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月の“うさぎ”は天体の衝突で生まれた? 月探査機“かぐや”

2012年11月09日 | 月の探査
私たちが地上から見る月は、自転周期と公転周期が一致しているので、
常に同じ“表”の面が見えています。

そして、探査機の画像でしか見ることができない“裏”の面は、
表側に広く見られる“海”と呼ばれる暗い部分が、ほとんどありません。

表側に比べて標高が高く地殻が厚いなど、
さまざまな違いがあるんですねー
月面の表側(左)と裏側(右)に見られる3つの巨大盆地


なぜ月の表側と裏側が違うのか?

この理由として、
38億年以上も前に「表側に巨大な天体が衝突したため」
とする仮説が提案されています。

表側の対部分を覆う直径3000キロの“プロセラルム盆地”も、
その衝突で形成された盆地だとか…

今回の研究では、
この謎を解くため、2007年から2009年に月周回探査を行った、
探査機“かぐや”のデータを利用。

月面上の約7000万地点で取得した200億点以上のデータを解析して、
天体の高速衝突で溶けた物質に多く含まれる低カルシウム輝石が、
“プロセラルム盆地”に多く分布していることを突きとめています。

こうした分布は“雨の海”や“南極エイトケン盆地”にも見られます。
そう、いずれも衝突盆地として知られている地形なんですねー
衝突溶融物を示す低カルシウム輝石の分布(黄色)

“プロセラル盆地”のような巨大な地形が作られるほどの衝突が起こったら…
そこに存在していた“高地”はほぼ完全にはぎとられたはずです。

そして、地殻がはぎとられて深部への圧力が減少すると、
溶岩が噴出して窪地にたまり“海”ができやすくなります。

このようして、“プロセラル盆地”をつくった超巨大衝突によって、
月に表側と裏側の違いができたと考えられているんですねー

“かぐや”のデータから、
月の表側と裏側の違いが「表側に巨大な天体が衝突したため」という説の
科学的な裏づけが得られました。

今後、地形や元素組成などのデータ解析を行うことで、
衝突が実際にどのようにして起こったのかも明らかになっていくと思います。

月の“うさぎ”模様が、どのようにして作られたのか… 興味がありますよねー

今回のような研究解析手法は、
地球観測衛星による鉱物資源の探査や、
環境モニタリングにも応用できるようですよ。


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