矢野直明『パソコンと私[情報快的生活人]』を読みました。実は、図書館で借りた本です。雑誌「ASAhIパソコン」誌に連載されていたインタビュー記事をまとめた内容で、1991年2月に福武書店から発行されています。
構成はこんなふうになっています。
第0章 情報社会とパソコン
1. ニコラス・ネグロポンテ●コンピュータに「うーん」といえばあなたの思いを伝えてくれる
2. 梅棹忠夫●現代の博物館は「博情報館」コンピュータが支えるメディア
3. 木村泉●キーボードなんか気にしない ワープロは新しい文化の創造
4. 相磯秀夫●コンピュータを使いこなすのがこれからの知的活動の鍵
5. 森毅●情報には虫がつきものと覚悟してつきあっていくしなかい
第1章 私のパソコンワールド
◆知的生産術◆
6. 岡嶋二人●パソコン通信をフルに使って岡嶋二人は24時間営業です
7. 藤村由加●七ヶ国語を話すのも数学を学ぶのもパソコンをいじるのもみんな楽しい
8. 増田正造●情報システム作りは自己表現 失敗しながら楽しく
9. 紀田順一郎●アフターファイブの生活を充実させるユニークなソフトがほしい
10.加藤秀俊●手紙はワープロで書くが 印字は和紙に、署名は墨で
11.矢野徹●コンピュータと出会って老後が楽しく、明るくなった
◆ワープロ◆
12.金春惣右衛門●金春流家伝の太鼓の手附もワープロを使えばご覧のとおり
13.荻野綱男●ワープロの辞書は自分で育てるのが一番
◆通信◆
14.神崎紫峰●メッセージの向こうに人がいる パソコン通信で広がる出会い
15.町田武美●パソコンを農具として使いこなす クリエーティブな仕事にぴったり
16.川内康裕●全国に広がる草の根ネットのゆるやかな連合体を作りたい
◆データ・ベース◆
17.一ノ瀬正輝●「元気が出る農村づくり」をコンピュータでお手伝い
18.藤沢秀一●データベースは情報の海 うまく利用するのがコツ
19.上村数洋●ペンを加えてパソコン駆使 通信やCGで新人生切り開く
20.太田茂●障害者の社会参加を促すための電子機器の環境づくり
21.近藤亨●開業医は患者とのふれあい第一 薬もパソコンも処方箋次第
22.松浦覚●ICカードに医療情報をインプット 町民の健康管理に一役
◆フリーウェア・ゲーム・ファジイ◆
23.吉崎栄泰●ユーザーと意見交換しながらソフトを作る楽しみ
24.アレクセイ・パジトノフ●テトリスは楽しいパズル 建設的なゲームです
25.山川烈●ファジイはあいまいな処理が得意 やさしくたくましいコンピュータ
26.本多弘男●秋葉原電気街で30年 アイデアひとつで商売になった
27.白田由香利●「マイコン乙女」「UNIX解説者」 コンピュータとともに歩んだ十有余年
28.峰岸順二●TK-80からX68000まで ホビーマイコン暮らし15年
29.青木由直●ソフトアイランド北海道にはテクノアートがよく似合う
30.嶋正利●発注者が設計の助っ人になってマイクロプロセッサは誕生した
31.ビル・トッテン●わが社はソフトウェアの出版業 いい作品を見つけて安く提供
第2章 文化としてのパソコン
◆マルチメディア・DTP・ネットワーク◆
32.テッド・ネルソン●ハイパーテキストには紙を離れたひらめき重視の万能メディア
33.ビル・アトキンソン●コンピュータが初めての人も自由に使えるハイパーカード
34.浜野保樹●ハイパーメディアの先にある人間の姿を見つめたい
35.ロバート・スタイン●あらゆるメディアを駆使して新しいタイプの本を作りたい
36.戸田ツトム●デスクトップ・パブリッシングが切り開く可能性に注目したい
37.ハワード・ラインゴールド●これからはコンピュータの中で触れ合いながらインタビュー
38.渡辺和也●パソコンからネットワークへ新たな潮流に乗り出す
◆教育・文化・著作権・プライバシー◆
39.佐伯胖●パソコンをみんなで使えるおもしろくてためになる道具に
40.逢沢明●コンピュータ(情報)社会を文化の視点でとらえ直す
