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宇宙のはなしと、ときどきツーリング

モバライダー mobarider

アルマ望遠鏡 + 100億光年先のクエーサー = 冥王星の軌道?

2014年08月21日 | 宇宙 space
南米チリのアルマ望遠鏡による観測で、
冥王星とその衛星カロンの位置が、ひじょうに精密に測定されました。

この観測結果は、2015年に冥王星接近を予定している、
NASAの太陽系外縁天体探査機“ニューホライズンズ”のナビゲートに、
役立てられるようです。
冥王星(中央)とその最大の衛星カロン
(イメージ図)
冥王星の軌道は、地球の軌道の約40倍も大きく、
冥王星が軌道を一周するのに248年かかります。

冥王星が発見されたのが1930年なので、
これまで人類が観測できた冥王星の軌道は、
全体の3分の1でしかありません。

このように限られた観測データしかないので、
冥王星の位置には数千キロの誤差がある可能性が…
これほど大きな誤差があると、
“ニューホライズンズ”の軌道修正の計算に、支障がでることになるんですねー


なのでNASAでは、
アルマ望遠鏡が測定した冥王星の位置情報と、
冥王星発見時から現在までの観測データから求めた位置情報をもとに、
“ニューホライズンズ”の最初の軌道修正を、今年の7月に行っています。

“ニューホライズンズ”は冥王星接近後は、
さらに遠くにあるエッジワース・カイパーベルト天体の探査を予定しています。

なので今後の探査のために、
できるだけ燃料を残しておきたいので、
冥王星に向けた軌道修正では、ロケット燃料の消費を最小限に抑える必要があるんですねー

そのためには、はるか彼方にある冥王星の位置を、
出来るだけ精密に求めておくことが必要になり、
それには高精度な位置の基準を確立しておくことが欠かせません。

でもこの広い宇宙で、
冥王星のような小さな天体の位置と軌道を、
精密に計測するための基準を見つけるのは、
簡単なことではありません。

一般的に、こうした基準には遠くの星々が使われます。
遠くの星は、長い年月が経過しても、その位置をほとんど変えないので、
これらを基準にして、冥王星の天球上での相対的な位置を決めることになります。

人類が観測した天体のうち、
最も遠くにあって、最も見かけの位置が変わらない天体は、
100億光年以上彼方にあるクエーサーになります。

こうした天体を基準にして、冥王星の相対的な位置を観測すれば、
より高精度な位置決定が可能になります。

でも、クエーサーは可視光ではひじょうに暗いので、
従来のような光学望遠鏡による位置決定が困難になります。

そこで、アルマ望遠鏡の出番です。
クエーサーは、アルマ望遠鏡が観測可能な電波(ミリ波)では、
ひじょうに明るく見えるんですねー

そして、2013年末から2014年7月までに行われた観測では、
100億光年彼方のクエーサーとの相対位置や、
地球の公転にともなう見かけの位置のずれ(視差)を利用して、
冥王星の軌道が精密に求められたそうですよ。