ゴールデンウィークに突入して二日目の日曜日、午後から総代をしている寺の総会を済ませ、あわただしく腹ごしらえをして山形市の文翔館に向かいました。いつもの議場ホールを会場に、山形弦楽四重奏団の第87回定期演奏会です。


山形弦楽四重奏団というのは、山形交響楽団に所属する弦楽器奏者を中心に、2000年に結成された常設の弦楽四重奏団で、これまでハイドンの弦楽四重奏曲全曲を演奏するなど、山形を中心に230以上のステージで活動している団体です。おそらく、プロ・オーケストラに所属しながら定期的に演奏会を開催している常設のカルテットというのは、全国的にも珍しいのではないかと思います。近年はメンバーを一人欠いたためにしばらく三人で活動しており、弦楽三重奏曲や管楽器を加えた四重奏曲など多彩な、中には実演で聴くことが難しいマニアックな曲も含めたプログラムとなっていました。とはいいながら、やはり弦楽四重奏本来の響きを楽しみたいという期待も高まる中、山響の新人ヴァイオリン奏者の河村佳奈さんをゲストに迎えて、久々にオーソドックスな定期演奏会となったものです。
さて、今回のプログラムは;
というものです。

今回の担当はヴィオラの倉田譲さんで、開演前のプレトークも担当します。手違いでプログラム原稿データが印刷所に届く際にトラブルがあったようで、手作り感いっぱいのプログラムになったことをわびた後、坂本龍一さんが東京芸大作曲科卒であり、近年はユースオーケストラに力を注いでいたことなどを紹介し、故人を悼みました。また、倉田さんのお父さんが時代小説・歴史小説のファンであったことから、藤沢周平や池波正太郎などの本をどっさりもらってきて、読むようになったことなどを話し、前夜は『剣客商売』を読んだそうで、思わず親近感をいだきます。今回は、山響の河村佳奈さんをゲストに迎えて久しぶりに弦楽四重奏を演奏するので、楽しんでいただきたい、とのことでした。
舞台上の配置は、向かって左から第1ヴァイオリンの河村佳奈さん、第2ヴァイオリンの中島光之さん、ヴィオラの倉田譲さん、右端がチェロの茂木明人さんとなります。基本的に黒を貴重とした服装で統一されており、中島さんが上着にネクタイ、茂木さんが白っぽいネクタイをしているほかは、上下とにかく黒、これ、その都度衣装を考えなくていいという戦略的判断かも(^o^)/
さて第1曲、モーツァルトの7番です。
第1楽章:アレグロ。軽やかに楽しげに、カルテットの楽しさをいっぱいに主張するようです。盤石の中低音域に乗って、1st-Vnと2nd-Vnの掛け合い、交代がおもしろい。第2楽章:ウン・ポコ・アダージョ。「ウン・ポコ」とは「やや、少し」の意味だそうで、「やや遅く」という意味でしょう。明暗で言えば暗のほうの楽章ですが、あまり深刻にならないように、ということでしょうか。豊かな響きが重なり合う緩徐楽章です。第3楽章:プレスト。文字どおり急速に演奏されます。躍動するような若いモーツァルトの音楽です。
(2) モーツァルト 弦楽四重奏曲第19番「不協和音」
第1楽章:アダージョ〜アレグロ。冒頭の不協和音は、現代ならばあり得る響きですが、ロココ時代の当時としては「何じゃこりゃ?」だったことでしょう。この不安定、不穏さがハ長調で一気に解決されて始まる活発な音楽はいかにもモーツァルトです。第2楽章:アンダンテ・カンタービレ、ゆっくりと歌うように。優しい表情で始まる音楽は大きな起伏こそありませんが、さまざまな音色で彩られます。第3楽章:メヌエット、アレグロ〜トリオ。四人の奏者が息のあったところを見せてくれます。第4楽章:アレグロ・モルト。主題が例えば1st-Vnから2nd-Vnへ、あるいはヴィオラやチェロに受け渡されるところなど、音色の変化もいかにもカルテットらしさが出ていて面白いです。
(3) ベートーヴェン 弦楽四重奏曲第4番 ハ短調
