波風立男氏の生活と意見

老人暮らしのトキドキ絵日記

『戦時期日本の精神史』を読む。

2020年03月30日 | 読書

戦時期日本の精神史 1931~71945年』(鶴見俊輔著:岩波現代文庫)を、コロナ、コロナと騒がれ始めた頃に読み始め、その話題が一日一杯TVで流れ、有名なコメディアンが亡くなった今日読み終わる。図書館に買ってもらった『鶴見俊輔伝』で、この哲学者をもっと知りたくなって読む。

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読むのをためらわせる題名と、この著書の原本が40年前のカナダの大学での講義ノート(全て英語による授業)、加えて「岩波書店」に怯むが、「鶴見さんなら、自分でも理解できるように書いてくれているだろう」と思って約300頁めくる。
近代と現代の境目、標題の15年間の意味、転向、鎖国、国体、アジア、朝鮮、玉砕、戦時下の(庶民)の日常生活、原爆の犠牲者、戦争の終わり・・・・読みながら、近現代史を知らなくても、これらのキーワードで「15年戦争」時の知識人の事実と意味をもとに「文化の鎖国製」という特質を推理小説のように明らかにしてくれる。予備知識無いカナダの学生が対象というのも、わかりやすさの理由だろう。同時に、「名文とはわかる文章のこと」であり鶴見さんはその筆頭だと今回も思った。

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加藤周一さんの日本文学史も独自の日本文化論で強烈に刺激的だが、7年前に手にして難しすぎていつ読了できるかわからない。それに比べ鶴見さんのこの日本文化論は頭に素直に入る。前者が上から目線とは言わないが、後者が庶民の立場から離れず門外漢にも親切だ。加藤さんが足場を国外に置いた理論に比べ、鶴見さんが国内で実践的に理論化しているせいもある。今回、日本の精神とは何か、近現代史の骨格をなす思想とは何だったのか、哲学の内容と方法とは何か、のような普段の暮らしとかけ離れた問題を身近に感じた。知らなくても困らないが知ったこと、考えたことで少し幸せになれる感じがする。


この本を誰か読まないかなあ、語り合いたいなあ、腹ペコさんの近現代史の講義で目を開かれたママヨさんに頼んでみようかなあ 明後日久々に図書館再開が嬉しい。同じ日に2階から港の見える温泉が閉鎖し実に悲しい。

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