宇宙のはなしと、ときどきツーリング

モバライダー mobarider

連星系の複雑なガス流

2014年05月26日 | 宇宙 space
450光年彼方の若い連星系の観測で、
それぞれの星から噴き出すガス流の存在が明らかになりました。
その構造は、主星から幅広いアウトフローが、そして伴星からは細いジェットが出ているという複雑なものだったんですねー
“ぎょしゃ座UY星”のイメージ図。

多くの恒星が集団で生まれ、連星系として存在することが知られていますが、
連星系の若い時代を調べることは、星や惑星誕生の過程を理解するのに重要になります。

円盤を伴っている若い単一星からは、アウトフローと呼ばれる、
外向きのガスの流れが多く発見されています。
でも、若い連星系からのアウトフローは観測例が少なく、未解明な点が多いんですねー

今回、観測の対象になったのは、複雑な構造をしている連星系“ぎょしゃ座UY星”です。
2つの星は、お互いから約180au(太陽~海王星の約6倍)しか離れていません。
“ぎょしゃ座UY連星系”の鉄イオンガス流の分布。
左下は近づく方向、
右下は遠ざかる方向の運動をするガス分布。

それぞれが周りにガスとチリの円盤を持っていて、さらに連星系を囲むような円盤構造(周連星系円盤)もそんざいしているんですねー

ハワイにあるジェミニ北望遠鏡を用いた、この連星系におけるガス流の観測では、
太陽系に近づく方向に運動するガス流と、遠ざかる方向に運動するガスの分布が調べられています。

近づく方向に運動するガス(左画像左下)は、伴星から主星方向に細く伸び、さらに主星の周囲に広がるように分布しています。
一方、遠ざかるガス(左画像右下)は、主星の図中下方に広く分布し、伴星付近からさらに伸びています。
観測から分かった連星系のガス流構造。

この結果から推測される連星系のガス流構造が、上の画像になり、
近づくガスは、伴星からの細いジェットと主星からの幅広いガス流(アウトフロー)、
遠ざかるガスは、それぞれの反対極側からのジェットとアウトフローのようです。

連星系のアウトフローやジェットは、
1つしか見えなかったり、2つ見えたりと、天体ごとに個性があります。

今回の“ぎょしゃ座UY星”で観測された複雑な構造が、どのくらい普遍的なものなのかを調べるには、
より多くの連星系を、高い解像度で観測する必要があるようです。

探査機“ロゼッタ”がとらえた着陸予定の彗星

2014年05月25日 | 彗星探査 ロゼッタ/フィラエ
飛行中のヨーロッパ宇宙機関の彗星探査機“ロゼッタ”が、
活動を開始し、放出したチリとガスの大気(コマ)が見える、
チュリモフ•ゲラシメンコ彗星をとらえました。
彗星探査機“ロゼッタ”がとらえた
3月27日~5月4日の
チュリモフ•ゲラシメンコ彗星
(9コマを連続再生)。
“ロゼッタ”は、およそ10年かけて目的地の彗星へ航行を続けていて、2014年1月20日に2年7か月ぶりに冬眠状態から復帰、今年の8月の彗星到着に向けて順調に旅を続けています。

画像は、3月27日から5月4日までの写真をつなげたもので、この期間中、“ロゼッタ”から彗星までの距離は500万キロから200万キロに縮まり、
彗星から太陽までの距離も、6億4000万キロから6億1000万キロまで近づいています。
動画では、彗星がじょじょに明るくなり、周囲1300キロにコマが広がるようすが分かるんですねー

コマは太陽熱であたためられて放出された氷やチリが、彗星の核覆う大気のようなもので、
これから彗星がさらに太陽に接近すると、彗星らしい長い尾を引くことになります。

彗星の核は画像では見えませんが、縦4キロほどで、
明るさの変化から、その自転周期は12時間24分だと分かることに…
この時間は、これまでの計算よりも20分も短いんですねー

“ロゼッタ”は8月にこのコマの中に入り、彗星とのランデブー飛行を開始します。

そばを通過するだけのフライバイ観測でなく、彗星をランデブー探査するのは始めてのことで、
最初の2か月間で彗星表面を観測し、質量や形状、コマ(ガスとチリの大気)の分析を行います。

そして、これらの観測データをもとに着陸地点が決定され、
11月には重量100キロの着陸機“フィラエ”により、史上初の彗星への着陸を行うんですねー

幅4キロの彗星核は重力が小さいので、地表にネジを差し込んで“フィラエ”を固定。

地表の高解像度撮影のほか、表面をドリルで削って氷を分析するなど、幅広い科学観測が行われる予定です。


“ロゼッタ”と“フィラエ”の観測は、2015年8月に彗星が太陽に最接近するまで続き、
太陽に近づいて活発になっていく彗星活動のようすを1年以上、現地で克明にとらえます。
なので、まだ知られていない彗星の姿が見れるかもしれませんね。

ダークマターの手がかりを“フレア領域”に発見

2014年05月24日 | 宇宙 space
天の川銀河の円盤外縁部がふくらんだ“フレア領域”に、5つの星が位置することが分かりました。
こうした“フレア領域”の天体は、その分布や運動に影響を及ぼす“ダークマター”を調べる手がかりになるので、
期待されているんですねー
天の川銀河と、“フレア領域”でのケフェイド変光星の分布(図中左側)。
図の右側は太陽系(オレンジ)周辺。

