このWeblogの開始と微妙にずれていて、まだ登場していなかった藤沢周平作品、『用心棒日月抄』を再読しました。読みかえすたびに、これは名作だと感じます。
主人公、青江又八郎は、大富家老らによる藩主毒殺の謀議を立ち聞きしてしまい、婚約者である由亀の父親に相談しますが、逆に後ろから斬られそうになります。無意識のうちに反撃し、父親を斬ったところを由亀に見られ、脱藩して江戸で浪人暮らしを始めます。糊口をしのぐ手段は、剣の腕を生かした市井の用心棒家業でした。
はじめのうちこそ、犬の用心棒だとか娘の送迎だとか、のんびりした話が続きます。しかし、「梶川の娘」「夜鷹斬り」あたりから、藩の放つ刺客と浅野内匠頭の刃傷事件に絡む吉良と浅野の残党との暗闘が見え隠れする事件が続くようになります。
「夜の老中」では又八郎が老中の気に入られますが、落ちも粋ですね。「内儀の腕」も赤穂の浪人がらみですが、しっかりと女主人の若気の過ちを描くところに、作家の円熟した人間観察が見えます。「代稽古」「内蔵助の宿」「吉良邸の前日」では、赤穂浪士の討ち入りを側面から描く形になっています。
そして「最後の用心棒」で、盟友細谷と口入れ屋の吉蔵に見送られ、江戸を発って国許に潜入しようとしますが、途中で見事な短剣術を使う女忍びの佐知に襲撃されます。だが、逆に佐知が負傷し、又八郎に助けられることに。
帰り着いた家では、老母と由亀が待っていました。間宮中老に真相を伝えると、大富家老一派は処断されます。大富家老につながる天才剣士、大富静馬が放った一撃をようやくしのぎ、青江又八郎はその後姿を見送ります。続編を期待させる場面です。
意外性に富むストーリー、明るさの中にも陰影豊かな情感、流れるような文章を充分に堪能できる作品。『蝉しぐれ』『三屋清左衛門残日録』『風の果て』などとともに、藤沢周平の代表的作品と言えましょう。『孤剣』『刺客』『凶刃』と続く『用心棒日月抄』四部作の始まりとなる作品です。
■藤沢周平『孤剣~用心棒日月抄』を読む
■藤沢周平『刺客~用心棒日月抄』を読む
■藤沢周平『凶刃~用心棒日月抄』を読む
主人公、青江又八郎は、大富家老らによる藩主毒殺の謀議を立ち聞きしてしまい、婚約者である由亀の父親に相談しますが、逆に後ろから斬られそうになります。無意識のうちに反撃し、父親を斬ったところを由亀に見られ、脱藩して江戸で浪人暮らしを始めます。糊口をしのぐ手段は、剣の腕を生かした市井の用心棒家業でした。
はじめのうちこそ、犬の用心棒だとか娘の送迎だとか、のんびりした話が続きます。しかし、「梶川の娘」「夜鷹斬り」あたりから、藩の放つ刺客と浅野内匠頭の刃傷事件に絡む吉良と浅野の残党との暗闘が見え隠れする事件が続くようになります。
「夜の老中」では又八郎が老中の気に入られますが、落ちも粋ですね。「内儀の腕」も赤穂の浪人がらみですが、しっかりと女主人の若気の過ちを描くところに、作家の円熟した人間観察が見えます。「代稽古」「内蔵助の宿」「吉良邸の前日」では、赤穂浪士の討ち入りを側面から描く形になっています。
そして「最後の用心棒」で、盟友細谷と口入れ屋の吉蔵に見送られ、江戸を発って国許に潜入しようとしますが、途中で見事な短剣術を使う女忍びの佐知に襲撃されます。だが、逆に佐知が負傷し、又八郎に助けられることに。
帰り着いた家では、老母と由亀が待っていました。間宮中老に真相を伝えると、大富家老一派は処断されます。大富家老につながる天才剣士、大富静馬が放った一撃をようやくしのぎ、青江又八郎はその後姿を見送ります。続編を期待させる場面です。
意外性に富むストーリー、明るさの中にも陰影豊かな情感、流れるような文章を充分に堪能できる作品。『蝉しぐれ』『三屋清左衛門残日録』『風の果て』などとともに、藤沢周平の代表的作品と言えましょう。『孤剣』『刺客』『凶刃』と続く『用心棒日月抄』四部作の始まりとなる作品です。
■藤沢周平『孤剣~用心棒日月抄』を読む
■藤沢周平『刺客~用心棒日月抄』を読む
■藤沢周平『凶刃~用心棒日月抄』を読む