電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

香月美夜『本好きの下剋上』第5部第5巻を読む

2021年05月21日 06時01分45秒 | -香月美夜
先月、4月に刊行されたばかりの最新刊、香月美夜著『本好きの下剋上』第五部「女神の化身」第5巻を読みました。発売後一ヶ月も過ぎたので、そろそろネタバレの心配も緩和されたかなと判断し、記事とする次第です。

プロローグはエーレンフェストの領主ジルヴェスターと伯父ボニファティウスのやりとりから。ボニファティウスが珍しく従来型の常識派の役回りです。なるほど、そんなわけでライゼガング一派に与することとなったのか。加護の再取得で神殿に対する偏見がだいぶ緩和されたようですが。

ローゼマインは、王族の命により、領主会議の間ずっと貴族院の図書館の書庫でダンケルフェルガーのハンネローレとともに古い文献の現代語訳に従事しています。王の第三夫人のマグダレーナがお目付け役で付き添う中、ある日アーレンスバッハのディートリンデが図書館にやってきて、言いたい放題。王命により婚約させられたフェルディナンドが連座で処分される可能性が高いとローゼマインは心配しますが、とりあえず対応をマグダレーナにまかせて貴族院の森をひそかに散策して鉢合わせを回避します。そこで見つけたのが古びた祠でした。これが実は、神々に認められて王となる道を示すもので、ローゼマインは第二王子アナスタージウスの妻となったエグランティーヌに請われてすべての祠を回ることとなり、メスティオノーラの書を得るための資格を得ますが、王族登録がないためにこれを読むことはできませんでした。しかし、次期王に最も近い位置にいることは間違いなく、王族はローゼマインを得るために動き出します。

いや〜、第一王子ジギスヴァルトとローゼマインの交渉の様子は、「商人聖女vs王族!」という帯のキャッチコピーのとおり。WEB 版でも面白く読みましたが、紙の本でもやっぱり面白いところです。もっと言えば、巻末の他者視点「望まぬ結婚」のアドルフィーネは、いかにも誇り高いドレヴァンヒェルの筆頭領主候補生ですし、「シュラートラウムの花」でのオルタンシアの不幸な最後を示唆するサスペンス調の終わり方は、中央騎士団長ラオブルートの悪役ぶりを強く印象づけます。

次巻は8月刊行予定。楽しみに待ちましょう。


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