電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

香月美夜『本好きの下剋上』第5部「女神の化身」8巻を読む

2022年04月17日 06時00分42秒 | -香月美夜
年甲斐もなくライトノベルにハマって、などと恥ずかしがりながらも、たいへん面白く読んでいる香月美夜著『本好きの下剋上』第5部「女神の化身」8巻を読みました。前巻では、王命により敵地アーレンスバッハのアホ娘ディートリンデと婚約させられ、アーレンスバッハに赴いたフェルディナンドが毒に倒れ、それを察知したローゼマインが救出のために暴走を始め、抜きん出た武力を誇る大領地ダンケルフェルガーを巻き込んで臨戦態勢を整えるところで終わっていましたが、本巻はまさにその続きです。

プロローグは、フェルディナンドの危急をエーレンフェストに急報する名捧げ臣下のユスクトスとエックハルトの心情と行動を描きます。自らの死を覚悟していたところ、ローゼマインの救出作戦に加わることになり、絶望が希望に変わっていきますが、そうであれば主の延命や敵地の情報提供など、役に立てる場面は多くあることでしょう。同行するダンケルフェルガーの側でも、大領地アーレンスバッハに武力で侵攻するわけですから、脳筋思考だけでは済まされない。立派な建前と現実的な根回しと王族の承認が必要ですが、何よりもローゼマインがすでに得ているグルトリスハイトの存在がものをいいます。

これまでにも、王族がグルトリスハイトを失ってしまったことを嘆く場面は多くありましたが、要するに歴代の王族自身がメスティオノーラの書の正式な承継を歪めてきただけの話です。それにしてもグルトリスハイト、死者の記憶と智慧の集積だというのですからスゴイ。ペタッとくっつけるだけで国境門が開き、検索するだけで魔法陣が示され、コピペすらできてしまうというのですから、充電も不要な超強力ツールではないですか。私も一つほしいくらいです(^o^)/

ふんわりお嬢さん的な位置づけだったハンネローレを筆頭に、脳筋突進派ハイスヒッツェが指揮するダンケルフェルガー有志部隊の協力を得て、ローゼマインがアーレンスバッハの礎を奪い、フェルディナンドを救出するあたりはWEB本編(*)ですでに承知しているところですが、本書では書き下ろしの形で「エーレンフェスト防衛戦」の内容が充実しており、単行本を購入した価値を感じて満足、満足(^o^)/



この物語では中心的な悪役となるゲオルギーネ。毒親に育てられたのだから、あんなふうになるのは仕方がないという見方もあるでしょうが、ふつう毒親に育てられたからと言って幼い弟を毒殺しようとしたりはしないはず。ゲオルギーネはやはりゲオルギーネでした。栴檀は双葉より芳し、いや、トリカブトは若芽でも毒草と言うべきか。同情する気にはなれません。

(*): 本好きの下剋上〜司書になるには手段を選んでいられません〜「小説家になろう」より、完結済


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