【盆帰り。我が家では今年も先祖をお迎えし、接待している。】
よく「盆と正月がいっしょに来たような」と言う。忙しいことの
例えである。この時期に休みをとることが多いサラリーマンに
とっては、死語のように思えるかもしれない。《私は仕事ですが、》
しかし一時代前迄はこんなに実感をともなう言い方もなかった。
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●盆も正月も「家」に神さまを迎えるのが原型だった。
盆の場合は「お精霊(しょろう)さん」、
正月は「年神(としのかみ)」などと呼ばれるが、
どちらも先祖の神、祖霊と考えられている。
その祖霊が迷わないように目印として、
盆には篝火をたき、正月には門松を立てて
祖霊を迎えたのである。
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●お盆の場合、座敷に特別の
魂(たま)棚(精霊棚)を設け、
食事を供える。どの家にも
お精霊さん用の食器があったことを
ご記憶の方も多いだろう。
だから「盆と正月がいっしょに
来たような」だったのだ。
←の写真は、法界(ホウカイ)さんを
ご接待の図。
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●そればかりではなかった。
盆と正月は働きに出ている若者が
一時帰宅する「藪(やぶ)入り」の
時期でもあった。嫁いでいる女性も
この時ばかりは実家に帰るのが
許されたという。
魂棚でいつもよりは狭くなった家で、
一家が忙しくとも楽しい語らいの時間を持ったのである。
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●その盆と正月も今や変質した。
魂棚を作る家がどのくらいあるのだろう。
しかし、藪入り、つまり帰省の風習だけは
しっかり残っている。
海外旅行も増えた中、汗だくで親元へ急ぐ。
そこには日本人のDNAを感じるし、
ホッとさせられるような風景でもある。
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●今年も、お精霊さんを迎え接待している。
我が家では、しっかりこの風習は受け継がれている。
もちろんお精霊さん用の食器を使っている。
ただ、我が家の子ども達のDNAは少し違うみたいである。
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都会に出ていった若者たちが
少しでも長い時間、故郷で過ごし、
「家」について考えてもと思うのだが、
我が家では、誰も帰省しない。
やがて、私もお精霊になるが帰る精霊棚の風習は
その頃も、残っているのであろうか。
今は私に与えられたこの世での役目を全うしよう!!
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【庭に咲く赤いホウセンカ。葉は虫が食べた。これが自然界。】