41.石綿敏雄●パソコン・ワープロ・コンピュータ 新しいカタカナ辞書があっていい
42.野田正彰●いまのような使われ方ではコンピュータがかわいそう
43.吉田正夫●ソフトウェアのコピー防止には発想の転換が必要になっている
44.堀部政男●現代のプライバシーは自己情報コントロール権
うーむ。いずれの記事も、かつて読んだ記憶あり。懐かしさとともに、ほぼ20年前のパソコン興隆期の様子に、思わず昭和末~平成初期にタイムスリップしたような印象を持ちました。あまりにも楽天的な見通しに違和感を感じたり、時代を見通す先駆的な卓見に、いまさらながら感動したり。わずか20年前のことなのに、時代の先を読むと言うのは難しいものです。
あらためて読んでみて、とりわけ興味深かったのが、ハイパーカードの開発者、ビル・アトキンソンのインタビューでした。ハイパーカードは、当時マッキントッシュに標準添付され、簡単にマルチメディア・ハイパーテキストを実現できるということで、画期的でした。でも、マックユーザーでなければその恩恵を受けることはできませんでした。私自身も、FM-Towns の TownsGEAR というツールで、ハイパーテキスト風のマルチメディア作品を作ったりしましたが、いずれもそのマシンを越えて他の人と関係をつくることはできませんでした。それを思うと、ティム・バーナーズ=リーが考えた WWW は本当に素晴しいと思いますし、特許を取ることをせずに無償で公開したことは、実に偉かったと思います。また、マーク・アンドリーセンらが作った Mozaic は、歴史に残る画期的なプログラムだったと、いまさらながら思います。
では、ハイパーカードを MacOS X 上で拡張し、HTML を解釈可能なプログラムとして再び登場することはないのか?どうやら、その可能性はなさそうです。なぜなら、ハイパーカードの権利を持っているのは、開発者本人ではなく、スカリー氏らしい(*)からです。開発者に権利がないとはおかしな話ですが、ここでもオープンソースの本質的な長所を感じます。
(*):ハイパーカードが消えた理由~ビル・アトキンソンさんの話をきく~
構成はこんなふうになっています。
第0章 情報社会とパソコン
1. ニコラス・ネグロポンテ●コンピュータに「うーん」といえばあなたの思いを伝えてくれる
2. 梅棹忠夫●現代の博物館は「博情報館」コンピュータが支えるメディア
3. 木村泉●キーボードなんか気にしない ワープロは新しい文化の創造
4. 相磯秀夫●コンピュータを使いこなすのがこれからの知的活動の鍵
5. 森毅●情報には虫がつきものと覚悟してつきあっていくしなかい
第1章 私のパソコンワールド
◆知的生産術◆
6. 岡嶋二人●パソコン通信をフルに使って岡嶋二人は24時間営業です
7. 藤村由加●七ヶ国語を話すのも数学を学ぶのもパソコンをいじるのもみんな楽しい
8. 増田正造●情報システム作りは自己表現 失敗しながら楽しく
9. 紀田順一郎●アフターファイブの生活を充実させるユニークなソフトがほしい
10.加藤秀俊●手紙はワープロで書くが 印字は和紙に、署名は墨で
11.矢野徹●コンピュータと出会って老後が楽しく、明るくなった
◆ワープロ◆
12.金春惣右衛門●金春流家伝の太鼓の手附もワープロを使えばご覧のとおり
13.荻野綱男●ワープロの辞書は自分で育てるのが一番
◆通信◆
14.神崎紫峰●メッセージの向こうに人がいる パソコン通信で広がる出会い
15.町田武美●パソコンを農具として使いこなす クリエーティブな仕事にぴったり
16.川内康裕●全国に広がる草の根ネットのゆるやかな連合体を作りたい
◆データ・ベース◆
17.一ノ瀬正輝●「元気が出る農村づくり」をコンピュータでお手伝い
18.藤沢秀一●データベースは情報の海 うまく利用するのがコツ
19.上村数洋●ペンを加えてパソコン駆使 通信やCGで新人生切り開く
20.太田茂●障害者の社会参加を促すための電子機器の環境づくり
21.近藤亨●開業医は患者とのふれあい第一 薬もパソコンも処方箋次第
