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信州里山通信。自然写真家、郷土史研究家、男の料理、著書『信州の里山トレッキング東北信編』、村上春樹さんのブログも

高尾山にも祀られる飯縄権現の鎮座する飯綱山は湿度100%のお花畑(妻女山里山通信)

2015-08-19 | アウトドア・ネイチャーフォト
 週末は、長野市民の山、飯縄山へ撮影登山に出かけました、この山も私の『信州の里山トレッキング 東北信編』川辺書林に載っています。3年前に息子達と中社・西登山道コースを登り、瑪瑙山コースを下ったのですが、今回は、一番ポピュラーな一の鳥居からの南登山道を登りました。このコースは、2000年にまだ小さかった息子達と登って以来ですから、なんと15年ぶりです。このコースは、飯縄神社の本宮から奥宮への表参道になります。
子供のトレッキングについてのノウハウは「キッズ・トレッキングのアドバイス」をお読みください。

 一の鳥居園地の案内図。右が北になります。下の赤い細線は、私が描き加えた登山道。本書では、分かりやすい舗装路へすぐ出るルートを紹介していますが、駐車場からちょっと入ったところにある登山道の小さな標識を見落とさなければ、森を歩くこちらの方がいいでしょう。
 落葉松林の小道を歩きます。道の両側には、マルバフユイチゴ(丸葉冬苺)の赤い実がたくさん成っていました。

 舗装路に出て真っ直ぐに登って行くと、登山口の石の鳥居に着きます。額には飯縄大明神の文字。登るとほどなく林道が横切っています。その向こうに一の鳥居。このコース沿いには、13体の石仏と馬頭観音があります。右のカットは、第6番目の弥勒菩薩。看板には、文化十三年八月建立とありますから、1816年。江戸時代後期の初めで町人文化が栄え、庶民の旅も始まった頃です。
「十三仏(じゅうさんぶつ)は、十王をもとにして、江戸時代になってから日本で考えられた、冥界の審理に関わる13の仏(正確には仏陀と菩薩)である。また十三回の追善供養(初七日~三十三回忌)をそれぞれ司る仏様としても知られ、主に掛軸にした絵を、法要をはじめあらゆる仏事に飾る風習が伝えられる。13の仏とは、閻魔王を初めとする冥途の裁判官である十王と、その後の審理(七回忌・十三回忌・三十三回忌)を司る裁判官の本地とされる仏である。」(Wikipedia)
 途中、登山道を整備されている人と出合いました。度重なる豪雨で登山道がすぐに荒れてしまうそうです。神城断層地震でもダメージを受けたとか。飯縄山の名称の由来となったともいわれる「天狗の麦飯」について聞いた所、山頂の北側にあった群生地は、もう数十年前に消滅したそうです。私の本では中腹と書いてありますが、これは校正ミスで正しくは山頂付近です。現在は笹薮に覆われています。ただ藍藻類というのは意外にタフで、乾燥にも強いので、笹薮を切り開いて更地に戻せば復活するのではなどと考えてしまいます。
 登山道整備のお礼を言って登山開始。猛烈な湿度で歩みも捗りません。クロメマトイが大発生して鬱陶しいこと。

 途中で撮影した不思議な物体。3センチほどですが、最初は粘菌かと思ったのですが。撮影して拡大してみると、どうもキノコのようです。ハナホウキタケの幼菌ではないかと思われます。他にはニガイグチの仲間がたくさん出ていました。
 湿度100%の山登りは、想像以上に過酷でした。まるでサウナの中で登山しているような状態。しかも、あまりの湿度にカメラが度々誤作動して参りました。撮影に時間を撮られたのもありますが、1時間15分もかかって半分の駒つなぎの場に到着。本書では、1時間45分と、初心者向けに多めにとってあります。
 右はクマイチゴ(熊苺)。文字通り月の輪熊の大好物です。先日、伊那の長男がサイクリングに行った時に、山中で5m前にうずくまってキイチゴを食べているおじさんがいると思ったら、子熊だったそうです。あっという間に逃げていったので無事でしたが。飯縄山もひと沢に一頭いるといわれるので、熊鈴は必須です。

 1800mを過ぎて草地に出ましたが、このガス。なんにも見えません。シシウド(獅子独活)だけが目立ちます。中はシモツケソウ(下野草)の残花。ほとんどは散っていました。他の花もそうですが、夏の花の見頃は7月下旬から8月上旬です。右はハクサンフウロ(白山風露)の残花。

 飯縄神社のある1909mのピーク手前の小石祠。登山者の中には、ここを飯縄神社と思って通り過ぎて行く人もいるようです。中は、1909mのピーク広場。ここから山頂へ向かう下り口の右を見ると、一番右のカットのように赤い屋根が見えます。これが飯縄神社の奥宮です。

 飯縄神社奥宮。御由緒などは、飯縄神社のホームページを。入り口に雨が吹き込まないようにブルーシートが掛かっていますが、軒先が神城断層地震と豪雪で壊れてしまったそうです。
 中は御本殿。中央に神鏡が置かれ、左右には天狗の面や石仏、下駄などが奉納されています。史実とは断定できませんが、烏天狗は、古代にいなくなったユダヤの11部族のひとつが日本に流れ着いたという説もあります。信州の羽田(秦)一族にはそういう伝説も残っているといいます。アフリカからベーリング海峡を越えて南米最南端のホーン岬まで行っていることを考えると、あながち荒唐無稽な話ではないと思います。

