宇宙のはなしと、ときどきツーリング

モバライダー mobarider

重い恒星の巨大な惑星を直接撮像 “すばる望遠鏡”

2012年11月25日 | 宇宙 space
“すばる望遠鏡”による観測で、アンドロメダ座の恒星を回る巨大惑星が直接とらえられました。
これにより、太陽の2倍以上の質量を持つ恒星でも、惑星が作られることが示されたんですねー

系外惑星・円盤探査プロジェクト“SEEDS”は、国立天文台を中心とする国際研究チームが推進するプロジェクトです。
このプロジェクトの一環として行われた直接撮像観測から、170光年かなたの“アンドロメダ座κ(カッパ)星”を主星とする巨大なガス惑星が発見されました。







“アンドロメダ座κ星”の位置





主星の質量は太陽の2.5倍で、今までに惑星が撮像された恒星の中では最も重いものなんですねー
発見された惑星は木星の13倍もの質量で、太陽系の海王星の軌道より少し遠い軌道を回っています。

この惑星“アンドロメダ座κ星b”は、2012年の1月と6月に行われた2回の観測で、主星の周囲を回っていることが確認されています。

そして、近赤外線の4つの波長帯で明るさの比較も行われました。
観測で得られた惑星の色は、これまで撮像された10個程度の巨大ガス惑星とよく似ていることも判明したんですねー

主星の“アンドロメダ座κ星”は、“はと座運動星団”に属し、その年齢は3000万歳と推定されています。
もし、若い恒星の周囲に惑星があるとしたら… その年齢は当然若く、形成時の熱により赤外線で明るく光っているはずです。
なので、若い恒星は惑星の直接撮像を狙う魅力的なターゲットなんですねー

とはいえ、惑星は主星に比べて圧倒的に暗いので、系外惑星の直接撮像、特に太陽系の惑星と似た軌道にある惑星の撮影に成功した例はきわめて限られます。
“SEEDS”プロジェクトの高コントラスト観測で、主星の光をできるだけ取り除くことにより、周囲にあるかすかな天体の光を見分けることができたんですねー


アンドロメダ座κ星系の
近赤外線画像(左)
左上に“アンドロメダ座κ星b”が
見える
信号・雑音比という処理をした
画像(右)

重い主星と巨大ガス惑星からなるこの惑星系は、一見太陽系と大きく異なります。
でも、太陽系の起源と進化を、最近の観測と理論に基づいて拡張したモデルがあるんですねー
それによると、大きな主星は大きな惑星を持ち得ると考えられています。

ただし、そのようなモデルの拡張にも限界があります。
もし、主星が重くなり過ぎたら、その強烈な放射により原始惑星系円盤内での惑星形成が、阻害される可能性があるからです。

原始惑星系円盤とは、生まれたばかりの恒星を取り巻くガスとチリの円盤です。
その中から惑星が生まれるんですねー

今回の“アンドロメダ座κ星”における巨大ガス惑星の発見は、少なくとも太陽の2.5倍の重さの恒星では、原始惑星系円盤から惑星が生まれることが可能だということ示しています。

研究チームは、さらに詳しく巨大ガス惑星の軌道や、大気成分を調べようとしています。
“アンドロメダ座κ星b”を、より広い波長範囲で観測し続けているんですねー

また、この惑星の形成や軌道進化に影響を与えたかもしれない、第2の惑星が存在するかどうかについても、引き続き調査を進めています。

重い恒星周囲での惑星形成や、巨大ガス惑星(スーパージュピター)の生い立ちを解き明かすには?
これらの研究が、有用な手がかりを与えてくれそうですね。

火星の大気が失われた痕跡を発見

2012年11月24日 | 火星の探査
現在の火星には、地球のわずか100分の1程度という、非常に薄い大気しかありません。
その火星に、かつては厚い大気が存在したかもしれない…
その根拠となる分析結果が、NASAの火星探査車“キュリオシティ”から届きました。






“キュリオシティ”の
分析装置に搭載された
可変レーザ分光器(TLS)




火星の大気の変化を理解することは、過去に火星が生命に適した環境だったかどうかを判断するのに重要な要素となります。
今回、“キュリオシティ”から届いた分析結果は、過去に大気が失われたという根拠になるものなんですねー

