宇宙のはなしと、ときどきツーリング

モバライダー mobarider

ケック望遠鏡がとらえた天王星の素顔

2012年11月20日 | 宇宙 space
天王星は太陽系7番目の惑星で、実は望遠鏡を使って発見された最初の惑星なんですねー
太陽からあまりにも遠いので公転に84年もかかります。

今回、ハワイのケック天文台の観測と画像処理から、この天王星をもっとも詳細にとらえられた姿が浮かび上がりました。
画像は7月25日と26日に撮影されたもので、ケックII望遠鏡の近赤外線装置を使っています。。




様々な画像処理の
後に得られた
天王星の姿


天王星が青緑色をしているのは、メタンガスによるものです。

メタンガス層の直下にある天王星の雲頂からは、太陽光が反射します。
この反射した太陽光が、メタンガス層を通過するときに、赤い波長はメタンガスに吸収されます。
でも、青い波長はそのまま通り抜けるんですねー なので地球から見た天王星は青緑色に見えるようになります。

このメタンガスによる吸収の強さの違いを反映するような2種類のフィルターを使うことで、雲の高度が分かるようになりました。

画像で見えるような模様は、本来は非常にかすかなものなんですよねー
でも、長時間露出すると、自転や帯状風により模様がつぶれてしまいます。

そこで、今回は短時間露出で撮影した多数の画像から、自転と風の影響を取り除き、それを平均処理して画像を完成させています。
25日の画像が117枚、26日の画像が118枚も使われているんですねー

画像の中の白い部分は、地球でいえば積雲のような光学的に分厚い高高度の雲で、
青緑色の部分は同じく高高度にある光学的に薄い雲で、地球の巻雲のようなものです。
ほんのり赤い部分は、深い雲の層にあたるんですねー

個々の模様として見えるのは、比較的浅い部分のもので、海王星の雲の最上層“1~2気圧程度”の部分にあります。
両画像の左側に見える細く明るい部分は、天王星の環によるものです。

画像の右下が天王星の北極側で、北緯55度以上の領域に小さな対流班がいくつか見られます。
2003年にほぼ同じ波長で、南極側を観測したときには無かったこの模様、NASAの探査機“カッシーニ”が土星の極域でとらえたものとよく似ています。

赤道付近から北緯10度まで広がる帯域の、南縁に見える波状帯の模様は、今回初めてとらえられたものです。
大気の流動の境界で起こる、かく乱のようにも見えます。
画像の下部には、明るい雲を伴った暗い点が見られます。

かつては平凡そうな惑星の1つだと考えられていた天王星。
でも、太陽系外縁部で最も明るい雲がいくつかあり、衛星が27個、環が11本もあるダイナミックな惑星なんですよねー
その惑星の素顔がだんだんと分かってきましたね。