ベートーヴェンの初期の弦楽四重奏曲、作品18の6曲の中で、この4番だけが唯一の短調の曲です。しかもベートーヴェンにとっては特別なハ短調! ピアノ三重奏曲第3番、ピアノ・ソナタ第8番「悲愴」や後期の第32番Op.111、交響曲第5番「運命」などが該当し、いずれも名曲ばかりです。当然のことながら、この曲も実にいい。第1楽章:アレグロ・マ・ノン・タント。速すぎないアレグロで、というような意味でしょうか。1st-Vn河村さんの決然たる表情が好ましい始まり。例えば茂木さんが受け継いでチェロの高音域で同じフレーズを奏する時、アンサンブルの充実感を感じます。第2楽章:スケルツォ、アンダンテ・クワジ・アレグレット。アレグレットに近いアンダンテで、というほどの意味でしょうか。スケルツォなのに、ベートーヴェン、なかなか難しい指定をしています。でも始まりは 2nd-Vn で、これが Vla、1st-Vn、Vc と次々に加わる形で、「弦楽四重奏の響きの作られ方紹介」みたいなことをやっています。面白いです。第3楽章:メヌエット、アレグロ〜トリオ。変な表現ですが、憂い顔のダンディな男が立っていて、身振りも様になる、というような音楽です。第4楽章:アレグレット。華のある1st-Vnと共に、2nd-Vnの細やかな動きも魅力的です。弦楽三重奏とはやはり違う、響きもアンサンブルも充実感があります。
聴衆の拍手に応えて、アンコールはモーツァルトの弦楽四重奏曲第6番の第3楽章を。一言で言えば、モーツァルトは愉しい、若いベートヴェンはカッコいい!そんなことを感じた演奏会でした。
次回の定期演奏会は7月8日(土)、18:30〜、会場がやまぎん県民ホールのスタジオ1に変わるとのこと。これは文翔館議場ホールの改修工事のためで、おそらく工事が終わればまたこちらに戻るのでしょう。国の重要文化財の建物で定期演奏会を開けるなんて、かなり贅沢な話ですから(^o^)/


山形弦楽四重奏団というのは、山形交響楽団に所属する弦楽器奏者を中心に、2000年に結成された常設の弦楽四重奏団で、これまでハイドンの弦楽四重奏曲全曲を演奏するなど、山形を中心に230以上のステージで活動している団体です。おそらく、プロ・オーケストラに所属しながら定期的に演奏会を開催している常設のカルテットというのは、全国的にも珍しいのではないかと思います。近年はメンバーを一人欠いたためにしばらく三人で活動しており、弦楽三重奏曲や管楽器を加えた四重奏曲など多彩な、中には実演で聴くことが難しいマニアックな曲も含めたプログラムとなっていました。とはいいながら、やはり弦楽四重奏本来の響きを楽しみたいという期待も高まる中、山響の新人ヴァイオリン奏者の河村佳奈さんをゲストに迎えて、久々にオーソドックスな定期演奏会となったものです。
さて、今回のプログラムは;
- W.A.モーツァルト 弦楽四重奏曲第7番 変ホ長調 K.160
- W.A.モーツァルト 弦楽四重奏曲第19番 ハ長調 K.465 「不協和音」
- L.v.ベートーヴェン 弦楽四重奏曲第4番 ハ短調 Op.18-4
というものです。

今回の担当はヴィオラの倉田譲さんで、開演前のプレトークも担当します。手違いでプログラム原稿データが印刷所に届く際にトラブルがあったようで、手作り感いっぱいのプログラムになったことをわびた後、坂本龍一さんが東京芸大作曲科卒であり、近年はユースオーケストラに力を注いでいたことなどを紹介し、故人を悼みました。また、倉田さんのお父さんが時代小説・歴史小説のファンであったことから、藤沢周平や池波正太郎などの本をどっさりもらってきて、読むようになったことなどを話し、前夜は『剣客商売』を読んだそうで、思わず親近感をいだきます。今回は、山響の河村佳奈さんをゲストに迎えて久しぶりに弦楽四重奏を演奏するので、楽しんでいただきたい、とのことでした。
