国鉄の分割・民営化に反対した国労組合員らがJRに採用されなかった問題が政治決着し、政府が1世帯当たり約2200万円を和解金として支払う代わり、国労側は旧国鉄(現・鉄道建設・運輸施設整備支援機構)を相手取った係争中の訴訟すべてを取り下げると言う合意について、産経新聞はJR不採用決着 「ゴネ得」としか映らないと言う社説出しています。
原告団910世帯で総額200億円という和解金の算出根拠も疑問だ。国鉄再建のため、あえて広域転勤などにも応じた多数の国鉄マンにはゴネ得としか映らないだろう。その意味でも、JR採用を希望する場合は政府が雇用受け入れを各社に「要請する」とした合意はおかしい。
前原誠司国土交通相は「あくまでも判断するのはJR各社だ」としつつも、「最大限の努力を要請したい」と言うが、分割・民営化を主導した官庁のトップとして、信じがたい発言である。
然し、JRの雇用受け入れについては社民党はじめ4党・国労側が最後まで譲らず、最初は難色を示していた政府も「要請」なら責任は回避できるとみて最終的に受け入れを決めたようだ。
原告団でJR採用希望者は北海道と九州を中心に200人程度いるという。すでに完全民営化で国の手を離れた本州の3社はともかく、国が依然、全株を保有する北海道など他のJR各社には無視できない圧力となろう。
JRの不採用については、平成15年12月の最高裁判決で「責任なし」の司法判断が確定している。政府には、その自覚とともに民間への介入自制を強く求めたい。
[私の意見]
産経は採用への政府の介入を批判していますが、実質的には採用希望者は既に高齢化しており、採用しても使い場所がないことや、今までのJR各社の方針から考えても、各社が採用に応じることは殆どないような気がしますし、それもあって国労側も和解金提案に応じたと言う報道もあります。
私はそれより政府が何故苦しい財政のなかから200億円もの支出をしなければならないのかと不思議で成りません。
過去民間の会社が起こした問題で政府が和解金を支払った例は、有名な水俣の水銀汚染問題のように、被害者側になんのか、殆ど落ち度がないのに受けた被害に対してだけです。
今回の国労の問題には国労側に何ら問題が無かったかと言えば、市民感覚から言えばあり過ぎるほどです。
Wikipediaの国鉄分割民営化を見ますと国労、国鉄、政府の間の厳しい戦い間にそれぞれに批判されるところもある様でが、その中から当時報道されていた事実だけ拾って見ました。 (時系列は違っているかも判りませんがご了承下さい。)
・国労は、サービス低下を理由に国民に分割・民営化反対を訴えた。政府側などは、本音はヤミ休暇・ヤミ休憩などに代表される民間企業ではあり得ない怠惰な労働環境の維持であると主張し、マスコミは相次いで国労批判のキャンペーンを張った。
・結果として、日頃国労組合員の横柄な態度に辟易していた利用者・一般国民からの賛同は全く得られなかった。
・国労や動労が中心となって起こした、いわゆる遵法闘争は国鉄のサービスの低下につながり国民の怒りを買い、利用者の「国鉄離れ」が進み、上尾事件や首都圏国電暴動などが起こるという事態まで起きた。
・当初反対の立場を取っていた動労は末期に「雇用の確保」を理由として突然賛成に廻った。 (国鉄分割民営化に徹底抗戦の構えの国労に対して、国労以上の過激と言われていた動労の松崎明委員長の組合員の雇用を絶対に守るための労使協調路線への転換発言は当時のショッキングなニュースでした。)
・(国労内の)中核派が反対運動の一貫として国電同時多発ゲリラ事件を起こして首都圏ほかの国電を1日麻痺状態に置いたが、逆に国民世論は国鉄の分割・民営化を強く支持する結果となった。
当時の日本企業でも同じ労働組合の運動が起こっていましたが、共産党や社会党の影響の大きい組合を持つ企業は次第に競争力を失い、企業との協調路線を持つ民社党系の労働組合を企業との格差が出でると言う現象から、前記の企業の闘争的な労働組合も協調路線を取らなければなりませんでした。
その中で国労だけは浮世離れした闘争を繰り広げて、結局世論の支持をなくして仕舞いました。
今の民主党政権は労働組合を支持母体としていますが、当時の国労の横暴ぶりを見ていれば、そして水俣や肝炎訴訟の一人当たり100万円単位の和解金の金額と比較しても、和解金を一所帯あたり2000万、合計で200億円も出せるでしょうか。
鳩山さんの友愛路線や人道的見地からある程度の支出は止むを得ないとしても、半額から100万円単位で済むような気がするのですが。
やはり産経の言うように これでは国労のゴネ得としか思えないし、政府の強引なJRの就職斡旋など考えられないと思います。
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