双葉文庫の人気シリーズ、佐伯泰英著『弓張ノ月~居眠り磐音江戸双紙(46)』を読みました。マンネリが懸念される書き下ろしスタイルの長編時代小説も、ついにここまでお付き合いしてしまいました。こうなれば、あとは完結を目指すのみです(^o^)/
本巻は、要するにこれまでチョコマカと動いてきたトリックスター佐野善左衛門が、本来の歴史的役割である、田沼意知に対する江戸城中での刃傷事件を決行します。その背後にあるのが、白河藩主松平定信を中心とする反田沼勢力の動きなわけですが、こうなると主人公の役割は霞んでしまいます。そこで、将軍の信頼をバックに権力を握る田沼意次の怒りから、剣術の弟子の一人である松平定信らをどう守るのかが当面の課題となります。また本筋としては、磐音らが田沼意次を仇として狙いつづけるのかどうかが今後の課題としてクローズアップされてくる、という内容です。
第1章:「行動の朝」。当日の朝の、小梅村尚武館道場、米沢町今津屋、品川柳次郎家、金兵衛長屋、鵜飼百助の研ぎ場など、嵐の前の様子を描きます。弥助と霧子の師弟の忍びが、しばらくぶりに屋敷に戻った佐野善左衛門の昂ぶりを磐音に伝えます。
第2章:「お杏の覚悟」。嫁入り前の箱崎屋お杏さんは、こんなところに居続けてよいのか? 不思議ですが、良いのだそうです(^o^)/ まあ、話の都合上、ともに困難に遭遇してくれないと、坂崎ファミリーの一員になれません(^o^)/
この章でも、弥助・霧子の忍びの師弟が活躍の中心となりますが、なにやら豊後関前藩の坂崎正能が登場したりすると、今後も坂崎パパの出番がありそうです。
第3章:「五人の若年寄」。江戸城中、田沼意知刃傷事件の場面を描きます。作者は、濡れ場はあまり得意ではないようですが、こういう緊迫した事件を描くのはうまいです。ポイントは、刃傷事件で使われた刀の持ち主を問われるのを恐れ、佐野家の刀とすり替える経緯です。なるほど、それで研ぎ師・鵜飼百助さんが意味を持つわけですね。
第4章:「斬奸状」。事件を受けて、幕府内部で政治的に事後処理が行われる様子を描くとともに、磐音が密かに反田沼勢力の自重を求める書状を送った、その効果が描かれます。当然のことながら、各藩の若手による剣術試合のほうは延期になります。
第5章:「無為の策」。南町奉行所のエース、大頭の知恵者同心・笹塚孫一は登場するわ、出羽の国の前田奈緒母子は登場して江戸に帰ることになるわ、なにやら関係者がみんな江戸に集まってきそうな勢いです。大団円に向かって歩み始めたのか、それとも作者お得意の壮烈な悲劇に向かって歩み始めたのか、待て、次号! という章です。
○
そうですね~。うーむ。理由が未だによくわかりませんが、佐々木玲圓夫妻が殉死したのは、田沼意次が徳川家基を暗殺したからで、田沼意次は師匠夫妻の仇のはず。佐野善左衛門が田沼意知に切りつけたからといって、そこは変わらないと思います。にもかかわらず、仏間に入って合掌したら死んだ玲圓が「人の命を絶つことではのうて、生かす道を考えよ」という声が聞こえたという場面は、不思議です。これは、長い連載の間に、主人公磐音クンの気が変わったとしか考えようがない(^o^)/
まあ、扇を集めて旅した(*1)結果、奈緒をあきらめておこんにのりかえることになった(*2)わけですが、あのときも急に気が変わったようですし、今度もまた気が変わるのは、作者の都合で別に不思議ではありません(^o^)/
いずれにしろ、この大江戸エンターテインメントの結末をどうつけることになるのか、今後が楽しみです(^o^)/
(*1):佐伯泰英『雪華ノ里~居眠り磐音江戸双紙(4)』を読む~「電網郊外散歩道」2008年10月
