電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

プーシキン『大尉の娘』を読む(1)

2023年07月12日 06時00分29秒 | -外国文学
旅の間に、光文社の古典新訳文庫でプーシキン『大尉の娘』を読みました。坂庭淳史訳で、2019年の4月に刊行された初版第1刷です。若い頃に読んだ中村白葉訳の新潮文庫は、昭和50年の第32刷ですが、もう紙がすっかり黄ばんでいるだけでなく、文字のポイントがやけに小さい。これはもう、老眼の身にはとても判読困難なレベルになっており、光文社版の文字の大きさならば、老眼鏡の助けでなんとか楽しんで読むことができます。







17歳になった主人公ピョートル・アンドレーエヴィチ・グリニョーフは、地方貴族の息子として大事に大事に育てられてきましたが、ある日、父親の命令によって軍務に就くためにオレンブルクに向かいます。途中、ズーリンというロシア人の大尉と仲良くなり、ビリヤードの指導をダシにかなりのお金を巻き上げられてしまいます。世間知らずな若者は、爺やとして育ててきた忠実な従者サヴェーリイチの忠告も聞き入れず、お金を出すように命じますが、この小さなエピソードが後で大きな意味を持って来ます。



任地に向かう途中で吹雪に遭い、宿屋で案内した男に兎皮の長外套を与えます。この男が、やはり後で重大な意味を持つ存在となります。オレンブルクに到着した青年は、やはり軍人だった父からの手紙を将軍に渡します。将軍は、内容を読み、遊び人にはしたくないという父親の願いを受け入れて、ベロゴールスク要塞という辺境への赴任を命じます。

で、この要塞での生活が、実に何というか、司令官ミローノフ大尉夫妻とその娘のマーシャ(マリアの愛称)、それに恋敵のシヴァープリンらとの間で、恋あり決闘ありの充実した(^o^)ものでした。ところがそんな生活も長くは続かず、そこにプガチョフの反乱という歴史的大事件が起こります。

今は亡きピョートルIII世の名を騙り、コサックや農民たちと共に蜂起したプガチョフは、たちまち周辺の要塞を落とし、大きな人数の勢力となってベロゴールスク要塞へと押し寄せます。なんと、その中には決闘の相手だった恋敵シヴァープリンの姿が見えるのです。

要塞の守備隊は少ない人数である上に大砲も1門しかなく、反乱勢力に制圧されてしまいます。司令官夫妻は処刑されますが、絞首刑になる前に青年が引き合わされたプガチョフは、なんと兎皮の長外套を与えたあの男だったのでした。

結局、青年はプガチョフの温情で釈放され、恋人マーシャをシヴァープリンの元に置いたまま、オレンブルクに向かいます。オレンブルクと占拠されたベロゴールスク要塞までの距離は40露里といいますから、今風に言えば約42kmくらい。マラソン選手なら2時間余で走ってしまう距離なのですが、オレンブルクの人たちは臆病風に吹かれたらしく、ことなかれ主義で乱に立ち向かおうとはしません。じりじりするところへコサックの一人が届けたのは、マーシャからの手紙でした。シヴァープリンが自分を無理やり嫁がせようとしている、早く助けて!と願う内容に、主人公と従者は再びベロゴールスク要塞に向かいます。

(続く)

コメント    この記事についてブログを書く
« 旅の空から〜草津温泉の緑色... | トップ | プーシキン『大尉の娘』を読... »

コメントを投稿

-外国文学」カテゴリの最新記事