“キュリオシティ”は、ゲールクレーター内の“ロックネスト”という場所で、大気のサンプルを採取しています。

これを分析したところ、大気に含まれる二酸化炭素を構成する炭素のうち、
重い同位体の比率が、火星誕生間もないころにおける確定比率より5%増加していることが分かりました。
(同位体とは、同じ元素でも、中性子の数により質量が異なるものです。)

これは、かつて上層大気の軽い同位体が、宇宙空間に流出した可能性を示しているんですねー
また、アルゴンの場合も重い同位体の比率が増加していて、地球に落ちた火星起源の隕石を調べて得られた大気組成と一致しています。

この結果から、はるか昔の火星は現在とは全く異なり、豊富な水と厚い大気が存在していたと推測できるんですねー
ちなみに、上層大気の過去の流出については、NASAの探査機“MAVEN”が2014年に到着してさらに調べる予定です。

“キュリオシティ”はさらに、メタンガスの分析も行っています。
地球では生物学的なプロセスでも、それ以外でも作ることができ、生命の単純な構成要素として調査の対象となっている物質ですが、火星大気にはごく微量しか検出されていないんですねー

地球や上空の探査機からの測定は難しいのですが、今回の高精度な測定からも、メタンガスの量はほぼ無いに等しいものでした。

今回の分析では、とりあえずゲールクレーターには、メタンは大量に存在しないことが明らかになりました。
でも、火星の大気が場所によって異り、意外な発見があるかもしれません。

“キュリオシティ”は今後数週間のうちに、今回使われた“SAM”と呼ばれる分析装置で、岩石や土壌に含まれる有機化合物の分析も行う予定です。
含水鉱物と炭酸塩の検出・分析が、今後の優先ミッションになるようです。

大気と土壌の両方を分析することで、火星の過去の生命環境の理解が大きく進展するといいですね。

オリオン座大星雲の手前にもう一つの大星団

2012年11月23日 | 宇宙 space
“オリオン座大星雲”は、オリオン座の三つ星の下に肉眼でも見ることができ、天文ファンに人気の天体です。
そして、天文学者にとって星誕生の現場を、間近で見られる絶好の研究対象でもあるんですねー






“オリオン座大星雲”の位置
オリオン座の三つ星の下に
肉眼でも見つけることができる




今回、欧州研究チームの観測により、星雲の手前側に大規模な星団が、独立して存在していることが分かりました。

“オリオン座大星雲”は、望遠鏡での天体観測が始まったばかりの約400年前に、フランスの天文学者によって初めての記録が残されています。
現在では、最も近くにある星形成領域(1500光年かなた)として、様々な星が生まれる過程の研究において重要な観測対象となっているんですねー

この大星雲の手前にも、星が分布していることは1960年代から知られていたのですが、ハワイにあるカナダ・フランス・ハワイ望遠鏡で観測したところ、予想をはるかに上回る規模の大質量星団が、星雲から独立して存在していることが分かりました。


“オリオン座大星雲”の
可視光画像(左)に
分子雲が放つ赤外線を
とらえた画像を重ねたもの
分厚い分子雲は向こう側に
ある星を隠してしまうため、
この画像に見える星は
分子雲の手前にあるという
ことが分かる(右)

研究で新たに判明した重要事項の1つは、研究チームが“イオタ星星団”と名付けたこの星団の星々が、星雲中心部にある“トラペジウム星団”より、ほんの少しだけ年齢が高いことです。

もう1つは、これまで“オリオン星雲星団”とひとくくりにされてきたものが、実は“イオタ星星団”と“トラペジウム星団”の2つの星団から成っていたということです。


イオタ星星団の星の分布
青い等高線で表している
星雲に埋もれたトラペジウム星団は
星が少なめ(右)
X線で分子雲を見透かせると
トラペジウム星団の星々が
密集している


今後は、この領域を調べるために、重なって見える2つの星団をきちんと区別しなければならないんですねー

でも、興味深いのは、星雲内で星を生成中の若い“トラペジウム星団”のすぐそばに、年齢の高い“イオタ星星団”が存在することです。

今回の観測結果は、星団形成に関するこれまでの仮説モデルと矛盾しているんですねー
また1つ謎が増えてしまいました…

恒星からはぐれた“浮遊惑星”を発見

2012年11月22日 | 宇宙 space
恒星系からはぐれ、宇宙の中を孤独にさまよう“浮遊惑星”を、ヨーロッパ南天天文台(ESO)が発見しました。





浮遊惑星“CFBDSIR2149”
(イメージ図)



