電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

山形弦楽四重奏団第65回定期演奏会でハイドン、ベートーヴェン、ヒンデミットを聴く(2)

2017年10月24日 20時53分21秒 | -室内楽
山形弦楽四重奏団第65回定期演奏会の後半は、ヒンデミットのクラリネット五重奏曲です。
楽器配置は、向かって左から1st-Vn(中島光之)、2nd-Vn(今井東子)、Vla(倉田譲)、Vc(茂木明人)、Cl(川上一道)ですが、川上さんは楽器を2本持って登場です。
変ロ調・変ホ調 Op.30という、何というのでしょう、複調とでもいうのでしょうか、前衛的な響きはこのゆえか。
第1楽章:Sehr lebhaft(非常に元気良く)。不協和な始まりですが、弦が騒がしくうごめく中でも、クラリネットの音は不思議に不協和とは感じません。第2楽章:Ruhig(静かに)。Vcの長めのソロに他の弦が加わっていき、不安げな音の展開の中で低音のClが加わり、高音の音色を対比しながら弦と重なっていきます。1st-Vnと2nd-Vnの音色が美しいです。第3楽章:Schneller Laendler(より早いレントラー?)。全5楽章が急緩急緩急という構成になっていますが、真ん中の急にあたる部分のようです。第4楽章:Ariozo, Sehr ruhig.(アリオーゾ、非常に静かに)。2nd-VnとVlaとVcのpizz.の中で、弱音器をつけた1st-Vnが奇怪な音で旋律を。そこに汽笛のようなClの音が高まり、鎮まります。第5楽章:Sehr lebhaft wie im ersten Satz.第1楽章の逆進行だそうです。

演奏後、再び「ブラーヴォ!」の声がかかりました。聴衆の皆さんの大きな拍手に応える山Qの皆さんも川上さんも、やり切ったような表情に見えます。
そしてアンコールは、チャイコフスキー作曲、武満徹編曲の「秋の歌」。こちらはぐっとロマンティックに、でもごく弱い(小さな)音もしっかりと出ているクラリネットに驚き感嘆しながら、静かに充実した音楽を楽しみました。今回も、良い演奏会でした。



いや〜、しかし演奏を終えてもヒンデミットは不思議な緊張感に満ちた音楽です。初めて聴いただけで、強烈な印象を受けましたが、一度聴いたくらいではとても把握できない音楽でもあるようです。実演を聴いたからこそ、もう一度聴いてみたい! 昔ならば、必死でCDを探すところですが、今はネットですぐに探すことができます。いい時代と言ってよいのか……、素人音楽愛好家としては、すごい時代となったと言うべきでしょうか。

HINDEMITH, Clarinet Quintet, Op.30

演奏は、Dmitry Rasul-Kareyev (clarinet), Sergey Ostrovsky (violin), Yumi Kubo (violin), Tsubasa Sakaguchi (alto), Stephan Rieckhoff (cello).

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