 ピークに戻り、山頂へ向かう道を下ると、すぐ左手に携帯トイレのブースがあります。携帯トイレは大座法師池のコンビニや観光案内所で買えます。
 一旦鞍部へ下ってマツムシソウ(松虫草)の咲く笹の道を歩きます。奥には山頂が見えています。ほどなく山頂へ。やや広い山頂には、40人ぐらいの人がいたでしょうか。若者や小さな子供達もいます。ちょうど本のパンフレットを持っていたので、皆さんに配りました。非常に反応が良かったのですが、山が好きでこんな過酷な日に登ってきた人達ですから当然かもしれません。一番小さい子は6歳で、3,4人いました。次男が登った時の年齢です。普段から歩き慣れていれば、年長組なら登れるでしょう。ただ、山頂付近は放射線量がやや高いので要注意。岩に座る場合はアルミシートを敷くように。放射能汚染を甘く見てはいけません。情報弱者は生き残れませんよ。

 湿度が高いので昆虫は、クロメマトイが大発生でしたが、山頂ではキアゲハと共に、ツマグロヒョウモンのメスを撮影することができました。真ん中はヤマハハコ(山母子)。右は、同定の論争の種になるリンドウの仲間。エゾリンドウ(蝦夷竜胆)かオヤマリンドウ(御山竜胆)か、エゾオヤマリンドウ(蝦夷御山竜胆)か。正直なところ私には分かりません。

 目立つのは、やはりシシウド。大きな白花は、高原の夏の花火。虫たちも大好きでアブやアリなどが集まります。中は、マツムシソウ。よくクジャクチョウやハナアブが吸蜜しています。右は、これもしっかり見ないと同定が難しい花。これは花の色の濃さと葉の輪生からサワヒヨドリだと思います。晴れていれば、アサギマダラの吸蜜が見られたかもしれません。

 色が濃いトリカブト(鳥兜)の仲間。出会った男性は、これを見られたから満足と言って下りて行きました。トリカブトの仲間も同定が困難です。ホソバトリカブト(細葉鳥兜)でしょうか。低山のヤマトリカブトに比べると花の色が濃くて見惚れます。全草が猛毒なので要注意ですが。
 中はクガイソウ(九蓋草)の残花。右はモミジハグマ(紅葉白熊)。若芽は山菜のシドケ。

 下山途中で雲が取れて善光寺平が見えてきました。大座法師池の右奥に旭山、中央に葛山、左に大峰山。左に長野市街。犀川の流れ。その奥には千曲川の流れが。間が川中島です。
 あまりの湿気と冷えでしょうか、右脚のスネを痛めてしまいました。パンフレットがなくなったので、途中で登ってきた女性には話で本の紹介を。彼女も何度も引き返そうと思ったそうです。過酷な天候でした。駒つなぎの場にいた東京からの家族にも本の紹介をしました。一緒に記念撮影を頼まれたのは照れくさかったですが。この日は、午後になって雲が取れてきたので、遅出の人のほうがラッキーでしたね。ただ、猛暑で雷雲が発生しそうな日は、午後2時か3時までには下山しないと危険です。

 下山して大座法師池の近くの大谷地湿原へ。左の花が分かりません。葉は大きく肉厚で、葉脈は網目状。なんか以前見た記憶があるのですが思い出せません。中はシラネセンキュウ。ヤマゼリ、シラネセンキュウ、カノツメソウの3つは咲く時季、生える場所も似ているので、よく間違えます。
 右は、大谷地湿原からの飯縄山。大きなアザミ(薊)が咲いていますが、木道を外れて近づけないので同定できません。

 その後は、逆谷地湿原へ。長男が卒論で花粉分析のためにボーリングをした時に、私も手伝いました。小学校の校庭ぐらいの広さですが、約10万年という日本はもちろん、世界でも最古級の貴重な湿原なのです。尾瀬ヶ原が9000年と考えると、その貴重さが分かると思います。オオミズゴケに覆われ、サワギキョウ(沢桔梗)が咲き始めていました。今回は、許可を得ていないので立ち入って撮影はできません。
 中はタチアザミ(立薊)。右は、デッキに墜落してきたアカエゾゼミ(赤蝦夷蝉)。樹冠で鳴いているので、こうして見るのは初めてです。貴重なカットが撮れました。もちろん撮影後に放しました。足元にはたくさんのミヤマフキバッタ。ハラビロトンボが生息するようですが、時期が遅いのか見たのはオニヤンマでした。

◆『信州の里山トレッキング 東北信編』川辺書林(税込1728円)が好評発売中です。長野市や松本市の平安堂書店、蔦屋などでお求め頂けます。東京は銀座の長野県のアンテナショップ「銀座NAGANO しあわせ信州シェアスペース」にも置かれるそうです。首都圏から信州の里山に登りに来る人も多いですから。Amazonでも買えます。でも、できれば地元の書店さんを元気にして欲しいです。パノラマ写真、マクロ写真など668点の豊富な写真と自然、歴史、雑学がテンコ盛り。分かりやすいと評判のガイドマップも自作です。この夏は、信州の里山や亜高山を歩いてみませんか。
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