宇宙のはなしと、ときどきツーリング

モバライダー mobarider

太陽型恒星が二度目の最後を迎える

2012年11月28日 | 宇宙 space
太陽に似た星を取り囲むガスの星雲が、この星がかつて物質を放出しながら一度「死んだ」あと、再び蘇ったことを物語っているんですねー
太陽も数十億年後、同じような運命を迎えるかもしれません。

太陽の8倍未満の質量の恒星は、晩年を迎えると、赤くふくれあがった赤色巨星となります。
そして、外部層の物質を周囲に放出し、残された星の高温の核が放つ紫外線で、周囲のガス層が発光します。
ごれが“惑星状星雲”と呼ばれる天体です。

その惑星状星雲の1つ“アベル30”は、地球から約5500光年かなたにあります。
この“アベル30”の中心にある星は、約1万2500年前に外部層の物質を乗せた高密度の恒星風を、ゆっくり放出しながら最初の死を経験しました。
画像に見える大きな球殻状の層は、このときのものなんですねー





惑星状星雲“アベル30”
右上の四角は中心部の拡大図
ハッブル宇宙望遠鏡と、
2機の天文衛星
“XMMニュートン”と
“チャンドラ”の
X線画像を合成




そして、850年前に星は再び息を吹き返すことに…
恒星の核の周囲の物質が、断熱収縮して再び核融合反応が始まったんですねー

そのエネルギーが残りの外部層を加熱して、星は炭素とヘリウムが大量に含まれるガスを咳のように吐き出しています。

外部層が急膨張して、一時的に赤色巨星の姿に戻った星は、わずか20年後に急速に収縮して2度目の死を迎えました。

このとき星の最後の息として、時速1400万キロ以上の高速恒星風が吐き出されています。
この恒星風が、それ以前に噴出された物質に追いついてぶつかったんですねー
そして、中心部に見える彗星のような、美しく複雑な構造ができあがったというわけです。
こうして2度目の死によって、星雲の内部にさらに小さな惑星状星雲が作られました。

周りの物質にぶつかった恒星風の様子は、地球やその他の太陽系の惑星が、数十億年後に迎えるかもしれない凄まじい未来を見せてくれます。
太陽は晩期を迎えると赤色巨星になり、近くの惑星を飲み込んでしまいます。
たとえ生き残ったとしても、太陽が惑星状星雲の中で吐き出す最後の息とともに、惑星は強力な恒星風と強烈な放射線に襲われ、蒸発してしまうんですねー

もしも、どこか遠くの知的生命体が高性能望遠鏡で、この様子を見ていたら…
恒星風に飲み込まれていった、地球の燃えさしが放つX線が見えるかもしれませんね。