宇宙のはなしと、ときどきツーリング

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カラー画像で明らかになったクレーターの地質構造

2013年12月21日 | 小惑星探査 ドーン
NASAの探査機“ドーン”が撮影した小惑星“ベスタ”のアエリアクレーター。
このデータのカラー化した画像が公開されました。

小惑星“ベスタ”アエリアクレーターのカラー画像

“ドーン”は2007年の9月に、デルタIIロケットで打ち上げられたNASAの探査機です。

キセノンイオン・スラスタ3基を使って、火星軌道と木星軌道の間にある小惑星帯へ向かい、2011年7月には小惑星帯で4番目に大きい小惑星“ベスタ”の周回軌道に入っていました。

そして、2011年7月から2012年9月まで探査し、多数の画像を撮影してきたんですねー

“ドーン”に搭載された“フレーミングカメラ”を担当するチームでは、可視光から近赤外まで7波長の色情報を画像と合成して、“ベスタ”表面の画像のカラー化を行っています。
色の割り当て処理は、鉄に富む輝石に特に注意して行われたようです。

そして、カラー化により明らかになったのが、“ベスタ”の南緯14度付近に位置するアエリアクレーターの地質構造と美しい色合いなんですねー

画像の1ピクセルは60メートルで、クレーター直径はおよそ4.3キロ。
中心から流れ出たような痕跡の原因はまだ分かっていないのですが、クレーターが形成された際の天体衝突が、クレーター周囲とは組成の異なる液状の物質を生み出した可能性があるようです。

現在“ドーン”は、2番目の目的地でメインベルト最大の小惑星“セレス”に向かって飛行を続けています。

2015年2月には、“セレス”に到着し、探査を開始する予定です。


10万個もの星がひしめく巨大密集星団

2013年12月20日 | 宇宙 space
天の川銀河内の星形成領域“W49A”の鮮明な姿が、サブミリ波観測でとらえられました。
密集する巨大星団や、中心部に流れ込むガスを材料に、星が次々と生み出されるようすが明らかになってきました。






“W49A”の中心部30光年の範囲における分子ガスの分布。
中心の明るい部分では、幅3光年未満の範囲に太陽5万個分もの分子ガスが満ちている。






スミソニアン天体物理観測所のサブミリ波干渉計“SMA”による観測で、わし座方向3万6000光年彼方の星形成領域“W49A”の内部が鮮明にとらえられました。

“W49A”の中心には巨大な星団があり、幅10光年の空間に10万個もの星がひしめいているんですねー

太陽の周囲の同等範囲には、10個未満の恒星しかないのですが、
今後数百万年経つと、この巨大星団は球状星団の規模に成長するようです。

こうした密集した星団は、星同士の重力作用のせいで離れ離れになることがないので、数十億年はその姿を保つことができます。

観測では、細いフィラメント状のガス流もとらえられていて、
大きな3本の流れから、星の材料となるガスが秒速約2キロのスピードで、中心部に注ぎ込まれているんですねー

その中心部約30光年の範囲には、天の川銀河内の平均的な分子雲の数百倍もの高密度ガスが存在していて、
“W49A”全体で、太陽100万個に相当するガス(ほとんどが水素分子)が含まれているそうです。

“W49A”で見られるような構造は、巨大な星団形成において一般的なのではないかと考えられていて、今後しばらくはデータ解析が続くようです。

国際宇宙ステーション排熱システムの異常で、補給船の打ち上げは延期へ

2013年12月19日 | 宇宙 space
12月11日に発生した国際宇宙ステーション(ISS)の熱制御用外部排熱システム(ETCS)の異常。
これにより、冷却系統の一部が、設定された限界温度に達したため、自動的に機能を停止したんですねー

NASAによる原因究明では、ETCSの冷媒を、冷却用ラジエータへ流す量を調整する弁がうまく機能していないことが分かりました。
引き続き、NASAでは対応処置を行っていて、当面の対策としては地上からの操作で、別の弁を使って流量の調整を試みています。