“CFBDSIR2149”と呼ばれるこの天体は、褐色矮星と呼ばれる恒星になりきれない天体を探す調査で見つかっています。

このような惑星が生まれるまでには、
恒星系からはじきだされるパターンと、全く独自に形成されるパターン、2つの過程が考えられます。
どうやら今回は、何らかの理由で恒星の引力が及ぶ範囲から外れたみたいなんですねー

宇宙空間を自由に漂う惑星は、以前にも発見されていました。
でも、この惑星は古い年代のもので、温度が低いことも特徴なんですねー
また、地球との距離が100光年余りと、これまで見つかった中では最も近い距離にあります。

カナダ・フランス・ハワイ望遠鏡の赤外線カメラや、南米チリにある超大型望遠鏡(VLT)を使った観測により、
この星が“かじき座AB運動星団”と呼ばれる、若い恒星の集まり(星団)の近くを漂っていることが分かっています。
この星団は、ほぼ同じ年齢や組成の恒星約30個が、一緒になって宇宙空間を移動している珍しい星団なんですねー

当初の観測で“CFBDSIR2149”は、サイズが小さいため核融合反応を起こせず光を発しない“褐色矮星”の可能性もあると考えられていました。
でも、“かじき座AB運動星団”のどの恒星とも、重力的な結びつきが無いことが明らかになったことで、浮遊惑星と判断することが可能になったんですねー

観測チームの推定によると、“CFBDSIR2149”の年齢は5000万~1億2000万歳で、表面温度は摂氏400度程度、質量は太陽系で最大の惑星である木星の4~7倍もあります。

まぁー こうした天体を調べることにより、
惑星がどのようにしてその恒星系の外にはじき出されるのか? 分かるといいんですがねー

白色矮星のペアが織りなす星雲のS字リボン

2012年11月21日 | 宇宙 space
欧州の研究チームによる観測から、惑星状星雲“フレミング1”の中心部に、恒星の残骸である白色矮星のペアが見つかりました。

“フレミング1”はきれいなS字ジェットを持つ惑星状星雲で、
この発見は、“フレミング1”のジェット構造が作られたメカニズムを解明する、有力な手がかりになるんですねー

惑星状星雲とは、老いて膨張した恒星が、その外層を放出して出来たガスのベールです。
その中心には星の最後の姿である、高温高密度の白色矮星が残されているんですねー

その中でも特徴的なのが、ケンタウルス座の方向にある“フレミング1”です。
対称的なSの字カーブを描くジェットを持っているのですが、このジェットが形成されたメカニズムについては長らく謎になっていました。



超大型望遠鏡(VLT)で
とらえられた
惑星状星雲“フレミング1”


今回、ヨーロッパ南天天文台(ESO)の研究チームが、南米チリにある超大型望遠鏡(VLT)でこの星雲を観測しました。
すると、その中心に1.2日周期で互いを公転する白色矮星の連星を発見したんですねー

惑星状星雲の中心部で、普通の恒星の連星が発見されたことはあるのですが、白色矮星の連星は非常に珍しいんですねー

連星かも知れないという説は以前からあったのですが、お互いの距離が離れた10年以上の長周期のもと思われていて、これほど近接しているとは意外でした。

“フレミング1”の形状が、どのようにして作られたのか?

その過程については、老いて外層が膨張した連星のうち一方が、もう一方の物質を重力で引き寄せ、その物質が星の周囲の円盤となった。
そして、連星の公転運動とともに円盤はグラグラと揺れ動き(歳差運動)、その軸に沿って双方向に噴出するジェットがカーブを描いた。
という仮説が、今回の観測結果から導かれたようです。








“フレミング1”の形成過程
(イメージ図)







この研究により、連星系の星周円盤の歳差運動により、“フレミング1”のような対称パターンが形成されることがはっきりと示されたんですねー

VLTがとらえた星雲内部の画像では、
ほかの連星系でも見られるような節状のリング構造も見つかっていいます。
これも連星が存在する証拠の1つになっているんですねー