私たちの天の川銀河の円盤には、
外側がふくらんで厚くなっている“フレア領域”と呼ばれる部分があります。

銀河のほとんどの恒星や星間ガスは、銀河円盤に集まっているのですが、
この“フレア領域”に恒星が存在するかどうかは、いままで分かっていなかったんですねー

この研究では、南アフリカ天文台の望遠鏡を用いて、
2012年にポーランドのワルシャワ大学が、ケフェイド変光星として報告した天体を観測しています。

ケフェイド変光星は、数日から数十日の周期で明るさが変動し、
その変光周期と明るさから距離を測定できるという特徴があります。
この性質から、5つの変光星は6~10万光年彼方、しかも円盤から銀河円盤と垂直な方向に約3000光年以上離れた、“フレア領域”内の天体であることが判明したんですねー

この“フレア領域”での恒星の分布と運動は、未知の重力源“ダークマター”の存在に影響されるので、
今後これらの天体や、同じような場所にある恒星を詳しく調べることで、天の川銀河の外縁部にある“ダークマター”の調査につながると期待されているんですねー

ドラゴン補給船、地球に帰還

2014年05月23日 | 宇宙へ!(民間企業の挑戦)
スペースX社のドラゴン補給船が、18日に国際宇宙ステーション(ISS)から切り離され、メキシコの太平洋沖に着水しました。

ドラゴン補給船は、アメリカの民間宇宙開発ベンチャーであるスペースX社が、
開発したカプセル型無人宇宙船です。
NASAとの契約による国際宇宙ステーションへの商業補給ミッションは、
今回で3回目で、打ち上げから帰還まで、完璧な飛行を収めたことになるんですねー

ドラゴン補給船は、先月20日に国際宇宙ステーションに到着してから28日間係留。

そして、総重量1580キロ以上の科学実験サンプルを満載して、日本時間18日の午後10時26分に、オーストラリア南部付近の海上はるか上空で、国際宇宙ステーションのロボットアームから切り離されています。

単独飛行を行った後、ドラゴン補給船はスラスターを噴射し軌道速度を落とし、非与圧部のトランクと太陽電池パドルを投棄してから大気圏へ再突入。

太平洋上を北西から南東の方向に飛び、その後パラシュートを展開し減速しつつ降下して、メキシコのバハ・カリフォルニア州の沖約500キロの海上に着水したんですねー

今回のミッションは、スペースX社とNASAとの契約に基づく、全12回のISSへの商業補給ミッションの3回目にあたります。

さらにスペースX社は、アメリカの航空宇宙大手のボーイングや、宇宙輸送ベンチャーのシエラネバダとともに、国際宇宙ステーションをはじめとする、軌道上の目的地に人員を輸送できる民間宇宙船の開発でNASAと契約を交わしていて、ドラゴンは2017年に公開される見込みです。

アメリカはスペースシャトルの引退後、国際宇宙ステーションへの宇宙飛行士の輸送を、ロシアの有人宇宙船ソユーズ依存しています。

1人当たり約71億円を支払っているんですねー
でもドラゴンの登場で、その関係は終了するようですよ。

地球の生物による宇宙汚染、その対策は?

2014年05月22日 | 宇宙 space
小説“宇宙戦争”に登場する火星人や、映画“ET”の超能力を持つ宇宙からの訪問者…
SFの世界では、宇宙人が地球にやって来る話がたくさんあります。

でも現実の科学の世界では、地球に住む生物、具体的にはバクテリアや微生物が、
地球以外の天体に到達することのほうが、より大きな懸念になっているんですねー

NASAは火星に複数の探査機を送っているほか、
氷で覆われた木星の衛星“エウロパ”の探査も計画しています。
また、土星の衛星“エンケラドス”に海が存在する可能性についても調査を進めています。

これらの試みは、こうした惑星や衛星に生息する生命体の発見を目的にしていて、
こうした探査結果に地球由来の生命体が紛れ込む可能性もあります。

ワロップス飛行施設のクリーンルームで、
打ち上げに向けた準備作業が進む、
NASAの無人月探査機“LADEE”
これを防ぐため、NASAは探査船を宇宙に送り込む前に、徹底的なクリーニングを行っています。

地球の生態系も侵入種や感染症によって、汚染されることがあります。
NASAのクリーン作戦は、地球以外の新しい環境における、こうした事態の発生を防ぐためのものなんですねー

打ち上げ時の高熱や、宇宙空間の寒さ、さらには航行時の速度といった要因により、
探査機についたバクテリアや微生物は、ほぼ死滅してしまいます。

でも、国際宇宙ステーションの外部に生物を置く実験では、
細菌や地衣類、植物の種、さらには小動物などが、宇宙空間で数年もの間生き延びることが明らかになっています。


微生物の拡散を防ぐため、NASAおよび世界各国の宇宙機関は、
国際宇宙空間研究委員会の定めた惑星防疫手順を通じて、
すべての宇宙探査機について清掃手順を厳格化することで合意しています。
でも、徹底的な清掃をしても、宇宙探査機には多少の微生物が付着してしまうんですねー

なので、国際宇宙空間研究委員会では、
許容できる残存微生物の数について、いくつかのレベルを設定することに…
ただ、地球に住む生命体が他の天体で生き延びる可能性について、
その実態が明らかになるにつれ、これらの基準は確実に今後変わっていくことになります。


さらに火星の中には、いまでも生命が生存可能と考えられる場所があるので、
ここを地球の微生物に汚染されることがないように、特に最新の注意を払う必要があります。

これらの場所は、地球由来の生物が簡単に繁殖しうる環境にあり、
火星で生まれた生命体が存在する可能性が高い場所だと考えられています。
こうした場所には液体の水があり、
少なくとも1年のうち一定の期間は、気温が氷点下より上になるからです。
なので、火星のこのような場所は、着陸地点から外すべきなんですねー

他の天体まで生命体を探しに出かけて、
見つかった生き物が、実はフロリダ州に住んでいるものだと判明したら…
ひじょうに残念 っと言うしかないですよね。