登山家たちに熱愛されていた新穂高の名旅館・中崎山荘が2010年に蒲田川右岸から左岸へと移転リニューアル。宿泊はできなくなったけれども、内風呂、露天風呂、温泉ミストサウナ、食堂に休憩室と、こじんまりした中にもひと通りのものが揃ったいまどきの日帰り温泉施設に生まれ変わりました。源泉は表情のまったく異なる2種類、どちらも高温かつ湯量豊富で、循環消毒なしの掛け流しで使用しています。
内湯は10人ほどが入れる木造りの浴槽。アルカリ性単純温泉(アルカリ性低張性高温泉)(2014年の奥飛騨群発地震の後、硫黄泉に変化。他の特徴は変わらず)で、奥飛騨では珍しく白濁しており、湯の花がたくさん漂い、ほどよい硫化水素臭を感じます。とても温泉らしい温泉とでも言いましょうか。温度調節のため沢水を加えていますが、源泉の魅力が損なわれてはいません。
露天風呂は小さめ深めの石造り浴槽、3人も入ればいっぱいです。単純硫黄温泉(弱アルカリ性低張性高温泉)で、無色透明、臭いは弱め。こちらは加水せず湯雨竹(ゆめたけ)というシステム~写真にも一部写っていますが、樋からあふれた源泉が竹の枝先をしたたり落ちるうちに自然冷却されて浴槽に貯まる仕組み~を使って温度調節されています。日本温泉協会からオール5認定も受けており、温泉原理主義者なら入浴必須です。
露天風呂横にある温泉ミストサウナは、その名のとおり温泉の霧が立ち込め、ドライサウナにはないリラックス感が得られます。室内に漂う硫化水素臭もいい感じ。また内湯の飲泉コーナーでは露天風呂と同じ源泉を飲むことが可能です。飲泉口のとなりでは冷たく美味い湧水も飲めます。
泉質や湯使いにこだわる者にとって、中崎山荘は「極上」の施設です。食堂の料理も、種類こそ少ないですが味は悪くありません。日曜の午後など、登山帰りの客でごった返すことがあるのが玉に瑕ですが、それもクオリティの高さゆえ。新穂高ロープウェイ乗り場のすぐ近くという立地にも関わらず、普段はゆったり静かに入浴が楽しめます。入浴料は大人800円と、奥飛騨にしては高めですが、それも十分に納得できます。お薦め!
<勝手に通信簿 C to AAA>
泉質 ブラボー!これでダメなら野天湯へ行け AAA+
施設 小規模だが手入れが行き届いて清潔感あり A
食事 山小屋風メニューから飛騨牛まで A