電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

佐伯泰英『空蝉ノ念~居眠り磐音江戸双紙(45)』を読む

2014年01月20日 06時02分28秒 | -佐伯泰英
双葉文庫の一月新刊で、佐伯泰英著『空蝉ノ念~居眠り磐音江戸双紙』を読みました。長く続くシリーズも第45巻となり、四捨五入すれば50の大台に乗るようになりました。どんな形で完結するものか、興味深いところです。

第1章:「肘砕き新三」。前巻で、顔なじみの奉行所同心だったからと油断し不覚にも伝馬町女牢に幽閉されるというはめにおちいった松平辰平の名誉挽回に、磐音は肘砕き新三という老武芸者との対戦を指名します。辰平は見事にこれを斥けますが、どうも田沼父子の回し者というわけでもなさそうです。むしろ、佐野善左衛門が白河藩主の松平定信のもとに居るらしい、という情報が眼目か。

第2章:「三つのお守り札」。辰平と対戦し喀血した老武芸者の病状を案じた磐音は、桂川甫周国端の往診を請います。国端さんも、多忙の身なのにすすんで往診。エラいものです。一方、博多の豪商・箱崎屋の末娘・お杏と辰平との対面は、意外に早く実現してしまいます。

第3章:辰平は、お杏を屋敷に案内し、両親に引き合わせることになります。辰平の母お稲とお杏とは、なにやらいつの間にかメル友の関係になっているようで、これだから女性は油断がなりません(^o^)/ いっぽう、松平定信の屋敷を見張る木下一郎太と弥助・霧子ですが、番小屋の一造が貴重な情報をもたらします。佐野善左衛門は、やはり松平定信にかくまわれているとのこと。どうやら、政争のにおいがします。

第4章:「小梅村の宴」。辰平の両親と箱崎屋に今津屋も加わり、ビジネスとプライベートを兼ねたような宴に、福岡藩黒田家から客人があったり、無駄足となりましたが松平定信もやってきたりと、顔ぶれが賑やかです。そして、当然のことながら、主題は辰平とお杏との婚約と辰平の身の振り方です。福岡藩からの客人は、そのためのものでした。

第5章:「老武者の妄念」。箱崎屋の父娘は、尚武館坂崎道場の練習風景を見学します。辰平と利次郎との対決は火の出るような激しさで、胴相打ちとなります。一方、佐野善左衛門がかくまわれている松平定信の屋敷には、どうやら様々な勢力がひそかに顔を出しているようで、こういう政争には関わらないほうが賢明、という判断を、磐音クンもしたようです。それより、この老武者の一念こそ、題名どおり空蝉の念だったのではと思います。



チョコマカと動いていたトリックスター佐野善左衛門は、ようやく本来の歴史的役割の舞台に立つことになった模様。結末がどのように描かれるのか、ますます興味深いところです。


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