舞台上の配置は、向かって左から第1ヴァイオリンの河村佳奈さん、第2ヴァイオリンの中島光之さん、ヴィオラの倉田譲さん、右端がチェロの茂木明人さんとなります。基本的に黒を貴重とした服装で統一されており、中島さんが上着にネクタイ、茂木さんが白っぽいネクタイをしているほかは、上下とにかく黒、これ、その都度衣装を考えなくていいという戦略的判断かも(^o^)/
さて第1曲、モーツァルトの7番です。
第1楽章:アレグロ。軽やかに楽しげに、カルテットの楽しさをいっぱいに主張するようです。盤石の中低音域に乗って、1st-Vnと2nd-Vnの掛け合い、交代がおもしろい。第2楽章:ウン・ポコ・アダージョ。「ウン・ポコ」とは「やや、少し」の意味だそうで、「やや遅く」という意味でしょう。明暗で言えば暗のほうの楽章ですが、あまり深刻にならないように、ということでしょうか。豊かな響きが重なり合う緩徐楽章です。第3楽章:プレスト。文字どおり急速に演奏されます。躍動するような若いモーツァルトの音楽です。
(2) モーツァルト 弦楽四重奏曲第19番「不協和音」
第1楽章:アダージョ〜アレグロ。冒頭の不協和音は、現代ならばあり得る響きですが、ロココ時代の当時としては「何じゃこりゃ?」だったことでしょう。この不安定、不穏さがハ長調で一気に解決されて始まる活発な音楽はいかにもモーツァルトです。第2楽章:アンダンテ・カンタービレ、ゆっくりと歌うように。優しい表情で始まる音楽は大きな起伏こそありませんが、さまざまな音色で彩られます。第3楽章:メヌエット、アレグロ〜トリオ。四人の奏者が息のあったところを見せてくれます。第4楽章:アレグロ・モルト。主題が例えば1st-Vnから2nd-Vnへ、あるいはヴィオラやチェロに受け渡されるところなど、音色の変化もいかにもカルテットらしさが出ていて面白いです。
(3) ベートーヴェン 弦楽四重奏曲第4番 ハ短調
ベートーヴェンの初期の弦楽四重奏曲、作品18の6曲の中で、この4番だけが唯一の短調の曲です。しかもベートーヴェンにとっては特別なハ短調! ピアノ三重奏曲第3番、ピアノ・ソナタ第8番「悲愴」や後期の第32番Op.111、交響曲第5番「運命」などが該当し、いずれも名曲ばかりです。当然のことながら、この曲も実にいい。第1楽章:アレグロ・マ・ノン・タント。速すぎないアレグロで、というような意味でしょうか。1st-Vn河村さんの決然たる表情が好ましい始まり。例えば茂木さんが受け継いでチェロの高音域で同じフレーズを奏する時、アンサンブルの充実感を感じます。第2楽章:スケルツォ、アンダンテ・クワジ・アレグレット。アレグレットに近いアンダンテで、というほどの意味でしょうか。スケルツォなのに、ベートーヴェン、なかなか難しい指定をしています。でも始まりは 2nd-Vn で、これが Vla、1st-Vn、Vc と次々に加わる形で、「弦楽四重奏の響きの作られ方紹介」みたいなことをやっています。面白いです。第3楽章:メヌエット、アレグロ〜トリオ。変な表現ですが、憂い顔のダンディな男が立っていて、身振りも様になる、というような音楽です。第4楽章:アレグレット。華のある1st-Vnと共に、2nd-Vnの細やかな動きも魅力的です。弦楽三重奏とはやはり違う、響きもアンサンブルも充実感があります。
聴衆の拍手に応えて、アンコールはモーツァルトの弦楽四重奏曲第6番の第3楽章を。一言で言えば、モーツァルトは愉しい、若いベートヴェンはカッコいい!そんなことを感じた演奏会でした。
次回の定期演奏会は7月8日(土)、18:30〜、会場がやまぎん県民ホールのスタジオ1に変わるとのこと。これは文翔館議場ホールの改修工事のためで、おそらく工事が終わればまたこちらに戻るのでしょう。国の重要文化財の建物で定期演奏会を開けるなんて、かなり贅沢な話ですから(^o^)/