小型船のような探査機を送り込む計画を提案しています。

これは、北極近くにある広大な液体炭化水素の湖“リゲイア海”を、自力航行させるというものなんですねー
ミシシッピ川の外輪船や、らせん型の推進装置を備えた旧ソ連の水陸両用車両などからヒントを得ているようです。

この探査機はTALISEと呼ばれ、まだコンセプトの段階です。
でも実現すれば、液体と土壌の両方のサンプルを採取して、有機物に満ちた“タイタン”の環境について理解を深めることができます。

“タイタン”の1年は、地球の年にして29.5年もあります。
赤褐色の霧に覆われ、メタンの雨が降り、気温は摂氏マイナス180度近くになる世界…
非常に冷たいので、地球の天然ガスの成分であるメタンとエタンも、液体で存在するんですねー

直径が数百キロあり、深さが10メートル以上もある“リゲイア海”も、ほぼ液体エタンと液体メタンでできているようです。

この“リゲイア海”を調べれば、地球の気候の元となっている水循環と同種の現象を研究する機会が得られそうです。

そして“リゲイア海”の組成が分かれば、宇宙生物学的にも意味があります。
基本的に液体の環境なので、そこでの自己複製系の発展や、化学反応がどこまで複雑になるのか？ まったく想像も付かないんですねー

2005年1月にNASAの探査機“カッシーニ”から投下された“ホイヘンス”の任務は、“タイタン”の分厚いもやの中を降下していく間に大気を調べることでした。

“ホイヘンス”はその任務を果たし、それ以上の成果を上げました。
次の探査機がTALISEになるのかは分かりませんが、液体を持つ衛星に生命は存在するのか？ 興味ありますよねー