電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

ヴァレンタイン・デイヴィス『34丁目の奇跡』を読む

2020年01月25日 06時03分36秒 | -外国文学
いささか時期外れではありますが、あすなろ書房刊の単行本でヴァレンタイン・デイヴィス著『34丁目の奇跡』を読みました。過去に映画「34丁目の奇跡」のオリジナル・モノクロ版とその後のカラー・リメイク版の両方を観ていますので、映画の後にノヴェライズ本を読んだ形です。

メイプルウッド老人ホームに住むクリス・クリングルは、立派な白ひげと優しくあたたかい笑顔が素晴らしい老人ですが、「わたしはサンタクロースです」と名乗るものだから、精神病に由来する妄想を疑われ、ホームを出されてしまいます。セントラル・パークの周辺でクリスマス・パレードが行われていますが、メイシー百貨店が雇ったサンタクロース役の男は酒を隠し飲みしながらという有様で、見かねたクリスがサンタ役を交代したことから大評判になります。彼をスカウトしたキャリア・ウーマンでシングル・マザーのドリス・ウォーカーは、一人娘のスーザンに「サンタクロースはいない」とドライな教育をしていますが、クリスを疑い、解雇してしまいます。

ところが、メイシー百貨店の社長は、ドリスにすぐ復職させるように命じ、百貨店は大繁盛しますが、人事関係者の講演会で「サンタクロース神話の嘘をあばく」とする題の講師アルバート・ソーヤー氏は、講演会を笑いの場にされてしまった腹いせに、クリスを精神病院に強制入院させる手配をしてしまいます。幸い、これに対する異議が出たために審理が行われることになり、クリス・クリングル氏がサンタクロースか否か、サンタクロースの実在を問う裁判が始まるのです(^o^)/

このあとのあらすじは省略しますが、この裁判で「実在しないことの証明」は難しい。「仮に実在したとするとこんな矛盾を生じるが故に、実在することは否定される」という論法(背理法)しかないでしょう。では、「実在することの証明」はできるのか? サンタクロース裁判の愉快な経過と共に、弁護士フレッドとドリス、スーザンがハッピーエンドに終わる結末は、いかにもクリスマスらしい、心温まるしゃれた物語です。



残念ながら、孫たちもサンタクロースの実在を問う年齢は過ぎてしまいましたが、後味の良い大人の童話として読む分にはいっこうに構わないでしょう。なかなかおもしろく読みました。また、読み終えた日付と書名等を、バイブルサイズの Aqua Drops に記録しました。再読が多いものの、今年はすでに15冊を超えております。


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