(*2):佐伯泰英『龍天ノ門~居眠り磐音江戸双紙(5)』を読む~「電網郊外散歩道」2008年11月
本巻は、要するにこれまでチョコマカと動いてきたトリックスター佐野善左衛門が、本来の歴史的役割である、田沼意知に対する江戸城中での刃傷事件を決行します。その背後にあるのが、白河藩主松平定信を中心とする反田沼勢力の動きなわけですが、こうなると主人公の役割は霞んでしまいます。そこで、将軍の信頼をバックに権力を握る田沼意次の怒りから、剣術の弟子の一人である松平定信らをどう守るのかが当面の課題となります。また本筋としては、磐音らが田沼意次を仇として狙いつづけるのかどうかが今後の課題としてクローズアップされてくる、という内容です。
第1章:「行動の朝」。当日の朝の、小梅村尚武館道場、米沢町今津屋、品川柳次郎家、金兵衛長屋、鵜飼百助の研ぎ場など、嵐の前の様子を描きます。弥助と霧子の師弟の忍びが、しばらくぶりに屋敷に戻った佐野善左衛門の昂ぶりを磐音に伝えます。
第2章:「お杏の覚悟」。嫁入り前の箱崎屋お杏さんは、こんなところに居続けてよいのか? 不思議ですが、良いのだそうです(^o^)/ まあ、話の都合上、ともに困難に遭遇してくれないと、坂崎ファミリーの一員になれません(^o^)/
この章でも、弥助・霧子の忍びの師弟が活躍の中心となりますが、なにやら豊後関前藩の坂崎正能が登場したりすると、今後も坂崎パパの出番がありそうです。
第3章:「五人の若年寄」。江戸城中、田沼意知刃傷事件の場面を描きます。作者は、濡れ場はあまり得意ではないようですが、こういう緊迫した事件を描くのはうまいです。ポイントは、刃傷事件で使われた刀の持ち主を問われるのを恐れ、佐野家の刀とすり替える経緯です。なるほど、それで研ぎ師・鵜飼百助さんが意味を持つわけですね。
第4章:「斬奸状」。事件を受けて、幕府内部で政治的に事後処理が行われる様子を描くとともに、磐音が密かに反田沼勢力の自重を求める書状を送った、その効果が描かれます。当然のことながら、各藩の若手による剣術試合のほうは延期になります。
第5章:「無為の策」。南町奉行所のエース、大頭の知恵者同心・笹塚孫一は登場するわ、出羽の国の前田奈緒母子は登場して江戸に帰ることになるわ、なにやら関係者がみんな江戸に集まってきそうな勢いです。大団円に向かって歩み始めたのか、それとも作者お得意の壮烈な悲劇に向かって歩み始めたのか、待て、次号! という章です。
○
そうですね~。うーむ。理由が未だによくわかりませんが、佐々木玲圓夫妻が殉死したのは、田沼意次が徳川家基を暗殺したからで、田沼意次は師匠夫妻の仇のはず。佐野善左衛門が田沼意知に切りつけたからといって、そこは変わらないと思います。にもかかわらず、仏間に入って合掌したら死んだ玲圓が「人の命を絶つことではのうて、生かす道を考えよ」という声が聞こえたという場面は、不思議です。これは、長い連載の間に、主人公磐音クンの気が変わったとしか考えようがない(^o^)/
まあ、扇を集めて旅した(*1)結果、奈緒をあきらめておこんにのりかえることになった(*2)わけですが、あのときも急に気が変わったようですし、今度もまた気が変わるのは、作者の都合で別に不思議ではありません(^o^)/
いずれにしろ、この大江戸エンターテインメントの結末をどうつけることになるのか、今後が楽しみです(^o^)/
(*1):佐伯泰英『雪華ノ里~居眠り磐音江戸双紙(4)』を読む~「電網郊外散歩道」2008年10月
(*2):佐伯泰英『龍天ノ門~居眠り磐音江戸双紙(5)』を読む~「電網郊外散歩道」2008年11月
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