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信州里山通信。自然写真家、郷土史研究家、男の料理、著書『信州の里山トレッキング東北信編』、村上春樹さんのブログも

オオムラサキのオスと邂逅。美しい合歓木の花。ルリシジミ、ホソヒラタアブ、ミナミヒメヒラタアブ、メジロ(妻女山里山通信)

2021-07-07 | アウトドア・ネイチャーフォト
 七夕の朝、天気予報は曇りでしたがみるみるうちに晴れてきました。慌ててパッキングして妻女山へ撮影に。最初は湿気もあって静かでしたが、太陽がギラギラと照り始め気温が上昇。29度に。昆虫たちの活性も一気に高まりました。

 妻女山松代招魂社の板壁に止まるオオムラサキのオス。非常に綺麗です。まだ羽化して間もないのでしょう。
 オオムラサキ(大紫)チョウ目タテハチョウ科タテハチョウ亜科。幼虫の食草は、エノキ。 オスは、美しい青紫の翅をもちます。成虫は樹液に集まり、カブトムシやスズメバチにもひるむことがありません。結構気は荒く、オス同士の縄張り争いは相当激しいものです。小鳥を追いかけることも。以前ツバメを追いかけているのを見たことがあります。羽音は大きく、バッサバッサという音を立てて飛び回ります。こんな全く傷ついていない綺麗なオスに出会ったのは本当に久しぶりです。今朝早く羽化して翅が乾いたばかりなのでしょうか。いや美しい!

 オスの翅の表には、構造色と呼ばれる光沢を持つ青紫色の鱗粉があります。構造色は、色素色と違い、そのものが色素を持っているわけではなく、鱗粉の物理的な構造により発色しているものです。CDやDVDの表面が光の角度で虹色に見えるのと似ています。従ってオオムラサキの翅の色も、光の角度によって色は微妙に変化して見えます。構造色はその構造がくずれない限り色は変わりませんが、鱗粉がはがれたり、並びが乱れると、翅の色はあせてきます。

 板に染みた雨の水分を吸っています。口吻はストローのように見えますが、実際は顎が変化したものなので、横に二つに割れていて雨樋が二本合わさったようなものです。羽化した直後はまだ割れていて、すぐにファスナーが閉じる様に合わさって管になるのです。また、タテハチョウ科のチョウはみな4本脚に見えますが、ほとんど使われない前脚が胸に小さく折り畳まれています。

 大きな複眼にある黒い点は偽瞳孔です。名前の通り偽もので、いつもこちらを向いているので見つめられているような気がしますが、光の入射角がこちらに向かっていると、光を全て吸収するため黒く見えるそうです。
 複眼といっても実際は、ひとつに統合された画像を見ているようで、画素数はそんなに高くないようですが、紫外線が見えたり、動体視力はいいようです。なので蝶に近づくには、なるべくゆっくりと動くことが逃げられないコツです。
 複眼の前の二本の角は、下唇鬚(かしんしゅ)といって、匂いを感じたり、複眼や口吻を掃除するものといわれています。

 オス同士の激しい縄張り争いを物語る一頭のオス。メスもそろそろ出現するでしょう。ぐずついた天気で発生が遅れている感じがします。

 ネムノキ(合歓木)の花。樹高10〜15mぐらいになり、花は樹冠で咲くのでなかなかこんな風に近接撮影はできません。長く伸びた線香花火のような紅色の雄しべが美しい花です。花弁は5つで真ん中に雌しべがあります。この葉は合歓皮(ごうかんひ)といって漢方薬です。利尿、強壮、鎮痛、腰痛、打ち身、腫れ物、水虫、手荒れ、精神安定などに効くそうです。貝原益軒は「この木を植えると人の怒りを除き、若葉を食べると五臓を安じ、気をやわらげる」と記しています。
「わぎも子が 形身の合歓木(ねぶ)は 花のみに 咲きてけだしく 実にならじかも」大伴家持(巻八-1463)
 (あなたからもらった形身の合歓木は、花が咲くばかりで実にはならないかもしれません・・)


(左)ネムノキの名前は、夜になると葉が閉じてしまうことからです。葉全体が茎に付着する部分と小さな葉がそれぞれ付着する部分(葉柄)の基部がふくれていて(葉枕)その細胞内圧力(膨圧)が昼夜で変化するので葉が閉じたり開いたりするのだそうですが、何かの防御機能なのでしょうか。(右)ヨウシュヤマゴボウ(洋種山牛蒡)。北アメリカ原産の帰化植物で毒草です。

 そのヨウシュヤマゴボウで吸蜜するルリシジミ(瑠璃小灰蝶)。翅の表面は水色から明るい青紫色。ヤマトシジミと似ていますがかんたんな見分け方は、ルリシジミは目が黒、ヤマトシジミはねずみ色。

 ホソヒラタアブ(細平田虻)。体長は10〜12ミリぐらい。複眼の間が空いているのでメス。幼虫はアブラムシの天敵です。左下に伸びているのは蜘蛛の糸。

 ミナミヒメヒラタアブ(南姫平田虻)。体長は約8~9mm。小さいです。細くて見ようとしないと見えません。複眼がつながっていて胴がスリムなのでオスです。玉虫色の翅が美しい。コントラストが強すぎてなかなか難しい撮影でした。

(左)ホソヒラタアブの飛翔。シャッター速度優先にする時間がありませんでした。(右)タケニグサ(竹似草)の花にぶら下がりました。

 タケニグサにシロテンハナムグリ(白点花潜)。​コガネムシ科の甲虫で、体長は6〜25mm。幼虫は、朽木や腐植土を食べます。周囲のタケニグサにたくさんいました。タケニグサは毒草で、茎を折ると中空の中から黄色い液体が出てきます。殺虫成分があり、江戸時代はこれを便槽に入れていたそうです。

 望遠レンズの時に偶然近づいてきたのはメジロ(目白)。目白押しの元となったピッタリとおしくらまんじゅうのように枝に並ぶ習性があります。満開の桜でよく見られます。雀より小さく可愛らしい。

 妻女山の四阿の展望台から見る茶臼山。先日撮影に行った茶臼山自然植物園が見えます。午後になって雲が覆いオオムラサキも昼寝に入ったので山を下りて温泉へ向かいました。この先はぐずついた日が続く予報。大水害が起きないといいのですが。信州にも麓からは見えませんが、山の中のあちこちに廃棄物処理施設や残土捨て場、ソーラーパネルがあります。グーグルアースで見ると分かります。ソーラーパネルは、製造や廃棄の過程で、カドミウム、カドミウムテルル、セレン、鉛などの猛毒物質が出ます。その安全な処理方法やシステムは確立されていません。原発と同じです。決してクリーンエネルギーではありません。今週は撮影に行けないので、週末に粘菌図鑑をアップする予定です。

 国蝶オオムラサキの美しさや儚さや、その生態が分かるスライドショーです。BGMは、ガレージバンドで作ったオリジナル曲です。タイトルをクリックするとYouTubeのページが開きます。ぜひハイビジョンでご覧ください。

Omurasaki butterflies in Japan 2011 Part 1of3【オオムラサキ】


Omurasaki butterflies in Japan 2011 Part 2of3【オオムラサキ】


Omurasaki butterflies in Japan 2011 Part 3of3【オオムラサキ】


Omurasaki butterflies in Japan 2012【オオムラサキ】


その他の愛すべき蝶たちです。
Butterflies in Saijo Mountains 2012【妻女山山系の蝶】


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本の概要は、こちらの記事を御覧ください

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