不具合が起きた冷却系統は、ISSの機器で発生した熱を放熱するためのもので、冷媒としてアンモニアが循環しています。

でも、この応急処置ではISSの機器すべてを、使用することはできないんですねー

なので、結合モジュールの“ハーモニーノード”、ヨーロッパ実験棟“コロンバス”で重要ではない機器の電源を落としています。
日本の実験棟“きぼう”は、2系統のうち1系統の電源のみを使用して運用している状態です。

不具合が起きた冷却系統は、以前にも同様に故障を起こしていて、
2013年8月には、宇宙飛行士が船外活動を行って部品を交換、修理しています。

この不具合により、クルーの安全性、搭載機器の健全性に問題はないのですが、
オービタル・サイエンシズ社の“シグナス補給船”の打ち上げは、1月中旬以降に延期になるようです。

“シグナス補給船”の打ち上げは、9月の初打ち上げに次いで2回目。
今回の補給ミッションは42日間を予定していて、約2000キロの補給物資を運ぶことになります。

ETCS不具合復旧については、21日以降に3回の船外活動を行い修理するそうですよ。

生命が存在する惑星は、予測の半分くらい?

2013年12月18日 | 地球外生命っているの? 第2の地球は?
太陽系外惑星の気候を分析したところ、天の川銀河の生命居住可能な惑星の数が、これまでの予測の半分くらいしかないという研究結果が発表されました。

この研究では、新たな3Dコンピュータモデルを使った気候分析が使われていて、系外惑星はこれまで予測されていたより高温だということが分かったからなんですねー

過去20年の間に、恒星の周囲を公転する惑星が多数発見されてきました。
その一部に、「私たちの知るような生命が存在するのでは?」という期待が高まっているんですねー

地球では、液体の水があるところには、ほぼ必ず生命が存在するので、
地球外生命の探査は、恒星(中心星)からの距離が液体の水の存在にちょうどよい範囲“ハビタブルゾーン”内にある惑星に、的を絞って行われています。

NASAの系外惑星探査衛星“ケプラー”が、これまで発見した惑星に基づく最新予測では、
約22%の太陽型恒星の“ハビタブルゾーン”内に、地球サイズの岩石惑星が存在する可能性があるようです。

天の川銀河には約1000億個の恒星が存在するので、この銀河には220億個もの地球型惑星が存在することになるんですねー

ただ、この数字はあくまでも、太陽型恒星の“ハビタブルゾーン”を、恒星から0.5~2天文単位の範囲と定義した場合の話です。
今回の系外惑星の大気分析では、太陽型恒星の“ハビタブルゾーン”の内縁は恒星から約0.95AUで、0.5AUより遠いという結果が出ました。

この結果に基づくと、天の川銀河に存在する地球型惑星の数は、先に挙げた予測の半分近くに減る可能性があるんですねー


系外惑星の気温を予測する従来モデルでは、基本的に惑星を単なる点、恒星から反射または吸収する熱量を平均した1次元の物体として扱ってきました。

でも、今回の研究では、3次元の気候モデルを用いることで、空気の流れなどの詳細な要素を取り入れています。

今回のモデルが分析した要素の1つは、熱を吸収する水蒸気です。
惑星があまりに恒星に近いと、惑星表面の水が大量に蒸発することで惑星の気温が上昇し、結果的に水がすべて蒸発してしまうので、惑星表面には私たち知るような生命は存在できなくなるんですねー

これまでは、水蒸気の雲が恒星からの熱を反射することで、惑星の気温を下げていると考えられてきました。
ところが最新モデルで分析してみると、一部の雲は熱を逆に吸収し、系外惑星の気候を不安定にしていることが分かってきました。

