宇宙のはなしと、ときどきツーリング

モバライダー mobarider

土星の衛星“タイタン”で不思議な発光現象

2012年11月14日 | 土星の探査
土星の衛星“タイタン”の大気で、太陽光が全く届かない場所から微弱な発光現象が観測されました。
NASAの探査機“カッシーニ”の撮影画像から見つかったこの光、現段階では明確な原因は分かってないんですねー

“カッシーニ”がとらえた
土星の影の中の“タイタン”

画像処理なし(左)
土星からの反射光が当たっている
下半分だけが明るく見える

画像処理あり(右)
土星の反射光を取り除くと
全く光が当たらない上半分も
光っている

この光は、数百万分の1ワット程度という非常に微弱なもので、
“タイタン”の大気の深いところから、濃いもやを通り抜けて出ていました。
これを“カッシーニ”による、長時間露出の撮影によりとらえたんですねー

これは、ネオンサインの発光と似ている現象だと考えれていて、荷電粒子が“タイタン”の大気の窒素分子と衝突して発生する光のようです。

“タイタン”の大気には、太陽や荷電粒子からエネルギーが供給されています。
この供給が“タイタン”の大気に存在する、天然の有機化学工場のカギとなるんですねー

有機化学物を含む“タイタン”の濃いもやは、重分子でできています。
でも、それを生み出す化学反応は、何によって引き起こされているのか分かっていません。
それが分かれば、生まれたばかりの地球に、どのような有機化学があったかを知るヒントになるんですねー

今回見られたような大気の発光は、紫外線や荷電粒子によって、原始や分子が一時的に高いエネルギー状態に励起したあと、元の状態に戻るときに発生します。

“カッシーニ”は以前、“タイタン”に太陽光が当たっている状態で、X線と紫外線による窒素分子の大気発光をとらえたことがあります。
2009年に“タイタン”が土星の影の中を通ったときは、“カッシーニ”が暗闇の中で“タイタン”の微弱な発光をとらえる絶好のチャンスだったんですねー

土星の磁場に乗った荷電粒子が落ちてくる、高度700キロ程度の高層大気で発光があることは予想されていました。
でも、意外なことに、土星本体からの反射光も届かない暗い領域でも、高度300キロの深い大気からの可視光発光がとらえられたんですねー
その領域は、土星の磁場に乗った荷電粒子が、落ちてくる場所でもないのに…

今のところ、もっとも都合の良い説明は、宇宙線が大気の深いところまで浸透したというものと、大気の深いところで何らかの化学反応があったというものです。

金星でも、太陽光の届かない夜側の大気から、“アシェン光”と呼ばれる発光現象が報告されています。
まだ広く受け入れられてはいないのですが、金星の雷が大気発光の原因だという説明もあります。

でも、土星では雷現象が“カッシーニ”の電波観測で検出されているものの、“タイタン”では検出されたことがないんですねー
観測に適した次の期間に向け、研究チームはヒントを探るための調査をさらに続けるようですよ。