宇宙のはなしと、ときどきツーリング

モバライダー mobarider

酸素ガスの放出で、銀河の星形成が終わる?

2013年12月16日 | 宇宙 space
すばる望遠鏡による観測で、90億光年彼方の12個の銀河から広がる、酸素ガスがとらえられました。

こうした銀河では、ガスの放出で星形成が終わりつつあると考えられていて、
銀河内での大質量ブラックホールや、星形成活動の観測結果とあわせて、銀河の進化を理解する大きな手がかりになるようです。

すばる望遠鏡がとらえた、12個のオーツーブロブ銀河。
酸素イオンのガスが、銀河からしみのように広がっているのが分かる。
その範囲は約10万光年から、最大で25万光年にも及ぶ。

90光年彼方に見つかったのは、酸素イオンのガスを広範囲に放出する12個の銀河。

このガスは、酸素原子が電子を1つ失っている状態“オーツーブロブ(酸素イオンのしみ)”と呼ばれ、
活発に星を生み出していた銀河が星形成を終了し、銀河が進化としての最終段階に入りつつあるようすを知る、大きな手がかりになるようです。

今回の研究では、
成長した“オーツーブロブ”では、星形成が活発な同程度の重さの銀河に比べて作られる星の量が少なく、酸素ガスの放出で星形成が終わりつつあると考えられるんですねー

酸素ガスは、銀河中心の巨大質量ブラックホールの活動や、星形成による熱で飛び出し、
スバル望遠鏡や超大型望遠鏡VLTでの分光観測から、大質量ブラックホールと星生成の両方による、ガスの放出の痕跡が検出されています。

これらの銀河と同時代の星形成銀河の約3%が、ガス放出の段階にあると計算されていて、銀河の形成・進化を理解するうえで重要な研究結果となるようです。

5つの惑星の大気に水の兆候

2013年12月15日 | 宇宙 space
ハッブル宇宙望遠鏡による赤外線観測から、5つの系外惑星の大気に水の痕跡が見つかりました。
複数の惑星を詳細に調べることで、それぞれの大気の個性も見えてきそうです。

惑星(手前)の表面の大気を通して見える主星(奥側)の光を分析することで、
大気の成分を推定できる。

水の兆候が見つかったのは、
それぞれ異なる恒星のごく近くを回る、巨大ガス惑星“ホットジュピター”です。
これらの惑星は、公転のたびに地球から見て恒星“主星”の手前を通過するので、惑星の大気を通して見える主星の光が分析できるんですねー
そして、惑星の大気に含まれる水が、光の一部を吸収するという痕跡を探っています。

その結果、“WASP-12 b”、“WASP-17 b”、“WASP-19 b”、“HD 209458 b”、“XO-1 b”の5つの惑星から、かすかですがはっきりとした水の兆候を見つけることができました。





地球の大気を通りぬけてきた太陽の光にも、水や酸素の存在が刻まれている。



系外惑星の大気の水については、これまで数例が報告されていたのですが、
複数の惑星に関して、その兆候の強さまで比較測定するのは初めてのことなんですねー

“WASP-17 b”は大きくふくらんだ大気を持っていること、“HD 209458 b”は5つの中でも水の痕跡がとりわけ強く現われていることも分かってきました。

温度環境など異なるタイプの惑星において、大気に含まれる水の量がどのように違ってくるのか?
今回の成果は、そういった比較研究の第一歩になるそうですよ。

火星に淡水湖の痕跡! 微生物がいた可能性も…

2013年12月14日 | 火星の探査
火星にかつて微生物が生息していた。
そんな可能性のある淡水湖の痕跡を、NASAの無人探査車“キュリオシティ”が発見しました。




ゲールクレーターの北縁から川が流れ、湖(水色の部分)ができたと推定されている。
矢印の先がキュリオシティが探査を行っているイエローナイフ湾付近。




かつて水に富み、微生物を育みうる環境にあったと考えられている火星ですが、湖があったとされる場所にはもう水は残されていません。

でも、ドリルで岩石に穴を開けて採取したサンプルでは、数十億年前に微生物が存在していた可能性があることが分かってきたんですねー

これは、岩石に炭素、水素、酸素、窒素、硫黄の痕跡が確認されたからで、これらの元素は微生物に最適な生息環境を提供するからです。

地球上でも、洞窟や海底の熱水噴出孔周辺などで、
これと似たような環境があり、“化学岩石独立栄養生物”と呼ばれる微生物が生息することが確認されています。

今回、火星の岩石からは生物は見つかっていないのですが、
サンプルを採取した泥岩砂岩からは、水が存在していたことを示す粘土鉱物が見つかっています。

そして、これらの岩石は35億~36億年前のもので、火星の歴史上比較的若いものだったのが今回の発見の驚きの一つだったとか…
なぜかと言うと、地球上で見つかった最古の微小化石(生物の一部を構成していたもの)の時期と一致するからなんですねー

