普通のおっさんの溜め息

戦前派から若い世代の人たちへの申し送りです。政治、社会、教育など批判だけでなく、「前向きの提案」も聞いて下さい。

専門家から無視された農家の戸別所得保障制度

2010-02-23 10:35:23 | 農村問題

 日曜日のNHKの教育放送で[日曜フォーラム「“農と里”未来をどう支えるか~コメづくりを中心に~」]の放送がありました。
番組の概要
 日本農業の危機が叫ばれるなか、政権交代に伴い「戸別所得補償制度」の導入が決まり、農業・農家支援のあり方が、大きな関心を呼んでいる。大規模から小規模に至るコメ農家の厳しい現状、農業補償の先進国・フランスの事例、そして消費者による国内農業支援の新しい事例をみながら、“農と里”を将来にわたって支えていくために何が必要なのかを話し合う。(番組紹介より、以後青字は番組の内容、コメントはアンダーライン黒字は私の意見、緑字は私の注釈です。)
 出席者は日本の農業経営が専門の生源寺さん(東京大学大学院教授)、経済と物流専門の柴田さん(丸紅経済研究所所長)、山間地農業問題を抱えている古口さん(栃木県茂木町町長)とタレント業のかたわら、新潟県で農業に従事している大桃美代子さんです。
農家の戸別所得保障制度は欧米の先進国で既に実施している農家への直接給付の線に沿ったものだ
 フランスでは農家収入の8割、アメリカでは3割が政府からの補助金だ。
・複数の人:同制度は今の状況では農家への激励費くらいの効果しかない
 日本の場合は全国一律の定額補償が10アール当たり1万5千円が支払われることになっているので日本の農家の平均耕作面積は約70ヘクタール(ネット情報なので正確でないかも知りませんが)とすると150万円となります。
 フランスのように600万円前後なら若い人達も農業に戻るか参入するのでしょうが。
 日本の場合は勿論財政上の問題や、他の職業とのバランスのための制限もあるでしょうが、今の儘では焼け石に水、悪く言えば選挙対策ようのばら蒔き、小規模農業の固定化、政府依存体質の農家の固定化、といわれても仕方がないと思います。
・生源寺さん:今の様に昭和一桁の人で支えられ、後継者がいない日本の農業はここ10年の内に思いがけない形で急激に崩壊する可能性がある。
 言われて見れば彼の意見は日本農業の本質を突いている重大問題ですね。
・同:家の戸別所得保障制度は欧米でも行われているが完成まで10数年掛かった。
 前記の発言と併せて考えると農業の崩壊を避けるためには同制度一本槍ではとても間に合わないよう気がします。
日本農業の実情
 米価の低下の一方農業機械のローン返済のため生活に喘ぐ農家
 農業機械と言えば、年にたった一度しか使わない田植機や稲刈り機を各戸で持つなど製造工業からみれば、これほど生産効率の悪い使い方はありません。
 地域内や全国的な使い回しを考えるべきです。
 非効率的と言えばもう一つの生産資材である田んぼですが、九州では一昔では、米と麦の二毛作、そして畦道には大豆が植えてありましたが、今では稲刈りから田植えまで遊んでいる田んぼが如何に多いことか。

 兼業に頼るしかない農家
 豪雪地帯などがそうですが、兼業する他ない地域で、若者を呼び戻すにすためには気候に関係なく操業できる工場の誘致するしかないような気がします。
 棚田耕作への高齢化に対してたった一人で奮闘する若者
 米作と牛や豚の飼育なので頑張っても成果の上がらない専業農家
・生源寺さん:増加する休耕田はその隣の田んぼに害虫で荒らされることになる

フランスの農業の状況
 フランスの農家保障は大規模経営と保障の透明化がセットになっている
 政府の潤沢な保障のもとで大規模経営営む若者とその許嫁
・古口さん:農家では若者がいないし嫁がこない。フランスが羨ましい
 若者が国の環境保全を担っていると言う自負
 多大な保障費の透明化のために国の指導のもとに各農家がその経営状況を公開
・大桃さん:年寄りばかりの農家ではパソコンを使えない
 民主党政権は農家の戸別所得保証制度の代わりに自民党政権が進めてきた大規模化のための法案を廃棄し野中さんが進めている土地改良事業予算を半減しました。

今後の対策
 産直など農家と消費者の協力、消費者の農業への理解
 飲食店の地域の農産物を使った証としての緑の提灯制度
・大桃さん:消費者は農業に理解をもっているが、スーパーに行くと直ぐに安い農産物に飛びついてしまう
 (農家から見て)低い米価は(安売りに走る)大手資本のスーパーから一方的に決められている傾向があるようです。
 これに政府が介入するのは問題があると思いますが、大手資本に対抗する農家側の組織が必要と思います。
 これで直ぐに思いつくのは農協ですが、その方針は通常ルートの仲買経由となってその米価決定に巨大な組織力が活かさないようです。

・学校給食へ強制的な日本産の米など農産物の使用
・米を御飯として使用するだけでなく、米粉としての使用の拡大や飼料用としても考えるべき
・野菜や果樹への転換
[私の意見]
 既に個々の例について書きましたが、鳩山政権の農家戸別保障制度は上記のように、「制度は欧米の先進国で既に実施している農家への直接給付の線に沿ったものだ。」と評価された以外には殆ど無視されています。
 その理由はEUや米国のやり方の都合の良いところだけ取り上げ、中途半端な農家への直接給付という選挙対策に終わっているからだと思います。
 筋論から言えば、農業の生産性向上、農産物の流通制度の見直し、農協組織の見直しなど、大所、高所から見た農業政策が殆ど見えないからです。
 そして今回のバネルは、鳩山政権のマニフェストの農家戸別所得保障制度は殆ど無視され、生産者と消費者が如何に連携するかと言う、政治の動き無視の結論(またはそのように見える)に終わって仕舞いました。
 「ニッチ市場」とか「隙間産業」と言う言葉がありますが、昨日の書いたように民主党の公約は自民党政権の穴を突いただけの公約で言わば「隙間政策」です。
 そしてその隙間政策が鳩山政権の政策の殆ど全てと言うのが、色々の大きな問題を引き起こしていると思います。
 民主党は政権を取った今こそ、本格的の政策、農業に就いても将来を見据えた政策の見直しを行うべきだし、そうしないと農業経営が専門の生源寺さんが指摘したように、ここ10年近くの間に日本の農業の崩壊がことに依れば起こるかも知れないような気もします。

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参照:これで良いのか民主党の農業政策