2泊3日の仕事から帰ると、「言い残しておくこと」(鶴見俊輔著:09年発行、作品社)届いていた。その日含め2日間読み続けた300頁。一族郎党も育ちも庶民と対極の哲学者なのに、言い分がいちいちストンストンと腑に落ちる。親、国、戦争、軍隊…自分に与えられた動かしがたい境遇で、どう「思想の芯」を形成し、どう妥協し、どう妥協しないで一生を送ったかを立体的に読ませる。こういう研究者、こういう人がいたのだ。スラスラ読め頭が良くなったよう。言葉の選び方、紋切り型でない文章、さすが「文章心得帳」の人。波風立男氏が「言い残しておくこと」真っ盛り年代なのも読ませる原動力なんだろうね。
1章め最初の「おふくろはスターリンなんです」(出自・家族)から始まり、「間違い主義の効用」(「べ平連」)、「原爆から始める戦後史」の3部20章。まず、インタビュー回答、次に註釈、そして“メモラビリア”なる関連する言葉の抜粋。同じ内容を違う言葉で並べてもらい理解が進む。この複線的というか立体的表現に感心。こんなの初めて【「孤独のグルメ」的感動】「鶴見俊輔」入門はこれで決まりだね。年末に買い積ん読中の「戦後日本の大衆文化史」(84年)と「教育再定義」(10年)も、スラスラでありますように。