彗星探査機“ロゼッタ”は1月20日まで冬眠ちゅう

2013年12月12日 | 彗星探査 ロゼッタ/フィラエ
ヨーロッパ宇宙機関が2014年に予定している、世界初の彗星への着陸機投下ミッション。
これに向けて彗星探査機“ロゼッタ”は、2014年1月20日に957日間の冬眠モードから回復することになるんですねー

“ロゼッタ”は、2004年3月2日にアリアン5ロケットで打ち上げられた、ヨーロッパ宇宙機関の彗星探査機です。

2008年9月には小惑星“シュテインス”、
2010年には小惑星“ルテティア”のフライバイ撮影を行っています。
そして、2011年6月8日に冬眠モードへ入り、2014年1月20日に復帰する予定なんですねー

ほぼ10年に近い旅を経て、2014年8月に“67P/チュリモフ・グラシメンコ彗星”に接近し、探査機本体が彗星を周回して着陸地点を決定します。
同年11月には、着陸機“フィラエ”を彗星表面に着陸させる予定です。

約100キロの着陸機“フィラエ”には、カメラを始め10の観測機器が搭載されていて、彗星表面で調査を行います。
このミッションが成功すれば、世界初の彗星への着陸機投下となるんですねー

また、太陽から8億キロ… メインベルト以遠へ、
太陽電池パネルからの電力供給で飛行した例としても初になります。

ヨーロッパ宇宙機関では、探査の重要な局面である“ロゼッタ”の冬眠あけまでのカウントダウンを開始したそうですよ。

100億年前の銀河の星形成率は今の20倍もあった?

2013年12月11日 | 宇宙 space
100億年前の銀河で新しい星々が活発に形成されているようすが、
すばる望遠鏡によりとらえられました。

そして、星形成率や重元素の量の測定から、
初期宇宙の銀河の変遷の一部が明らかになってきたんですねー

個々の銀河スペクトルを横方向に並べたイメージ。
青丸は原子の存在を示す輝線の部分。

すばる望遠鏡と、その搭載装置“ファイバー多天体分光器”を用いて、
100億年前の銀河で新しい星々が活発に形成されているようすがとらえられました。

“ファイバー多天体分光器”は、
400本ものファイバーをそれぞれ1つの天体に正確に向けることで、
同時に400個の天体の光を分析することができる装置です。

銀河からの光を波長ごとに分けて調べると、銀河までの距離やチリの量などが分かり、
そして、そこから銀河内で1年間に新しく作られる星の総質量“星形成率”を、
求めることができるんですねー

今回の研究発表は、
この“ファイバー多天体分光器・COSMOSサーベイプロジェクト”の初期成果になります。

観測の結果、100億年前の宇宙において銀河が重いほど、その中での星形成率は高く、
また、当時の銀河では現在の20倍以上もの効率で、星が生み出されていたことが分かりました。

これまでの天の川銀河の近傍、つまり現代に近い時代の宇宙でしか確かめられていなかったことが、
100億年前までさかのぼっても、なお当てはまることが示されたことになるんですねー

さらに、これらの銀河の星間ガスには、水素とヘリウム以外の重い元素“重元素”が、
ほんの少ししか含まれていないことも分かりました。

なので、このころの銀河は水素やヘリウムのような原初のガスを大量に蓄え、
それが恒星の核融合反応で重元素に合成されて銀河が成長する、
という初期宇宙の銀河の姿に一致する結果となりました。

銀河の星形成率の分布図。時代をさかのぼるほど、
また銀河の質量が重いほど大きくなることが示されている。

一方で、観測された中でもかなり重い銀河は、大量のダストと重元素を蓄えていました。

この結果から、こうした重い銀河はすでに十分に成長していて、
完全に成熟し星形成を終えてしまった現代の銀河に似ていることが示されました。

“ファイバー多天体分光器・COSMOSサーベイプロジェクト”は、
他の望遠鏡での観測と共同で1000個を超える銀河を観測して、
宇宙の大規模構造の地図を作ることを目標としています。

今の宇宙に見られる、
成熟した重い銀河団のような銀河の集まりが宇宙の初期にもあったのか?
その答えを見つけることが期待されています。