予約注文していた香月美夜著『本好きの下剋上・短編集II』を読みました。『短編集I』(*1)もそうでしたが、本編とは異なり、ローゼマイン以外の他者視点から見たサイドストーリーを集めたもので、物語中の同じ出来事でもだいぶ違った色合いを帯びて描かれ、興味深いものです。特に、直販や「応援書店」向けに特別に挿入されるリーフレットに収録された描き下ろし短編が、居住地によらずに平等に読めるのはありがたいことです。それでこそ、紙の本の特性を発揮するものと言えましょう。
今回の『短編集II』の内容は、次のようなものです。
今回、とくに面白く読み、また収録がありがたかったのは、ブリュンヒルデ視点の「ギーべ・グレッシェルの娘として」、ライムント視点の「領地と師弟の関係」、ロヤリテート視点の「小さな疑惑」、トゥーリ視点の「婚約の事情」などでしょうか。いずれも、地方在住の私には縁のなかった「特典リーフレット」に収録されていた書き下ろし短編で、ネット上のSS(サイドストーリー)集にも収録されていないものですから、今回はじめて読んだものです。
ギーべ・グレッシェル候補として育てられ、そのために努力もしているブリュンヒルデですが、「ギーべ・グレッシェルの娘として」の時点では、まだ印刷業における平民の重要性が理解できていない。このままではグレッシェルの印刷業は失敗するとの焦りから、父親を説得して方向転換させるあたりの事情が、よくわかります。このあと、第二夫人に異母弟が生まれ、ギーべ候補から大きく方向転換してアウブの第二夫人へ立候補するわけですので、そのあたりの説得力が増すようです。また、魔力が少なく以前ならば神殿入りになるところだったライムントが、ヒルシュールに見出されフェルディナンドの駒として添削を受けることとなるあたりの事情がコミカルに描かれる「領地と師弟の関係」も面白いものですし、中央の騎士団長ラオブルートへの疑惑が芽生える「小さな疑惑」も、ちょっとした推理モノみたいです。ルッツとトゥーリの関係を描く「婚約の事情」も、舞い上がるようなラブロマンスではなく、なんとも現実的なものでした。このあたりは、もしかすると著者夫婦もまた同様の「友だち婚」だったからかもしれません(^o^)/
さて、来月は『本好きの下剋上』第5部「女神の化身」第8巻の発売予定となっています。すでに書店に予約注文済み。本編完結まで、あと何巻あるのだろう? このペースだとあと三巻かな。完結が待ち遠しい気持ちとともに、まだまだ完結してほしくない気分もあり、やや複雑です。
(*1): 香月美夜『本好きの下剋上・短編集I』を読む〜「電網郊外散歩道」2019年10月
今回の『短編集II』の内容は、次のようなものです。
エーファ視点 側仕えとの初対面
リコ視点 変化の始まり
ブリュンヒルデ視点 ローゼマイン様と染め物のお披露目
ブリュンヒルデ視点 ギーべ・グレッシェルの娘として
ルッツ視点 元気に成長中
ライムント視点 領地と師弟の関係
オットー視点 旅商人の依頼と冬の準備
フロレンツィア視点 フェルネスティーネ物語ができるまで
トゥーリ視点 ざわめきの中の自覚
ギュンター視点 兵士と騎士の情報収集
ユストクス視点 古ぼけた木札と新しい手紙
バルトルト視点 胸に秘めた怒り
ロヤリテート視点 小さな疑惑
アナスタージウス視点 それぞれの思惑
ルッツ視点 トゥーリの心配
ローゼマイン視点 ラザファムとの会話
エーファ視点 子供達の成長
トゥーリ視点 婚約の事情
レティーツィア視点 初めての祈念式
今回、とくに面白く読み、また収録がありがたかったのは、ブリュンヒルデ視点の「ギーべ・グレッシェルの娘として」、ライムント視点の「領地と師弟の関係」、ロヤリテート視点の「小さな疑惑」、トゥーリ視点の「婚約の事情」などでしょうか。いずれも、地方在住の私には縁のなかった「特典リーフレット」に収録されていた書き下ろし短編で、ネット上のSS(サイドストーリー)集にも収録されていないものですから、今回はじめて読んだものです。
ギーべ・グレッシェル候補として育てられ、そのために努力もしているブリュンヒルデですが、「ギーべ・グレッシェルの娘として」の時点では、まだ印刷業における平民の重要性が理解できていない。このままではグレッシェルの印刷業は失敗するとの焦りから、父親を説得して方向転換させるあたりの事情が、よくわかります。このあと、第二夫人に異母弟が生まれ、ギーべ候補から大きく方向転換してアウブの第二夫人へ立候補するわけですので、そのあたりの説得力が増すようです。また、魔力が少なく以前ならば神殿入りになるところだったライムントが、ヒルシュールに見出されフェルディナンドの駒として添削を受けることとなるあたりの事情がコミカルに描かれる「領地と師弟の関係」も面白いものですし、中央の騎士団長ラオブルートへの疑惑が芽生える「小さな疑惑」も、ちょっとした推理モノみたいです。ルッツとトゥーリの関係を描く「婚約の事情」も、舞い上がるようなラブロマンスではなく、なんとも現実的なものでした。このあたりは、もしかすると著者夫婦もまた同様の「友だち婚」だったからかもしれません(^o^)/
さて、来月は『本好きの下剋上』第5部「女神の化身」第8巻の発売予定となっています。すでに書店に予約注文済み。本編完結まで、あと何巻あるのだろう? このペースだとあと三巻かな。完結が待ち遠しい気持ちとともに、まだまだ完結してほしくない気分もあり、やや複雑です。
(*1): 香月美夜『本好きの下剋上・短編集I』を読む〜「電網郊外散歩道」2019年10月
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