惑星表面に近い雲は、たしかに熱を反射するのですが、高高度にある雲は温度が低いので、かえって一部の熱を吸収し、外へ逃がしにくくするんですねー


雲に関するこれらの新たな発見は、惑星がこれまで考えられていたよりも、はるかに“暴走温室効果”を起こしやすい可能性を示唆しているのですが、一方で最新モデルは、気候の安定化を助けるその他の要素の存在も明らかにしています。

たとえば大気は暖かく湿った空気を、熱帯地域から極地の寒冷地域へと移動させます。
これらの地域は、惑星の気候の安定化にとって重要で、“暴走温室効果”の発生を防ぐ役割を果たすんですねー


今後の研究として、3Dモデルが“ハビタブルゾーン”の外縁についても、従来と異なる予測を示すのかを調べることがあります。

太陽型恒星の周囲を、地球サイズの惑星が公転している“ハビタブルゾーン”の外縁は、現在のところ恒星から1.7~2AUの距離にあると考えられています。

でも、3Dモデルが示す空気の循環によっては、水が凍らない恒星からの限界距離は、これまで考えられていたよりも遠い可能性があるとか…


その他にも、地球が属する太陽系とは異なる惑星系の気候についても、研究は進められています。

たとえば、小さい恒星の周囲を回る惑星のケースです。
自転と公転が同期して、恒星に対して常に同じ面を向けている可能性があるんですねー

その場合、地球の周囲を公転する月のように、常に恒星のほうを向いている昼の側と、常に夜の側とが存在することになります。
なので、大気の循環や雲の位置に大きな変化をもたらすということになるようです。

直接観測が可能? “エウロパ”表面に水蒸気

2013年12月17日 | 宇宙 space
木星の衛星“エウロパ”は、分厚い氷の下に広大な海があると考えられ、生命の可能性も指摘されている天体です。
その地表に水蒸気や粘土のような鉱物が、初めて見つかったんですねー

2013年の冬、ふたご座の位置でひときわ明るく目立っている木星。

この太陽系最大の惑星の周囲を回る、とりわけ大きい4つの“ガリレオ衛星”の一つ“エウロパ”は、表面を覆う厚い氷の層の下に海があり、生命を育む可能性があるとして注目されています。

その“エウロパ”の南極域の表面に水蒸気が見られることが、ハッブル宇宙望遠鏡の分光観測で分かりました。
この水蒸気は、地表から噴出している可能性が高く、今後の観測でそれが確実になれば、土星の衛星“エンケラドス”に続いて2例目になるんですねー

“エウロパ”はおよそ3日半で木星を1周するのですが、木星から最も離れた時にのみ噴出活動らしきものが観測されています。

この水蒸気は“エンケラドス”と同様に、“エウロパ”表面に見られるひび割れから出ているもので、木星から受ける潮汐力に応じて裂け目が開閉して、水蒸気の量に変化が生じるようです。

もし、“エウロパ”の地下に海があるなら、潮汐力の影響で“エウロパ”全体が大きく伸縮するという従来の予測とも一致するんですねー

水蒸気の供給源が“エウロパ”の地下にあるとされる海だとしたら…
これは、氷の層を掘らなくても、簡単に直接観測できるということになり、とてもワクワクする結果になります。


さらに、“エウロパ”に関する発見はもう一つあります。

NASAの木星探査機“ガリレオ”が15年前に取得した観測データを、新たな手法で解析したところ、“エウロパ”の表面に“フィロケイ酸塩”と呼ばれる粘土のような鉱物が見つかっています。

発見場所は直径30キロのクレーター近辺ということなどから、この鉱物は小天体の衝突がもたらしたと考えられます。
こうした小天体は生命に必須の材料である、有機物質も一緒に運んできたはずなんですねー
ひょっとすると、“エウロパ”に有機物が存在する可能性を高める発見なのかもしれませんね。


“エウロパ”の画像に、探査機“ガリレオ”の観測データ(四角部分)を重ねたもの。
青色が粘土のような鉱物の検出を示している。