22.松浦覚●ICカードに医療情報をインプット 町民の健康管理に一役
◆フリーウェア・ゲーム・ファジイ◆
23.吉崎栄泰●ユーザーと意見交換しながらソフトを作る楽しみ
24.アレクセイ・パジトノフ●テトリスは楽しいパズル 建設的なゲームです
25.山川烈●ファジイはあいまいな処理が得意 やさしくたくましいコンピュータ
26.本多弘男●秋葉原電気街で30年 アイデアひとつで商売になった
27.白田由香利●「マイコン乙女」「UNIX解説者」 コンピュータとともに歩んだ十有余年
28.峰岸順二●TK-80からX68000まで ホビーマイコン暮らし15年
29.青木由直●ソフトアイランド北海道にはテクノアートがよく似合う
30.嶋正利●発注者が設計の助っ人になってマイクロプロセッサは誕生した
31.ビル・トッテン●わが社はソフトウェアの出版業 いい作品を見つけて安く提供
第2章 文化としてのパソコン
◆マルチメディア・DTP・ネットワーク◆
32.テッド・ネルソン●ハイパーテキストには紙を離れたひらめき重視の万能メディア
33.ビル・アトキンソン●コンピュータが初めての人も自由に使えるハイパーカード
34.浜野保樹●ハイパーメディアの先にある人間の姿を見つめたい
35.ロバート・スタイン●あらゆるメディアを駆使して新しいタイプの本を作りたい
36.戸田ツトム●デスクトップ・パブリッシングが切り開く可能性に注目したい
37.ハワード・ラインゴールド●これからはコンピュータの中で触れ合いながらインタビュー
38.渡辺和也●パソコンからネットワークへ新たな潮流に乗り出す
◆教育・文化・著作権・プライバシー◆
39.佐伯胖●パソコンをみんなで使えるおもしろくてためになる道具に
40.逢沢明●コンピュータ(情報)社会を文化の視点でとらえ直す
41.石綿敏雄●パソコン・ワープロ・コンピュータ 新しいカタカナ辞書があっていい
42.野田正彰●いまのような使われ方ではコンピュータがかわいそう
43.吉田正夫●ソフトウェアのコピー防止には発想の転換が必要になっている
44.堀部政男●現代のプライバシーは自己情報コントロール権
うーむ。いずれの記事も、かつて読んだ記憶あり。懐かしさとともに、ほぼ20年前のパソコン興隆期の様子に、思わず昭和末~平成初期にタイムスリップしたような印象を持ちました。あまりにも楽天的な見通しに違和感を感じたり、時代を見通す先駆的な卓見に、いまさらながら感動したり。わずか20年前のことなのに、時代の先を読むと言うのは難しいものです。
あらためて読んでみて、とりわけ興味深かったのが、ハイパーカードの開発者、ビル・アトキンソンのインタビューでした。ハイパーカードは、当時マッキントッシュに標準添付され、簡単にマルチメディア・ハイパーテキストを実現できるということで、画期的でした。でも、マックユーザーでなければその恩恵を受けることはできませんでした。私自身も、FM-Towns の TownsGEAR というツールで、ハイパーテキスト風のマルチメディア作品を作ったりしましたが、いずれもそのマシンを越えて他の人と関係をつくることはできませんでした。それを思うと、ティム・バーナーズ=リーが考えた WWW は本当に素晴しいと思いますし、特許を取ることをせずに無償で公開したことは、実に偉かったと思います。また、マーク・アンドリーセンらが作った Mozaic は、歴史に残る画期的なプログラムだったと、いまさらながら思います。
では、ハイパーカードを MacOS X 上で拡張し、HTML を解釈可能なプログラムとして再び登場することはないのか?どうやら、その可能性はなさそうです。なぜなら、ハイパーカードの権利を持っているのは、開発者本人ではなく、スカリー氏らしい(*)からです。開発者に権利がないとはおかしな話ですが、ここでもオープンソースの本質的な長所を感じます。
(*):ハイパーカードが消えた理由~ビル・アトキンソンさんの話をきく~